PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

ギャラリーズ・ファースト・ラウンジ詣で

SNSでヒースローと言えば、ここ。プレスティージャスなイメージの割には入室はそれほど難しくない(註1)という、「自分盛り」のためにあるような場所です。British Airways Galleries First Loungeです。

(註1)このラウンジは、BAに搭乗するoneworld Emerald会員用。Emerald会員になるのが簡単かと言うとそうでもないのですが、自分盛りの舞台としての効果を考えるなら、そのハードルなど何のその。

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馬の帽子が光ります。スイッチを入れれば光るの意味で、センスの方は「動物+文明の利器」の組合わせが相変わらずグロテスクです。

 ここはイギリス。「サンドイッチも紅茶も本場+絵文字」と入力したくても、laptop=労働の象徴を並べては「痛い」人になります。(註2)空気を読みましょう。自分盛りのチャンスを逃さないなら、醜悪な電化製品は隠して、HOURSE & HOUNDあたりをぱらぱらとめくるのがよろしいのではないかと...。(註3)日本人なら本当の読者(註4)でも、多分そういう行動をとるから「盛り」に無理がありません。HOURSE & HOUNDを日本で購読すると、電子版の方が圧倒的に安く、印刷体は珍しいはずだからです。(註5)

(註2)ラウンジや会員制クラブは社交のためにあり、そこで仕事に没頭するのは「反則」です。しかも仕事ぶりを自分撮りするなど、意味不明です。もっともforeignerは変でも仕方ないし、実際には仕事をしている「かわいそうな人」もいます。

(註3)日本でせっせと盛っている虚像は、このラウンジにいる大部分の人にとっては日常。日常の煩わしさを一時でも忘れるというささやかな贅沢を、中産階級丸出しの行動でぶち壊してはなりません。期待されるのは、上流階級の香りを漂わせること。乗馬と狩りは趣味として◎です。趣味をさり気なく表現することは、社交の初歩テクニック。服装や小物も考えた方が良いかもしれません。盛る必要のない人は、laptopでもFinancial Timesでも自分の好きのものを広げていて問題ありません。その場に必要な気品は身についているはずです。

(註4)イギリス社会では「紹介で知り合う」という原則があります。HOURSE&HOUNDの日本人読者があなたに興味を持って話しかけても、この原則を無視した無礼な行動ですから、「あら、こんな失礼な方もいらっしゃるのね。」という驚きと侮蔑の表情で軽くいなせます。万が一ラウンジに英国人の知り合いがいて、乗馬と狐狩りが趣味という人を紹介されても、英語が不自由な振りができます。本当に便利ですね。

(註5)自分盛りのために、Terminal 3のHermèsに行ってcravacheを購入するのはやりすぎです。「痛い」人ではなく、「危ない」人になります。

 

写真は誰かに撮ってもらい、アップは搭乗ゲートでというパターンがぎりぎりの線でしょう。自分がEmerald会員だったら、T5で人を捕まえて「Loungeに入れてやるから写真を撮ってくれ」という交渉も可能でしょう。会員資格がない場合は、Emerald会員を探し出し、一緒に入るお願いついでに、撮影もやらせましょう。

 Concorde Roomだったら、こんな気配りは必要ないでしょう。人が少ないので、foreignerしていても、もはや何が基準かわかりません。

 

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盛りネタはもちろん冗談ですが、ラウンジの空気については本当です。利用者が醸す雰囲気がイギリスの会員制クラブを思わせます。皆、ゆるりとリラックスしているけれど、だらしなくなっていません。何もなくても上質な時間が約束されるような空間。自分も余裕を持った振る舞いができるという点で、他のラウンジと一線を画します。

 背負った歴史、社会、文化が創り出す真似できない空間。まだ存在するのですね、こういう場所。訪れることを目的に旅行したくなります。航空会社は、いまだに良い顧客を持つことが大切なようです。

 

どうでも良いことですが、ワインは充実しています。Taittinger 2006 rosé、Chanson Beaune 1er Cru 2009 Bastionをはじめとして、まずまずの水準のフランスワインが5~6種類ありました。

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かなり人が居たので、ラウンジの様子を撮影するのは遠慮しておきました。私も品行方正にしないといけません。

飛行機の写真を撮っている振りをしていました。趣味には見えず、おのぼりさんに見えていたと思います。

 

窓の外はBAばかりです。

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先日ORYに行くのに搭乗した機材、G-EUPAと同じ塗装です。と言うより、同じ機材でした。

 

品良くのんびり過ごせて、本当に良い場所です。BAが嫌いだとか、英語を聞くと蕁麻疹が出るなどという事情がない限り、一押しのラウンジです。

 今回は窓際に座って外をぼんやり見ていただけですが、ソファーでThe TimesかThe Guardianのどちらかをゆるりと読んでいたいところです。無節操?どっちみち選挙権はないし、支持政党もないし、興味深く読めればどちらでも良いのではと思います。BAのエコノミーとかプレエコでは、Daily Mailですからね。手にする人が少ないことはわかりきっています。階級社会の性質を利用した経費削減。さすがはBA。

 

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入り口はこんな感じ。帽子がやっぱり変。

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