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フランス旅行で気をつける法律

フランス人総体は何となくカオスですが、フランスにも法律はあります。Nul n'est censé ignorer la loi.はフランス語。しかし18世紀末の革命で旧弊が一掃されたこと、立法、司法、行政に携わる人間が、日頃から法律と一般人の価値感とのバランスに気を使っていることから、イギリスのように地雷だらけというほどではありません。女性差別についてよく知られた

”Le port du pantalon n'est pas un délit si la femme tient par la main un guidon de bicyclette ou les rênes d'un cheval.

「女性は自転車のハンドルか馬の手綱をにぎっている時はズボンをはいてよい。」

というマッチョな法も、少なくともパリでは廃止されました。2013年のことです。それまでは、女性はズボンをはいての観光も違法行為だったのです。当然外国人観光客も!

 

少し安心とは言え、注意が必要な規則は存在します。

 

(1) 呼称規制

豚を連れてフランスを旅行をするなら、一点気をつけるべきことがあります。

"Il est interdit d'appeler son cochon Napoléon."

「自分の豚をナポレオンと呼んではならない。」または「飼い豚にナポレオンと名づけてはならない」の意味です。sonがunになっている場合もあり、この場合は気をつける範囲が格段に広がりますが、幸い後者は少数派。転写ミスのようです。

 

飼っているミニブタにles Champs-Élyséesを見せてあげたいと思う人は少ないでしょうし、現地で豚を購入する観光客はもっと少ないと思います。しかし以下の点には注意。

 条文を構成する単語の意味範囲を為政者が恣意的に広げることは、独裁国家の日常です。不都合な人間を簡単に拘留するためですね。フランスもテロの直後は、かなり厳しく取り締まるので注意が必要です。単語の意味する範囲は変動します。

 そこで規制に戻りますが、cochonは単一の種を表すわけではなく、総称です。cochon des blés(ハムスター)や cochon d'Inde(モルモット)、vieux cochon(助平ジジイ)など、豚よりネズミ、ヒトに近い生物もcochonで呼ばれます。したがって、規制の対象になる可能性があります。

 cochon de merがナポレオンフィッシュだったら混乱に輪をかけたでしょうが、残念ながらこれはカワハギの仲間。この名称、海豚(marsouin, イルカ)を意味することもあります。そのままですね。豚に似た棘皮動物(scotoplanes)も同じ名称で呼ばれます。

 ハムスターをパリで拾った時はこの法を思い出し、Napoléon以外の名前をつけた方が良さそうです。

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(2) 凶器

旅先での仲たがいは禁物です。とは言っても、起きてしまうものは仕方ありません。しかしパリのホテルでは、いくらかっとなっても「お前にはこれがふさわしい」とごみ箱を投げつけてはいけません。殺人未遂に問われる可能性があります。

"À Paris, une poubelle est considérée comme une arme mortelle."

「くずかごは致死性の凶器と考えられる。」

携帯灰皿(cendrier de poche)も投げつけてはいけません。cendrier(灰皿)は、フランス国内でune arme mortelleとされています。

 枕については規定がないので、枕を使いましょう。Bataille de polochonsですね。ちなみに日本では枕は砲弾の代わりですが、西洋では棍棒の代わりです。十字軍遠征とガリア戦争ぐらいの差があります。

 

Gaulois vs. Romainsごっこも、現地でやれば盛り上がるでしょうが、後日ホテルから高額の請求が来る可能性があります。

 

(3) 挨拶

深夜に侵入した鉄道車両基地。Bricoramaで買ったスプレー缶で、44=Breizhなどと電車に大書していると、向こうから近づく人影が。Vannesの中学で一緒だったGwendalだと、久しぶりの邂逅に感動しても、彼を抱きしめたりしてはいけません。レールの上での抱擁は禁じられています。

"Il est interdit de s'embrasser sur les rails."

明らかに列車往来の妨害、死傷事故の回避のためにつくった規制ですが、なぜこの表現にまとめたのか不思議です。

 路面電車の軌道もrailsに分類されるので、この法は街中でも適用されます。SNCFの軌道は侵入になりますが、Tramwayの軌道は横断にしかなりません。観光客は要注意です。深夜、運転終了後は単なる通りと変わりませんが、規制は有効と考えるべきでしょう。

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またs'embrasserはキスも意味します。レールには十分な警戒が必要です。

 

(4)  交通規制

 Châteauneuf-de-Papeは小さな町。ワインが有名です。この町に空から到着する場合、細心の注意が必要です。酔っ払い操縦ではなく、特殊な規制があるからです。この町には、

”Le survol, l'atterrissage et le décollage d'aéronefs, dits soucoupes volantes ou cigares volants, de quelque nationalité que ce soit, sont interdits sur le territoire de la commune.”

”Tout aéronef, dit soucoupe volante ou cigare volant, qui atterrira sur le territoire de la commune, sera immédiatemet mis en fourrière.”

”Le garde-champêtre et le garde particulier sont chargés, chacun en ce qui le concerne, de l'exécution du présent arrêté.”

「町域では飛行体、ここでは空飛ぶ円盤または空飛ぶ葉巻、の飛行、着陸、離陸は、その国籍を問わず禁止する。」

「町域に着陸する全ての飛行体、ここでは空飛ぶ円盤または空飛ぶ葉巻、は直ちにレッカー移動される。」

「Le garde-champêtre(景観管理官?)と専門警備官がそれぞれの関与する範囲でこの行政命令の執行にあたる。」

と3か条にまとめられた行政命令(un arrêté)が存在します。これは1954年に出されました。UFOが騒がれ始めた頃でしょうか。その後は話題性が下がる一方のUFOですが、町は2010年代になってもこの行政命令を廃止する意図がないそうです。

 Avignonにもこれに類する規制があり、UFOを旧市街に停めたら、駐禁取られます。50年代、あの辺(ともにVaucluse県)に何があったのか、気になるところです。

 

空飛ぶ円盤(une soucoupe volante)も空飛ぶ葉巻(un cigare volant)も乗らないので、旅行者には全然関係ないよという見方は間違っています。この命令、有人か無人かを問題にしていません。したがってドローンも規制対象にすることができます。円盤型だったり、葉巻型だったら、まさに規制対象に合致します。1950年代につくられた風変わりな規制は、60年間全く役立たなかったと思いますが、今日、迷惑な問題に対処する武器になるかもしれません。

 Vaucluseあたりでドローンを使う時は、当局の許可を取ったほうが無難です。

 

UFOを対象とした規制に、有人、無人の区別が無いのは当たり前ですね。ドローンの規制をどうするか、国、自治体で一生懸命考えているのは、日本を含めた先進国の今日的な問題。ばかげた法律としてよく引き合いに出された南仏の規制ですが、先進の法律に化けました。ドローンなんて、OVNI(Objet volant non identifié = UFO)そのものですから。

 

(5) 写真

許可なく写真を撮ると、カメラの画像を全て検閲され、問題がありそうな写真が全て消去されてしまう国があります。独裁国家共産主義国で多い話です。問題のあるデータだけならまだしも、全てのデータが消去されることもあります。

 フランスにも、法令で明確に禁止されていることがあります。

"Il est illégal de prendre des photos de policiers ou de véhicules de police même si elles sont juste en arrière-plan.”

「警察官または警察の自動車の撮影をすることは、たとえそれがただの背景として写っていても、違法である。」

人は何となく避けることができるのですが、パトカーは甘くなりそうです。絶対に写らないよう気をつけましょう。