PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

CX500:HKG-NRTエコノミー 転じてビジネス(その2)

Cathayの搭乗記は往路、復路とも2編に分けました。理由は単純で、いろいろなことが起き、書くことが多いのです。いつでもそうです。この航空会社、構造的に客を退屈させないようできています。

 

ワインリストです。

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機内では「5月以来、DowのPortが2009になった以外は変わらないぞ。」とがっかりしたのですが、未熟者でした。後日、確認してみると、構成は一緒なのですが、微妙に品が入れ替わっていました。

 

8月のリスト(太字が新顔)

Henriot, Blanc de Blancs

Spy Valley Marlborough Sauvignon Blanc 2012

Bourgogne, Tête de Cuvée 2012, Les Vignerons de Buxy

Morgon 2010, Château des Jacques, Louis Jadot

Murray Street White Label Barossa Shiraz 2008

Dow's Late Bottle Vintage Port 2009

 

5月のリスト

Henriot, Blanc de Blancs

Spy Valley Marlborough Sauvignon Blanc 2012

Saint-Véran 2011, Pierre André

Fleurie 2011, Cuvée Prestige, Les Chabards

Zonte's Footstep Chocolate Factory Shiraz McLaren Vale 2012

Dow's Late Bottle Vintage Port 2008

 

新旧を比べると、ワインリスト作りの意図も少し見えてきます。

 

Bourgogne白はMâconnaisからChalonnaisに変わったのですが、ラベル上は格落ちで珍品度は上昇しました。ワインの性格はよく似ています。ともに土壌は粘土-石灰岩質ではないでしょうか。他方、New ZealandのSauvignon Blancは続投です。

 新旧Bourgogneは、開栓後の時間とともに大きく変化するワインです。それが原因で、5月はSaint-Véranで料理合せに失敗しました。Appellation上は広域表示ですが、Chalonnaisの白は平均的にはMâconnaisより気難しいでしょうか。次に乗る時が楽しみになってきました。他方、New Zealandワインは典型的、明快な味わい、時間経過にも新しい表情を見せることがありません。

 頻繁に搭乗する客は、いつも同じワインでは失望します。しかしこれらのBourgogneは、開栓後の時間経過や料理との組合せによって多様な表情を見せるので、いつも「違うワイン」として現れます。これはワインの選択者が狙った効果でしょう。

 逆に、お気に入りのビールがあるのと同じ感覚で一定の味を求めるなら、リスト中のMarlborough, Sauvignon Blancは抜群です。バランスが良く、輪郭がはっきりしたワインで、料理にも邪魔されません。アジアではこういう考え方の方がなじむと思います。私も2人のベテランクルーから「私はこっちが好き」という意見を聞きました。

 

赤も枠組みは固定です。Beaujolaisは、Fleurie 2011からMorgon 2010に変わっていました。Louis JadotのChâteau des Jacquesですから、少し格が上がったラベルです。やや大柄で力強く、バランスが取れていることはこのmaisonらしいのですが、ベリー系のいろいろな果実の香りが熟成によってうまく調和し、タンニンが全体を下支えしている例外的なBeaujolaisです。Louis Jadotは個人でも時々お得な買い物ができますが、Cathayもうまい買い付けができたのでしょう。Beaujolaisでもこのクラスになると、Shirazより料理との相性が問題となりそうです。また開栓後の経過時間により味わいが変わっていきます。

 

Portは更新しています。2009はDouroのブドウも酸が少なかったようで、私は2008の方が好みです。毎年更新されるなら、いろいろな作柄があることが楽しみの一部です。

 

Cathayは限られたリストの中で実に良く考えていたのでした。一方、産地は恐ろしく偏向しています。Still wineはオセアニアか、フランスのBourgogne南部です。ワイン担当者は一人なのでしょうか。

 

さて今回の搭乗では、私の列は日本語話者のSenior Purserと大阪語話者のAttendantが担当してくれたので、ほぼ日本語環境でした。Senior Purserがぼそっと「ここのところどの便も満杯で...。」と言うので、「この便もoverbookingですか?」と尋ねると、「それもあります。」と複数のことを意味する微妙な返事でした。私がup-gradeされた理由が別にあるのか、彼女の仕事が大変な理由が他にあるのか、それ以上のことはわかりません。もしやこやつも関西人?

 

確かにビジネスの45席全て埋まっています。後部トイレがエコノミーと共同だったのでエコノミーのキャビンも覗けたのですが、そこも一杯でした。ちなみにエコノミーのシートは明らかに新しいものでした。映画が楽しみな搭乗客は、この機材ではビジネスよりエコノミーにするのが正解です。

 

In-flight Service Manager の挨拶もありました。粤語話者の美人、amuse-bouche の前と着陸準備の前に一度ずつ来ました。私が一番最初だったのは、席の位置の問題で深い意味はありません。ビジネスのキャビンで総計5人程度にしか挨拶しなかったようでした。出不精なISMだったので、エコノミーのキャビンまで遠征したかどうか不明です。ビジネスクラスだとISM挨拶も目立たず、気にするほどではありません。最初のワゴンサービスで、Senior Purserが客一人一人に対して、名前を呼んで、一言挨拶してから飲み物を手渡しているので、ISM挨拶の特別感は和らいでいます。

 

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エコノミーのキャビンでの上級会員への挨拶では、「このキャビンにいらしても、私たちはあなた様を十分気使っています。」というメッセージを伝えていくのですが、裏を返すと「今度来る時は、もっと前の方に来て頂戴。サービスしやすいし。」という圧力にもとれます。エコノミークラスを堪能したければ、 周囲から浮くのは我慢しなくてはなりません。

 FFP上級会員はそれなりに窮屈なのでした。航空会社は「金を落としてこそFFP会員、上級会員」とは絶対に言いませんが、間違いなくいろいろなサービスを率先して利用することを期待しています。サービスには、ファーストクラス、ビジネスクラスの利用も含みます。

実は、今回はエコノミーで申し訳ないからと、2本Deutzを搭乗前注文し、機内持込み手荷物にそのための空間を用意して搭乗しました。(エコノミーは棚が一杯になるかもしれず、着陸時に困らないように。)小さなことですが、up-gradeの原因の一つになっているかもしれません。よもやISMが挨拶に行くのが面倒だからと、対象者を全部ビジネスのキャビンに集めたということはないと思います。

 

今後しばらくCathayのエコノミークラスの搭乗予定はありません。半年は難しそうです。一方ビジネスクラスの予約はあります。そういう状況を考えると、今回は微妙なup-gradeでした。