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バス代わりの飛行機

Tipps für Flugreisen

ワインスクール代わりの飛行機(その9):シンガポール航空ビジネスクラス

優等生シンガポール航空。同格のサービスを他社と比較すると、少しづつ上を提供する戦略。しかしながらその差が常にわかりやすいかと言うと、そうでもありません。シートの革だとか、SilverKrisラウンジでのダイニングテーブルの石だとか、多くの客には伝わっていないと思います。

 シンガポールという都市は、税制上の理由で金持ちが住むのに適していますが、そういう顧客に引きずれるのでしょうか。それならファーストクラスだけで十分。エコノミーやビジネスクラスでは関係ないと思いますが、下位クラスも「見てくれに騙されず、本物の価値を知る客」言い換えると、「姑のように細かいところにうるさい客」向けになっている気がします。成功している会社は、サービスから客層が見えてきますが、SQの客はそういう感じなのでしょうか。

 シンガポール大英帝国の重要な中継地として発展しましたが、独立後は工業化を経て金融センターへ脱皮してきています。しかし土地が限られますから、最終目的地としての需要に過度の期待は禁物です。中継はなお重要なビジネスのはず。

 さて乗継ぎでは、地勢的な要素が大切です。そもそも、これがシンガポールが生まれた理由です。しかし今日積極的にSQを使う気になる移動は、アフリカ+ヨーロッパ+中東+インドと東南アジア+オセアニア間でしょう。中華系のビジネスマン、ヨーロッパのビジネスマンなどが利用するのですかね。IFEのプログラム構成を見ていると、フィリピンとかインド出身の単純労働者も多いはずです。

 

ビジネスクラスのメニューを見ていると、アジア人向けというより、イギリスやオーストラリア人向けのような気がします。

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TPE-SIN間で使わているメニューブックです。食事メニューと飲料メニューは一冊にまとまっています。

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 1-7頁が食事メニューで英語、中国語の順番。菊井の村田吉弘氏を含めた、8人のアドヴァイザーがいるぐらいが目立つぐらいで、何の変哲もありません。

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ただし、食事の内容はさすがのSQで、充実していました。

 

8-10頁がワイン。8頁全体が3人のアドヴァイザーの紹介になっているところが、特殊といえば特殊。肝心のワインについては平均的な紹介。パッと見てわかりますが、ワインそのものより、アドバイザーの紹介に熱心です。英語のみ。

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9-10頁はカクテル9種、蒸留酒9種、食前酒1種、リキュール3種、ビール2+種。商品名だけを英中2語表示。シンガポールスリングとか、シルバークリススリング、チョーヤの梅酒などもあります。

 11-12頁はソフトドリンク。商品名を英中2語表示。英語による簡単な説明がついているアルコールフリーのカクテルが5種ある以外は、いたって普通。

 13-14頁がコーヒー飲料で、11種あります。名称は英中表示。簡単な説明が英語でなされています。

 15頁が紅茶7種。英語による簡単な説明付き。16-19頁がその他の茶。英語、中国語の順番。

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中国茶5種にはワイン並みの説明。日本茶、印度茶、ハーブティー2種にはそれぞれ一文の説明が付きます。

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わざわざイメージビデオを作成するだけのことがあって、メニューでもかなり熱心に紹介しています。

www.youtube.com

ただお茶って、茶葉の良しあしより淹れる人の腕で決まってしまうような気がするのですが、その辺は大丈夫なのでしょうか。

 

少し細かく見ましたが、何が言いたかったかというと、ワインの取り扱いが軽いことです。飲料のページが12頁あるうち、ワインの説明は2頁のみ。ラベルの写真こそありますが、説明量は中国茶並みです。ワインのアドヴァイザーは豪、中国系、英と経歴が違う3人のMWと重量級ですが、選ばれた品には全く力が入っていません。こけおどしはSQらしくありません。

 

セレクションは、ビジネスクラスの基本形(泡1、白2、赤2)に加え、ポートが入ります。キャセイパシフィックと同じレベルです。

 

ChampagneはTaittinger Brut 2007。他社より格上。しかし正直申し上げて、単一年という以上の特徴は見つけられませんでした。混合(mélange)の程度が低いだけ、味わいがすっきりし、ブドウ本来の特徴が前面に出て来るという程度。Comte de Champagneより、NVにはるかに近い商品に感じました。

 白1枠はRheingau Riesling ブレンド品で、2013 Kabinett。EltvilleにあるBalthasar Ressの手によるもの。この生産者はErste Lageを5種、Grosse Lageを16種(GG4種、BA1種、TBA1種、Eiswein1種を含む)と多くの高級ワインを醸造する一方、中間レベルのOrtswein3種、普及品のGutswein13種およびLandwein4種をつくります。このワインはGutsweinで、品質が高めの普及品という位置づけです。

 ネゴシアン物の"Bordeaux"とか、"Côtes de Rhône"とかいうレベルです。ビジネスクラスのワインとしては役不足という印象を受けます。スター生産者というわけでもありません。味わいも、tout justeでした。小売価格は、おそらく10-15 EURでしょう。

 白2枠はMargaret RiverのChardonnay。Devil's Lair Hidden Cave 2014。西オーストラリアですが、よく見かける産地。穏やかな性格。これも25 AUD程度のボトルだと思います。

 

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赤1枠はHaut-Médoc。Château Doyac 2012かChâteau Peyrabon 2010ということでしたが、試しませんでした。私は前者のワインを飲んだことがあるかどうか覚えていません。後者のChâteauは時々出会いますが、Pauillacのワインに似ており、シーダーの香りが明確なワインです。割とよく見かける「ありふれたワイン」という感覚が強いのですが、いざ探すと見つかりません。Bordeauxワインはそういうものかもしれません。小売価格は2,500-3,000円ぐらいになるはずです。

 赤2枠はMarchesi de Frescobaldi Nipozzano Chianti Rufina Riserva 2010。トスカーナの貴族印。試していません。品自体は時々見かけるものですが、2,000円ぐらいです。

 ポートはTaylor's 10 year old tawny。とりあえず置いてありますといった程度。

 

高級エアラインの評価が定着しているSQですが、ワインに関してはchampagneを除いて高級感がありません。セレクションも凡庸な感じが否めません。「おっ、こんなのを積んでいる」とか、「これは飲んでみたいと思っていた」、あるいは「このワイン、意外といける」などと客が思う可能性はかなり低いのではないでしょうか。

 機内食サービスもそこそこ手が込んでいる一方で、このワイン。残念感が強いのでした。

 

高級エアラインも差がわかりにくい部分では、少し上を行く部分とそうでない部分があることが分かります。今回記事を書くにあたって、メニューブックを見ていて思ったことは、「次の機会があったら、Singapore SlingとSilver Kris Slingは注文しないと...。」でした。