PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

航空会社がFFP会員に期待すること

マイレージプログラム(FFP)の会員になると一般客より優遇されます。「xxxxに入会すると、マイルをためる以外にも数多くの特典があります」と宣伝されますが、これにはもちろん裏があります。一つはよく言われるように、顧客の囲い込みです。

これには2つの傾向があり、本業が順調でバランスシートが軽い会社では、より長距離、より高頻度に搭乗する客の数を増やす方向に向かいます。(中東の会社、JALなど)収益を重視したい会社では、より多く払う客をより増やす方向へ向かいます。(アメリカの会社、ANAなど)経営者(と株主)の意向が強く反映しているのでした。

 

もう一つは隠然としていますが、円滑な業務への協力者の募集です。

 

航空旅客輸送では、一人の乗務員が多数の相手をするので、その中に一定数の協力者がいると業務はかなり楽になります。例えば、FFP会員なら時々起きるオーバーブッキング時のインボランタリー・アップグレード。これは航空会社の立場からすると、会社の尻ぬぐいを乗客に押しつけているわけです。Involuntaryはそれゆえの名称。尻ぬぐいをやる候補者が多いほど、航空券販売の自由度が大きくなります。FFP会員は自分の航空券購入以外に、会社の収益に貢献しています。

 

非常口席の優先割当のように露骨に協力を求める「会員特典」もあります。会社をより理解している者の方がトラブルが少なく、都合が良いはずです。involuntary upgradeも同じですが、「たくさん乗っているから報いてやろう」というより、「たくさん乗っているから慣れているだろう」という意識が感じられます。

 

またFFP会員限定のサービスもそうです。新サービスを企画するにあたり、自分たちを良く知る客の評価を求め、それをフィードバックすると言う古典的なマーケティングとも言えます。

 

優先搭乗も同じ性格を持ちえます。後から大量に来る乗客でキャビンが無秩序になることを防ぐため、優先搭乗客に一肌脱いで貰おうとする航空会社があります。やり方がソフトなので協力している気になりにくいし、この機会を利用できるかどうかはクルーの腕次第ですが、彼らの行動に注意していると気づくことがあります。

 

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5月に私がCX718便(CGK-HKG)で体験したことも、少し似ています。

 ビジネスのキャビンでしたが、適当に空いていました。インドネシア人のIn-flight Service Managerは機内サービスをやりやすくするよう、一人客をまんべんなくキャビンに散らしました。Involuntary席替えです。この時、先兵として私に白羽の矢が立ったようで、搭乗時にISMからその考えを説明され、最初に席を移動「させられ」ました。素直に指示に従う者がいると後が続くのが集団心理です。自分に素直な客を上手に「使う」のも、クルーの重要な能力だと思います。

 私は他社FFP会員です。偶然このISMには数度お世話になって顔見知りになっていたので、頼みやすかったのでしょう。自社会員にこだわらない自由さは良いのですが、インドネシア便にはマルコポーロの会員は少ないのでしょうか?

 この時、私はスターボードサイド一番前の窓側席をあてがわれました。もちろん隣は空き席。天気もよく、この席からはカリマンタンなどのインドネシアの島々がよく見えました。協力の対価というところです。

 

随分前の話ですが、BA長距離便において協力の結果、変則的な involuntary upgradeを受けたことがあります。World Traveller Plusのキャビンにupgradeされた老夫婦は離れた席をあてがわれ、その妻が私の隣になりました。「私の夫はどこ?」「ですからお客様はアップグレードされてきたので、隣には座れません。」「なぜ隣にならないのか?」などとやりやっています。弱ったCAは有償搭乗客の私に席替えを依頼してきました。この婆さん、xenophobiaに見えたし、隣に配偶者をあてがえばキャビンも平和になるだろうから、向こうで微妙な表情をしている爺さんとの席替えしました。(夫の意向が全く問題にされないのはいずこも同じ。)不思議なことにBAのキャビンでは、この程度の「自己犠牲を伴う」協力は特別な感じがしません。LHRからNRTに向かう乗継便がClub Worldにアップグレードされました。予告無しでした。

 

私のケースは大したことないのですが、他の方々のブログを読んでいると、「善行」を行っている方が多いことに気付きます。こういう方々はもちろん搭乗を楽しんでいます。FFP会員は、クルーに協力的であること、コミュニケーションを上手に行うこと、新サービスや機内販売などを積極的に活用することが、楽しく旅行するためのコツのようです。

こうしてみると、寿司屋のお得意様とあまり変わりません。

お得意だったら、不漁でネタが悪くてもいちいち文句はつけず、良い所を探して賞賛するでしょう。そうすれば周囲の客も同調して何となく納得するでしょう。また混んでくることがわかれば、さっさと席を立つぐらいの融通は利かせます。手が一杯なら、無理にお茶を頼むこともないでしょう。一方、寿司屋もいつも同じものを出しても、反応が同じでつまらないと、試作段階の裏メニューをお得意に出して、意見を求めたりします。お店にとっては、間違いなく都合が良い客です。

 

気に入った航空会社でないと、そうそう付加サービスなど利用しないし、クルーに気を遣うこともありません。逆に自分がこれらのことを自然に行える航空会社のFFP会員を選ぶのがベストなのかもしれません。

これは3つものFFPと付き合っている節操の無い私の言うセリフではありません。やはりメインとサブぐらいにした方が身の丈に合っています。

 

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こういうことを考えると、自社会員と提携会社会員で、航空会社の扱いが異なるのは当たり前です。「自社会員を優遇する」という序列として考えるのが一般的ですが、むしろ航空会社の都合が潜んでいると私は睨んでいます。