PECHEDENFERのブログ

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スカイチーム加盟会社とマイレージプログラム

前の記事では、稼げるマイルとその価値という「即物的な」見地よりマイレージプログラム(FFP)を比較しましたが、運航路線の規模とか、提携の多さとか、顧客とのコミュニケーションとかいろいろと重要なファクターはあるはずです。そこで、今日は少し距離を置いてSkyTeam内のFFPを眺めてみます。

 

航空機に搭乗する多くの日本人は 、JALのJMBか、ANAのAMC、あるいは双方のFFPに加入しています。会員数は共に2,000万人を大きく超えます。それぞれ航空連合が関連付けられ、JMB会員だとoneworld内で、AMC会員だとStar Alliance内で特典が受けられます。

 第三の連合、SkyTeamには日本の会社は加盟しておらず、身近な国内線の利用と関連付けることが困難です。SkyTeamFFPに加入している日本人は少数派でしょう。しかし日本の会社を欠くがため、もしFFPを選ぶなら、多数の航空会社が候補になります。oneworldとStar Allianceだけでは物足りず、SkyTeamFFPも何か揃えたいと欲張ると、幅広い選択肢があります。

 

時々、SkyTeamは「残り物の寄せ集め」と揶揄されます。3大連合の中で最後に結成され、4社で開始したことは十分な根拠になります。(他の連合は5社で、狼煙をあげました!)結成は2000年。欧州のエールフランス(AF)、北米のデルタ航空(DL)、中米のアエロメヒコ(AM)、極東の大韓航空(KE)で、「北半球なら何とか一周できるね」みたいな連合でした。ぎりぎりの「グローバル」連合です。

 この年のStar AllianceのメンバーはLH, UA, TG, AC, SK, NH, NZ, SQ, OS、oneworldのメンバーはBA, AA, CX, QF, IB, AY, LAでした。圧倒的に見劣りします。

 AFはお友達が少なかったのですね。

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15年経過した今日、oneworldは敷居が高いようで、最も小規模になっています。各社の個性と連合における共通化のバランスが最も良く見えますが、それは主観でしょう。Star Allianceは制度設計が良かったのか、原則を壊さず拡大に成功、今も世界最大の連合です。業界パイオニアの強みというところです。

 意外に成長したのがSkyTeam。彼らが自画自賛する通り、中国の路線網の充実とアクセスは一番で、中国の経済成長を取り込んでいるように見えます。

 

現在の構成メンバーは以下の通りです。

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表にはFFPの会員種別とSkyTeam内での扱い、保有機数、就航地数をまとめました。赤字が創設メンバーで、*がファーストクラスの運用を行っている会社です。後者は効率主義から離れ、旅客サービスに余裕を持っている会社を意味します。

 

この表を見ていると、利用者の立場から様々なことが見えてきます。

 

(1)全20社の中で、ブランド臭さが付きまとうのは、AFのみではないでしょうか。他のファーストクラス運用会社は、高級な移動手段を残すよう国家レベルで要求されるような会社ばかりです。(中間的な、つまり普通の会社は大韓航空だけ。)ビジネスライクな雰囲気をまとうStar Allianceでも、LH, LX, SQ, NHでファーストクラスがイメージリーダーとして重要ですし、階級的な香りがするoneworldでは、半数以上の会社が長距離国際線ファーストクラスを運用しています。米系会社を比較しても、UA, AAが長距離国際線にファーストを残しているのに対し、DLはビジネスクラスだけです。

 サービスの単純化はコスト削減に効果的ですから、SkyTeamでは、AFとKEを例外として、渋ちんの航空会社と、サービス発展途上国の航空会社から成っていると言えそうです。

 

(2)寄せ集めと言えども、小さな会社が多いわけではありません。チェコ航空、MEAが20機程度の「小規模航空会社」として目立つぐらいです。サービス共通化のレベルが高いoneworldでも、ロイヤルヨルダンとスリランカ航空という「小粒」がいます。Star Allianceは、アドリア航空(14機)、クロアチア航空(11機)があるものの、それらにはLHの後ろ盾があり、その他の会社はほとんど50機以上有しています。

 なお中国の会社は急速膨張中。中国東方は200機以上、中国南方は50機以上のオーダーを抱えています。確かにSkyTeamは、中国の成長と切り離しては考えられません。

 

