PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

旅のことば(1)

旅行ガイドブックでは、巻末近くに現地語の解説がある場合も多いようです。もちろん旅で使う簡単なフレーズしか出ていませんし、旅慣れた方は使わないでしょう。しかし搭乗時、本当にこういうフレーズを使うと、なかなか興味深い結果が出てくることに気が付きました。国籍が多様であり、いろいろな言語環境があります。確かに、「機内からxxx」というのは事実です。張り切って搭乗時に現地語で挨拶してみると、いろいろなことが起きます。

 

(1) Alitalia

イタリア語。ヨーロッパの主要言語の内、日本語母語話者にとって最も上達が早いのではないでしょうか。発音が日本語に近いと思います。したがって、少し聞いただけでも耳に残るので、練習しなくても、それっぽく喋れば通じます。これホント。

 挨拶は客室乗務員が行うもので、客は無言で不機嫌な外見をしていると信じる者も、悔い改める日が来るかもしれません。改宗を行う航空会社として一押しなのがAlitalia。ブォンジョルノとか、ブォナセーラとか、Youtubeの基礎講座ビデオでチェックしておけば、本番でもまず通じます。

 問題はその後なのでした。客室乗務員の方は、「イタリア語OKなのね」と思い、べらべらとイタリア語が返って来ます。それだけ発音が容易だということですが、そこでどうするかで信仰が問われます。まあ、その後がどうであれ、ヨーロッパではありがちな問題なので深刻なことにはなりません。ご安心を。

 

なお、Alitaliaの客室乗務員は丁寧で上品なので、Ciaoなどという砕けた挨拶は止めた方が良いと思います。それでは、arrivederci.

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(2) Air France

フランス語が蔓延しています。東京-パリ便では、日本パスポートを持つ客もfrancophone(フランス語話者)。10人に1人ぐらい居そうです。いやはや凄いfrancophoneの比率です。

 フランス語は、日本語と同じく一母音一子音が原則。音素が少ないのは事実で、抑揚も種類が少なく思えます。日本語母語話者にとって、比較的容易な言語です。しかし日本語には無い音がかなりあります。一方、音素が少ない分、正確に発音されていないと通じません。一夜漬け程度では、せっかくこっちが頑張っても、相手には聞き取れないでしょう。vache espagnoleにも劣ります。

 そこで搭乗時のフランス語は諦めるとして、代替言語として何語を使うかですが、バカ丁寧な英語が良いかと思います。乗務員が日本語が上手なフランス人だったら、バカ丁寧な日本語の方が良いでしょう。フランス人の一般的な傾向ですが、相手が丁寧で礼儀正しく、さらに威厳があると、途端に借りてきた仔羊になってしまうのですね。

 日本人客室乗務員に担当されたら、「ここは日系の航空会社だ」と自己暗示にかけて、そういう客らしく振る舞うのが正解でしょう。こういう乗務員は、たいていフランス人の配偶者を持ち、生活の拠点がパリ近郊ですが、会社はそういう客の相手を想定して雇用しているのですから。

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(3) Lufthansa

客室乗務員ならドイツ語をしゃべります。訛っているかもしれませんが、こっちの喋るドイツ語は理解します。そんなことより問題は、ドイツ語の発音があまりやさしくないことでしょう。「カタカナのように読めば良い」というのは、獨語教育界のプロパガンダ。第二外国語で廃止されるのを何とか遅らせる作戦。Unternehmen Britzkrieg。どうせ第二外国語の時間数では「通じる」には全く足らないので、誤解したまま卒業でも同じの電撃戦。少々意地悪ですか?

 とにかく音が日本人にとって困難です。子音の連続が多すぎます。独特の強弱アクセントがあります。独特の抑揚があります。独特の長短リズムがあります。しかも母語話者は訛っています。これでどうやって慣れるのでしょうか。

 LH715(ミュンヘン行)に乗るからと、初めてグーテンタークを覚えて、羽田で使った場合、ありそうな応答は「ご搭乗ありがとうございます。」ではないかと思います。その後、ドイツ語でべらべらやられて困るという事態にはなりにくいでしょう。どうせだったら、Grüß Gottと砕けた挨拶をかましてやるのが良いかも。それから機内食で出る小さな丸パンは、Brötchenではなく、SemmelやWeggla、Weckleと呼んでやりましょう。本当になんでこんなに単語が多いのでしょう。ドイツ語は…。いや、正確にはドイツ語ではありませんが。

 あまり複雑なことを考えなくても、英語で何とかなりますから、機内では問題ないはず。また日本語が上手なオタクもいるかもしれません。

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(4) British Airways

英語ですね。ここは素直に流れに乗りましょう。片仮名では、グッドイーヴニングでしたっけ。東京便でも日本語をしゃべる人は一人しか乗っていないようですし...。英仏間でも、フランス語は避けた方が良いと思います。英語が難しそうなら、勉強しないといけませんね。通じるには通じます。下手でも大丈夫。しかし正しく発音するのは、ドイツ語よりさらに難しいと思います。正統な英語は、音が多すぎる上、音が微妙すぎます。私は習得を諦めました。

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彼らも、英語という言語は世界中の人が、それぞれ勝手な発音でしゃべるものだと良く心得ているので、問題ありません。統一性の喪失は、世界化の必然です。

 

続きます。