PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

フライングブルーの特徴(その2):長所と短所

StatusMatcherは各社のFFPを星の数で評価していますが、Flying Blueは最高の4つ星です。日本での低い評価から考えると、とても不思議です。ここでは印象ではなく、客観性の高い要素を紹介します。プログラムの基礎を成す事柄です。

 

f:id:PECHEDENFER:20141107191651j:plain

 

(1)Flying Blueは、就航都市が非常に多いとともに、路線網が世界各地に存在しているプログラムです。

 

Flying BlueはAir France(AF)とKLM(KL)だけのFFPではありません。フランスのHOP!(A5)、ルーマニアのTarom(RO)、スペインのAir Europa(UX)、ケニアのKenya Airways(KQ)、ニューカレドニアのAircalin(SB)のFFPでもあります。

ROは東欧や中東

UXは南欧や南米

KQはアフリカや中東

SBは南太平洋

での路線網が充実しています。これらの会社の旅客便の就航空港をリストにし、重複を消去すると、133か国、372空港になりました。これがどれだけすごいかと言うと、Executive ClubのBritish Airwaysの就航空港数は約180。SkyMilesのDeltaが約340、MileagePlusのUnitedが約370です。北米の航空会社は近い数字となりますが、国内線が多いのが特徴です。Flying Blueは世界でもっとも路線網が充実するFFPだと言えるでしょう。

 

ライバルのMiles & Moreを採用する航空会社は、Lufthansa, Austrian Airlines, LOT, Adria Airways, Croatia Airlines, Swiss, Air Dolomiti, Luxair, Brussels Airlines, Eurowings, Germanwingsで相当な数です。会員規模も同じぐらいで2000 万人超です。しかし、ドイツ圏とそこに隣接している地域の会社ばかりです。欧州内の移動ではFlying Blueに負けませんが、世界的な路線網の分散は望むべくもありません。

 

路線網の充実のもたらす一番重要な効果はおそらく、AF、KL、RO、UX、KQ、SB、A5のどこに搭乗しても自社会員として扱われることでしょう。自社会員の扱いと提携他社会員の扱いは大きく違います。Flying Blueに加入していればフランス、オランダ、ルーマニア、スペイン、ケニア、タイチで「うちの客」として迎えられます。

 

入会した航空会社は一応登録されます。私はAFの会員です。しかし、今年のKLMでの搭乗では、自社会員扱いされているとしか思えませんでした。以前の記事に書いたように、航空会社に「協力させられ」ました。会社により文化が異なり、戸惑うこともありますが、世界中で自社FFP会員扱いされるメリットは非常に大きいと思います。

 

(2)(特典用)マイルの流動性が高いプログラムです。

 

・マイルは誰にでもプレゼントできます。

・マイルを然るべき団体に寄附することができます。

・マイルの有効期限は無限に延長できます。

・マイルを購入することもできます。上級会員は制限がありません。

・無料航空券は片道でも発券できます。往復航空券の半分のマイルです。

・航空会社以外の提携先が充実しています。

 

Flying Blueを高く評価する人がいるのは、提携先の企業とその数の多さのためだと思います。多くの世界的なホテルチェーン、レンタカーと提携しています。こういうことは小さな航空会社には無理です。

 マイルは債権なので流動性が高いと数字以上の価値を持ちますが、Flying Blueはかなり高いレベルにあるのではないでしょうか。日系の航空会社と比べると段違いに高いと感じます。その分、1マイルの価値は低めです。

 

(3)上級会員資格が得られやすいプログラムです。

 

SkyTeam各社の便で一暦年中に

シルバー (Elite):25,000マイルまたは15回の搭乗

ゴールド (Elite Plus):40,000マイルまたは30回の搭乗

プラチナ (Elite Plus):70,000マイルまたは60回の搭乗

があればそれぞれの会員レベルになります。マイルが加算された時から、翌々年の3月までが上級会員資格の期間です。フランスとモナコ在住者は少し条件が異なります。 シルバーとゴールドの基準は目立って容易に見えますが、日本からは利用できる便は中長距離便になるという困難な面があり、難易度が相殺します。一方欧州では、LCC全盛。AFやKLを高い料金で乗るという文化が喪失しつつあるため、やはり上級会員は少なくなります。フランスでは企業同士の付合いもあり、AFも割に使われるようで、上級会員もそこそこいるはずです。

 したがって少しその気になれば、比較的少数の上級会員です。

 

(4)以下は裏ワザ的長所で、なくなる可能性大です。

 

