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機内用に採用して欲しいワイン(1)

機内のワインを非常に楽しみにしている人は少ないと思います。ワインリストが読め、ビジネスクラスやファーストクラスに乗る客は、典型的なワインの味わいや銘柄は頭に入っています。それに対して、航空会社が機内で提供するワインはあまりにありふれているのです。ワインの場合、価格と満足の相関が低いのにもかかわらず、キャビンクラスとワインの価格を釣り合わせざるえないところに問題があります。

 

ワイン生産国でもない航空会社の典型的なワインは、次のようなものでしょう。ファーストクラスならMédocのCru Classé 、スター生産者のつくるCôte de Nuitsの村名ワイン(赤)、Puligny-Montrachet 1er Cruの何か(白)、スター生産者のつくるPouilly-FuméとかChablis Grand Cruの何か。ビジネスクラスだったらSaint-Émilionのワイン、良い生産者がつくるBourgogneの広域ワイン(赤)、ChablisかMeursault(白)、良い生産者がつくるSancerre(白)と値段が変わる程度の違いしかありません。書いていてため息が出てきます。

 

サービスには嬉しい驚きが必要ですが、こんな調子では期待薄です。国際線ビジネスクラスやファーストクラスの乗客は、空港ラウンジでも飲み食いしているわけです。機内のワインセレクションが地味というは、あまりいただけません。典型的でないワインをリストアップできないものでしょうか。

 

JALのSalonのように例外もあります。高価なだけという意見も一理ありますが、Champagneですからそれも良いと思います。

 

以下は、他にこんなものはどうでしょうという私的な希望リストです。すでに搭載している航空会社もあるかもしれませんが、あまりありふれていないことは確かです。特にワインの歴史がない国の会社での採用を期待します。まずは赤ワイン。

 

(1) Taurasi(ファーストクラス用に)

・日本ではイタリアの3大赤ワインとして紹介されることが多い。

・他2つはBaroloとBrunello di Montalcinoのはずで、これらは3大赤ワインとは言われない。

この2つの事実からほぼ論理的に導かれる帰結は、

・Taurasiは、品質のわりに低価格

です。山の民の食文化の頂点に位置するBaroloは、「王のワイン、ワインの王」。ちょっとしたものだと100€を超えます。またフィレンツェの大商人の会食を華やかに飾ってきたBrunello di Montalcinoもしかり。代表格のBiondi Santiで150€ぐらい。一方、Taurasiは偉大な赤ワインの貫禄が十分ですが、40€も出す必要はありません。(通常市場流通品の場合)

 Aglianico100%から作られるこのワインは、熟成すると上質なブーケを発散します。たっぷりしたタンニンと酸は長い樽熟のおかげで調和し、堂々としたボディを構成、長い余韻を与えます。口に含むと、深い淵を覗き込むような感覚に襲われます。前触れも無く、突然真理に対峙させられるような気分です。

 BaroloもBrunello di Montalcinoもテーブルのワイン。会食、宴会向けなのです。ファーストクラでもビジネスクラスでも人と向かい合って食べることは稀です。Taurasiのまとう瞑想性は孤独な空の旅にもってこいではないでしょうか。

 

瓶熟成は必要ですが、その期間は他の赤ワイン、例えばChambolle-Musignyに比べて長いわけではありません。

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(2) Coonawarra Cabernet Sauvignon (ファーストまたはビジネスクラス用に)

これをテロワールと言わず、何がテロワールなのでしょう、というぐらい特殊な味わいです。一口味わえば、絶対忘れません。赤い大地が現前に現れるような感覚を覚えます。

初めて飲んだ時、錆鉄の香りが強かったので、赤い土壌かなとすぐ思ったのですが、確認すると確かにそうでした。テロワールの否定論者も大勢いますし、土壌成分とワインの味わいは基本的に関係ないとする専門家が多いのですが、こういうワインはなんとも説明つきにくいところです。もちろん果皮に付着したほこりのせいだとの言い逃れも可能ですが、自然発酵なら付着した酵母を使うわけですから、逆にテロワールの味わいという立場に支持することになります。

 オーストラリアを代表するCabernet Sauvignonとして名声を博していますが、この国で評判が良いのはShiraz、その次がChardonnay。Cabernet Sauvignonでは値段は大したものにはなりません。個性的な香りに好き嫌いは出そうですが、そのレベルは評論家や愛好家のお墨付きですので、機内ワインリスト入りは問題ないはずです。

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(3) Alsace Pinot Noir Grand Cru(たとえばClos St. Landelin, René Muré

ファーストでもビジネスでも。

 Clos St. LandelinはGrand Cruの中の一区画ですが、うるさいことを言わず、とにかくAlsaceの良い畑のPinot Noir。AlsaceのPinot Noirは飲み頃を迎えるのが早く、普通は10年も必要ありません。Bourgogneの著名一級畑と比べてもかなり短いのです。

 Pinot noirという品種は、栽培する土地により全然違ったワインになります。そこでアメリカのバラエタル・ワイン戦略の先鋒となったCabernet SauvignonやMerlotに比べて、他所での栽培が「難しい」とされてきました。しかしものは考えよう。Bourgogneの味わいを意識しなければ、逆に色々なワインが出来るので面白いとも言えます。現代ではさまざまな国で栽培されています。

 そもそもAlsaceやドイツ各地でもかなり栽培の歴史があり、Bourgogneとはかなり違ったワインを造っていたのですから、新世界はその事実にもっと早く目を向けるべきでした。

 Bourgogneの方には申し訳ありませんが、Alsaceの良質なpinot noirは割合食事を選ばないので、機内では活躍するはずです。最高級のものでも50€はしないでしょう。

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(4) Château d'Issan(ファーストクラス用に)

このワイン、en primeurで買うと街の小売商で一本36€ぐらいです。日本で売り出しが9,000~10,000円ぐらいになります。似たようなクラスのワインを見てみると、

Durfort-Vivensは30€に対して4,000円~5,000円ぐらい

Boyd-Cantenacは32€に対して4,000円~5,000円ぐらい

という具合です。価格は現在Bordeauxで購入できるprimeur(2014)と、日本における最近の現物の小売価格です。どういうわけだか、例年Château d'Issanはprimeurが安いのです。

 今、航空会社は自社倉庫にワインをストックすることはないでしょうが、悪い投資にはならない気がします。この先、中国経済が下を向くと予想されるので少々注意が必要ですが、このワインは得なのではないでしょうか。

 ワイン自体は良く知られるように、Cabernet Sauvignonが60~70%と多め。畑はまとまっており、Médocにしては珍しいほどの土地の個性を感じます。Margauxのワインですから、若い時期も荒々しくなることはなく、使いやすいワインです。

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(5) Aglianico del Vulture(ビジネスクラス用に)

Basilicata州のDOC。Campania州のTaurasiと同じaglianicoから作ります。Taurasiほど強烈な印象は与えませんが、性格は良く似ています。ブラインドで区別するには馴れが必要ではないでしょうか。

 値段はTaurasiの半分と言ったところ。偉大という形容はあまりふさわしくありません。だからビジネスクラス。しかし代用品という位置づけにはならないでしょう。aglianicoの別の個性が現れています。