PECHEDENFERのブログ

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ワインスクール代わりの飛行機(その10):英国航空ファーストクラスのリスト

ビジネスクラスのワインが、一定の型にはまっていて、ワインを把握しやすいと言っておりますが、少し毛並みを変えてファーストクラスのワインリストを取り上げます。

 ここは穏やかにBritish Airwaysのリストを見てみました。昨年末の搭乗時に回収してきたワインリストです。

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ワインリストと食事のリストは一冊にまとめられていますが、冊子を開くと、挨拶というか、紹介はほとんどワインのことしか書いていません。

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こういう傾向はどの航空会社でも同じ。この挨拶文を読んで、BAが特に素晴らしいワインを提供していると考えるのはナイーブ過ぎます。

 

1ページめくると、ワイン以外の飲料のリストが現れますが、わずかに19項目あるだけです。ハードリカー、ビール、ジュースなどは、何だかどうでも良い扱いとなっています。これは手抜きではなく、ファーストクラスが特別な場所であることを強調する効果があります。

 

この種のメリハリは、ワインリストでも現れます。筆頭はKir Royaleですが、説明はたったの2行。

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どうでも良い感が漂います。彼らにとって、馴染み深い、ありふれたもののようです。そのため、グダグダ説明しないのでしょう。

 ちなみにKir Royaleはカクテルで、champagneでもなければ、sparkling wineでもありません。Dijon市長であり司祭でもあったFélix Kirが、aligotéから造った酸っぱい地元ワインをいかに売るかと知恵を絞った挙句、やはり地元で大量にとれるカシスを漬け込んで造るcrème de cassisで割ることを考え、売り出したら大成功。これがKir誕生の伝説となっています。この新カクテル、イケている人たちの間でも流行になったらしく、aligotéワインの代わりにchampagneで割る連中が出てきます。この豪華版も成功。今日Kir Royaleと呼ばれています。Dijonはどうも田舎者の街と思われているらしく、"ville de ploucs"(田舎者の都市)で検索すると多く表示されます。(ライバルはToulouse。)そういう街で考案されたカクテルが、そこそこおしゃれなものとして世界を席巻しているなんて、考えてみれば大したものです。

 

Kir Royaleはさておき、泡は3種あり、すべてChampagneです。

 Laurent-Perrier Grand Siècle NVは、おなじみのプレステージ・キュベ。普通のテーブルでは、このぐらいの泡が出てくれば、とりあえず客は黙るという感じ。羽田や成田のJALファーストクラスラウンジでよく見かけるchampagneです。このcuvéeは名前も仰々しいけれど、ワインリストの説明も仰々しいものです。

 2番目のMarion-Bosserは小さな作り手。Premier Cru, Blanc de Blancs, Extra Blutは、Chardonnay 100%。彼らの畑のブドウで造られているようです。金麦色の美しい色調をもち、レモンの香りが支配的で、酸の強いワインでした。champagneをいろいろ呑んでいる人は、これを選ぶでしょう。

 3番目はDuval-LeroyのRosé Prestige Premier Cru NV。saignée法で造っているそうです。それほど高価ではなく、虚名に踊らされない人向け。こういう点にBAのこだわりが見えます。一味違うセレクションといっても良いかもしれません。

 

白ワインは以下の通り。

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 一番上のMeursaultは、よく見かけるキュベです。Bouchardは家族経営のBeauneの一大ドメーヌでしたが、不正がきっかけで9代目を最後に経営はHenriotに移っています。しかしスタイルは保たれているようです。やや軽めで、それぞれの特徴が何となく出ているようなワインが多いように思います。したがってこのワインもMeursaultらしさがなければダメですが、機内サービスでは冷えすぎていたため香りが死んでいました。今思うと、なぜ機内でこのワインを選んだか不思議です。

 2番目は最近注目されているMontlouisの白。chenin blancから造られているはずです。Loireの白は樹齢が高かったり、手摘みだったり、手間がかかっているワインが数多くありますが、値段はそれほど上がりません。このワインも説明書きはともかく、20 eurもしないでしょう。消費者にとってお得感が高いワインなのです。

 Loireの農家がこういう状況に業を煮やしたかどうか、こんなワインを造る者も現れました。

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私が機内でこのワインリストを開いている時、床下のカーゴスペースで運ばれていたボトルです。偶然購入して搭乗していたのです。同じ産地、違う生産者、呼称は多分同じですが、値段は65 eurぐらいでした。こんな特殊なワインと比較するのは無理があります。いつもやっている「復習」には使えません。

 三番目はNew Zealandの白。実はCathay Pacificのビジネスクラス、白の定番Spy Valley, Sauvignon Blancの上級バージョン。この作り手は、様々な単一品種からワインを造っていますが、上級のEnvoyシリーズも同様です。Envoyは見たことがないので、これを試すべきでした。BAの機内ですし、New Zealandのsauvignon blancは、白ワイン人気者の定番です。

 

長くなったので分割します。