(3)連合内商品には、国際会議のサポートと多国籍企業相手の法人契約があります。これはoneworldと同じレベルです。国際会議(コンベンション)割引、国際会議(ミーティング)割引、大企業向け法人契約を提供するStar Allianceより少し遅れています。

 

(4)上の表は、FFPごとに大きく分類してあります。Flying Blueが入る2番目のカテゴリーは、標準的です。会員レベルは4段階で、1番上と2番目のレベルが航空連合内の上位の上級資格(Elite Plus)、3番目のレベルが下位の上級資格(Elite)です。この構造は受入れやすいはずです。各航空会社は連合内の共通サービスを提供し、それを超えた部分で個性的なサービスを用意し、自社の最高レベルの顧客をもてなすという構造です。

 上から4番目のカテゴリーは、SkyTeamが要求する最小限の会員レベルしかありません。会員レベルは3段階、1番上がElite Plus、2番目はElite、3番目は一般会員です。またアルゼンチン航空を除いて名称が一緒です。SkyTeamに加入するために急遽整備した感がします。

 5番目のカテゴリーは、Eliteに2つの会員レベルが対応しています。この2社は、もともと4段階あった会員レベルを、SkyTeam加入時に低い方に合わたように記憶しています。Ellite PlusとEliteの違いは、前者は会員が他社施設を利用した時、その会員の会社にコストが発生し、後者はコストが発生しないことです。コストを嫌い、自社のEllite Plus会員数を絞ったものと思われます。

 デルタと大韓航空は創始メンバーだけあって、独特のFFPを持っています。デルタは会員レベルが5段階もあります。昔はプラチナ以上がElite Plus、ゴールドとシルバーがEliteだったのが、今はゴールド以上がElite Plusとなり、Elite Plusに3段階あります。いずれにせよ、顧客も会社もデルタ内のことが大切で、SkyTeamは「付けたし」のようです。

 大韓航空はEliteに当たるレベルだけが年間搭乗実績主義であり、それ以上のレベルは終身会員主義です。期間は問わず、ある基準以上搭乗したら会員レベルが上がります。生涯Elite Plusの条件は500,000マイルなので、終身会員としては低い基準です。Eliteも最初の到達(50,000 miles)には、期間は問われません。

 

(5)SkyTeamのメンバーになるにあたって、UXとROは自社のFFPでは対応できないか、都合が悪かったため、Flying Blueに乗っかったと推測します。KQはもともとKLMとつながりが強い会社でした。ここもFlying Blueを採用することが、SkyTeamの中でやっていくのに有利と判断したのでしょう。経緯がどうであれ、AF-KLMは、Flying Blueという小さな連合を作っています。その規模は、Etihadが構築しようとしている自社と複数の地域航空会社の連合よりも大きいのです。

 

(6)どのプログラムが良いFFPか考えます。原則的にはSkyTeam加入に際して整備したFFPより、独自の路線を邁進しても平気なFFPの方が良いと思われます。もともと充実していたプログラムなので、独自性を維持する意味があったと予想されるからです。したがって上から3つのカテゴリーが、充実したFFPの可能性が高いでしょう。

 

(7)もちろん就航先が多いことも重要です。あちこちで自社会員になるわけですから、マイルの積算でも普通有利です。例外もありますが。

 

そうすると考慮すべきは、デルタ、AF-KLM、アリタリアアエロフロート、アエロメヒコ、中華航空大韓航空になるでしょう。その中でも「わが道を行く」で十分満足できるのはDL、ブランドの香りをまとっているのはAF。自社ビジネスクラスの利用で異常にマイルが積算されるAZ、やや規模が小さいけれど、近所のCI。KEはElite Plusが遠いので、少し魅力に欠けるでしょうか。他のFFPは強力な理由や動機が無い限り、穴場狙いかウケ狙いに見えます。

 

あまり使わないFFPだと、マイルの期限も大きなポイントです。DLは無期限、AF-KLMは20か月に一度、SkyTeamでマイルを加算すれば無期限ですが、AZには(たぶん)5年、CIには3年という期限があります。そうするとDLかAFの2択になります。

 

原則重視の物差しで絞ると、SkyMilesとかFlying Blueがクローズアップされるのでした。無料航空券が遠いFFPですが、それなりに価値を認めてもよいのではないでしょうか。AZやCIも使い方次第という気がしますが。