SkyTeam提携航空会社には、会員情報の更新が非常に遅い組合せがあります。これがなぜ良いかと言うと、提携会社で上級会員資格を事実上延長できるのです。一度ある会員レベルに達した後、提携会社の予約を取ります。そこには会員レベルは反映されていませんが、空港でチェックイン時に会員カードを見せれば、その会社用に新しい情報を入力してくれます。翌年、会員レベルが落ちても自動的にはなかなか更新されないので、しばらくは高い会員レベルのまま認識されます。Gold以上はラウンジを使うと代金の請求がFFPに来るので書換えが早まるかもしれませんが、もしかするとSilverは永年かもしれません。

 私の経験でも、SkyTeam創設メンバーの某巨大航空会社で起きています。不正直と言えなくもありませんが、責任はシステム、つまり会社側にあります。こういうグレーな部分をあからさまに利用するのはどうかと思いますが、逆(あるFFPで上級会員になり、その会社では認識されているのに対し、カードが届かないばかりに提携会社では上級会員扱いされないこと)も起きるので、やはり航空会社側の落ち度だと思います。

f:id:PECHEDENFER:20141107191834j:plain

 

(5)さてFlying Blueの短所です。なんと言ってもマイルが貯まらない、特典航空券に必要なマイルが多いという点でしょう。これは2009年の制度変更からですが、この時にFlying Blueを見限った日本の会員も多いと思います。

 

一例を挙げると、日本-ヨーロッパ往復は、

エコノミー   80,000マイル →   80,000マイル

ビジネス  120,000マイル → 160,000マイル 

ファースト 160,000マイル → (480,000マイル?)

となりました。(ファーストクラスはFlying Blueの上級会員のみが対象です。)同時に、正規割引エコノミーの加算マイルも大まかに言って、50 %から25%になってしまいました。必要マイルは現在さらに上がっています。

 

欧州線を例にとると、マイル積算対象となる安い運賃(Classic:LCCよりはだいぶ高い)では片道188マイルしかたまりません。一方、欧州内往復無料航空券には25,000マイル必要です。133回飛んでようやく往復航空券になります。LCC信奉者でなくても、こんなFFPは無いのも同然と考えるでしょう。

 

搭乗による積算マイルが減少した結果、航空券代金を使ってAir France Shoppingで買い物をした方が、多くのマイルがたまるということも起きるようになりました。

 

一方、ビジネスクラスを使うと普通に(実マイルの125~250 %)、ファーストを使うと簡単に(実マイルの300%)マイルがたまります。日本からファーストクラスで欧州に2回行くと、だいたいエコノミーの無料往復航空券が得られます。また上級会員の場合、シルバーが50%、ゴールドが75%、プラチナが100%のボーナスマイルが加わるので、上級会員が高いキャビンクラスの航空券で旅行する分には、他のFFPより無料航空券はむしろ得やすいぐらいです。

 

要は勾配が極端なのです。Flying Blueは金持ち優遇プログラムです。

 

一方、一般人向け対策も用意されています。フライングブルーでは、無料航空券の割引を通年で行っていて、-50%も結構見つかります。ここにはフランス的なものを感じます。(フランスワインは高いのですが、年に2回ほど国中で安くする期間があります。生産者から流通者まで一斉に勉強するので、あまねく恩恵がもたらされます。高級品を多数の手から完全に遠ざけると、この国では革命が起きます。いや冗談抜きで...。)

 

日本の会員にとっての欠点は、SkyTeamが日本国内線を持たないため、マイルをためにくく、利用しにくいことです。近距離国際線で運行本数が多く、競争が激しければ、FFPの上では国内線と変わりませんが、そういう状況にもありません。

 日本国内に拠点があるSkyTeam加盟会社はデルタ航空(DL)です。他の就航会社は、アエロメヒコ(AM)、アリタリア(AZ)、中華航空(CI)、中国南方航空(CZ)、ガルーダインドネシア航空(GA)、大韓航空(KE)、中国東方航空 (MU)、アエロフロート(SU)、ベトナム航空(VN)で、特に近隣諸国の会社が多いのです。しかしほとんどの場合、多頻度搭乗には飛行距離が大きく、利用を増やすには至りません。

 日本第3の航空会社が育ち、SkyTeamに加盟すれば、状況は変わりますが、可能性は低いでしょうね。極東ではKEとCIがSkyTeamを背負っている状態です。かわいそうなのはDL。極東のハブ&スポークは中途半端です。

f:id:PECHEDENFER:20141107191716j:plain