PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

イギリスとワンワールド

最初のグローバルな航空連合はStar Allianceで、発足が1997年。創始メンバーは、Lufthansa, United Airlines, SAS, Thai Airways International, Air Canadaの5社です。実はそれに先立ち、LufthansaとUnitedは、前例がない包括的パートナーシップを進めていました。この大西洋をまたぐ協定を軸にStar Allianceが形成されたことは間違いありません。歴史的なしがらみがない構成員から作られたので、非常にビジネスライクに見えます。搭乗客にも、新規加入会社にも自然で、つきあい易い連合になっているようです。

 

対策を迫られたであろうBritish Airwaysは、国家レベルのネットワークを利用して航空連合を立ち上げます。oneworldは、British Airways(英)、Qantas(豪)、Cathay Pacific(香港)、Canadian Air(加)とAmerican Airlines(米)によって産声を上げます。3大航空連合にモレなく付いてくる米国メジャーを除くと、全てコモンウェルスの有力メンバー全てイギリスの忠実なしもべです。イギリスは植民地支配に利用した海の航路を、空に置き換えたのです。空のコモンウェルスの成立です。

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後から加わる航空会社も、日本、マレーシア、カタールスリランカなど、イギリスと仲良しの国(世界的に見ると親英国は少数派)が多いのでした。またそれらの路線は、イギリス流の航路網として、ごく自然に世界の一部を構成しているように見えます。

 大陸内に良く機能する交通網を敷くのではなく、海に面していていろいろな所にアクセスが良い港を整備するということを何世紀もやってきたイギリス。空の交通網でも同じことをやっているイギリス。進歩がありません。

 

利用者の立場でも、oneworldにはイギリス的な要素が見え隠れします。例えば3段階の上級会員制度を世界共通にするあたりは、さすがの階級社会です。加えてキャビンクラスも古典的で、今時国際線ファーストクラスを持つ航空会社が集まっています。oneworldは長距離を飛ぶイメージが強いし、そうした客を優遇しています。押しなべてラウンジに力を入れているのは、その影響と言えます。

FFP共通の会員特典に、first class check-in counterの利用だとか、first class loungeの利用などがあります。航空連合は互恵主義ですから、しっかりした国際線ファーストクラスの運用会社でないと、加盟できないことを意味します。航空会社にとっては敷居が高いはずです。しかし連合全体で身動きがとれなくなったのか、AY, LA, S7, RJ, UL, AB, IBなどファーストクラスがない会社の数が、半数に迫ろうとしています。

 

British Airwaysのハブ、London Heathrowは、21世紀版「太陽の沈まぬ帝国」の中心に相応しいプレステージ性を持ちます。どの加盟会社でもLHR線は特別です。American AirlinesはLHRにファーストクラスラウンジまで持っています。他にはアメリカに3か所(ORD, LAX, JFK)にあるのみ。LHR空港は高い税金が取れるし、世界中からの搭乗客は金を落とすし、うまくできたシステムです。イギリスは大昔からこういうことが得意。そして堂々たる専用ターミナルT5を持つBAが、oneworldの盟主として君臨しています。

 

ライバル(?)SkyTeamは、そのサービスの質を誇示するために、大型ラウンジをLHRのT4に作っています。しかし、皮肉なことにLHRプレステージ性を高めるのに一役買っています。

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SkyTeamは、同種の共同ラウンジをISTにもこしらえました。競争相手の本拠地を中心に展開する戦略ですね。羽田か成田にも作ってくれないでしょうか。地理的にも情勢的にもちょうど良いと思うのですが。

 ちなみにStar Allianceの共同ラウンジはCDG, LAX, GRU, EZEの他、NGOセントレア)にあります。一方、oneworldは敵陣中に共同ラウンジを持っていないようです。

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アルマダの海戦(1588)以来、虫が好かないイギリスとも一緒になったスペイン(イベリア航空)や、LANとTAMの加盟による南米大陸での路線網の構築など、イギリス的でなくなっているところもあります。さすがに世界を自分色に染めるほど、今のイギリスには力はありません。その一方でoneworldの路線網を見ていると、中国を包囲するようにS7 Airlines、Cathay Pacific、JALが拠点を構え、そこから路線を広げています。イギリス的な展開です。またS7がロシアを串刺しにしている点も、それらしく見えます。

 

このように細部をよく見ると、イギリスの臭いがプンプンする要素があちこちに見つかります。oneworldは、機内におけるコーヒーに対する茶の消費量がもっとも多い航空連合でしょう。

 

したがって旅行者も、

①遠方からイギリスやヨーロッパに来ることが多い

oneworldがいい

の2条件を満たすなら、贔屓にする航空会社はBritish Airwaysだと思います。BAの客は、何かにつけてLHRでは恵まれています。T5は他のターミナルと異なり、賑やかな割には整然としており、地上職員の愛想の良さも不思議なくらいです。

 あと足りないのは、BAの機内で出されるお茶が平凡なことぐらいでしょうか。QFやQRの方が美味しく感じられるのですね。私には。