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バス代わりの飛行機

Tipps für Flugreisen

KLMとAFのカルマ

変な表題ですが、彼ら自身がKarmaと呼んでおり、Pechedenferの当てこすりや皮肉ではありません。

 

AF-KLMは、2014年に航空券の販売価格と販売数を最適化するために、ビッグデータ解析を利用した新しいシステムを立ち上げました。そしてKARMAと名付けました。

KLM-AF Revenue Management

の略です。Niceで行われたビッグデータに関する学会で、AF-KLMが発表したと思われるパワポが公表されています。

http://www.mbds-fr.org/wp-content/uploads/2015/04/KARMA-Conf%C3%A9rence-BIG-DATA-MBDS-pour-diffusion.pdf

 

さすが先進的だとか、今の時代当たり前とか、自社開発するなんて高コスト体質から脱却する気がないとか、人によりいろいろな印象を持つと思います。しかし、私が真っ先に感じたことは、「何て名前を付けるのだろう」というインド文化に対する感覚の違い。こんなことなら、

KLM-AF Management System of Utopians and Racists

などという迷惑顧客への対応システムを作って、KAMASUTRAとでも命名すると良いと思います。少なくとも普通のフランス語話者なら、KarmaよりKamasutraの方をよく理解しているはずです。

 

フランス語で書かれているという言語の問題はさておき、上記パワポは専門家向けなので、上流国民だろうが、一般国民だろうが、簡単に頭に入るような代物ではありません。Air Franceはこのシステムを導入して本格的に運用した結果、だいぶ自信を持ったらしく、機内誌Air France Magazine、今年の3月号に自画自賛の記事を書いていました。この記事の方は一般向けでわかりやすかったことと、興味深い数字が公表されていたので紹介します。

 その号の表紙はこんな感じです。

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何で今頃3月号の話かと言うと、昨夜丑三つ時(うしみつどき)に目が覚め、パラパラめくっていたら、Karmaに目が留まってしまったからです。丑三つ時に、カルマは最高だわと、ついつい読んでしまったというわけです。

 

f:id:PECHEDENFER:20160707184302j:plain

カルマは解読する(décrypter)ものではなく、受容するものなのですが、それはともかく、「うっとこのシステム、むっちゃええやんか(同意を求める抑揚で)」という主旨です。もともとAir France Newsという、毎号10ページほど割いている自社宣伝ページの一記事。「コストばかり掛かって、全然儲からないことにブチ切れした執行役員が云々」などと書いてあるはずありません。

 興味深かったのが、数字の紹介。

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・輸送旅客数:7,630万人超(2015年のAFの分か?)

・一日あたりの平均運航数:1,700フライト

・世界ネットワークでの搭乗率:86%

・世界ネットワークでの就航都市:228(欧州発国際便では最大の数を提供)

・ オーバーブッキングのおかげで輸送できた旅客数:年間160万超(=一日4,500超)

・旅客輸送(と付帯サービス)による総売上高:180億€(62万フライトによる)

 

搭乗率はそれほど高くありませんが、ダメダメというほどではありません。そんなことより気になるのは、「オーバーブッキングのおかげで輸送できた旅客数(Nombre de passagers transportés grâce à la suroffre)」と言う表現。grâce à ~は原因を導く語句ですが、好ましい結果の原因です。皮肉という線は無いはずですが、どうもしっくりきません。この表現の真意は、本文を全部読んでみてわかりました。

 

旅客の大量輸送では、オーバーブッキングは付きものです。これは顧客にも、社会にも、何となく不誠実、不正直でグレーだと思われています。空港に現れない予約客はある程度発生するので、「席数より多い予約を取っちゃえ」という航空会社の都合優先の商習慣だからです。一つのものを2回売るという、ユダヤ商人も真っ青のビジネス。しかし、そうではないというのがここでの主張です。

 オーバーブッキングを行わないなら、予約可能な便がかなり制限されますと警告しているわけです。「それなら便を増せ、bordel ! 」と反論も可能ですが、CDGやAMSの空港の混雑を考えるとあまり良い解決法ではありません。限られた空間、時間、資源を社会全体で上手に使おうという立場からは、AFの主張も理があります。

 それで「オーバーブッキングのおかげで輸送できた旅客数(=オーバーブッキングを行わないならその便は使えなかった旅客数)」となったわけです。実はこの数字は、Karmaを利用して初めて算出できたのではないでしょうか。計算は簡単には見えません。

 この表現は、フランス語の文章主義の良い例でした。極端な話、一つのパッセージの意味が文章を全部読んでみないと特定できないという構造。誤訳を生みやすい特性です。よしんば翻訳が適切でも、まず意味不明になるでしょう。言語の構造が違うとしか言いようがありません。

 

AF-KLMの2015年の年間輸送旅客数は、8,980万人だそうです。

Air France-KLM : trafic record en 2015 malgré les attentats

オーバーブッキングという商慣行の恩恵にあやかった客の割合は、1.8 %にもなります。AF-KLMの客は、50回に1回ぐらいの割合で、本来乗れない便に乗っているということです。特に強調していませんが、こういう宣伝に使える数字が計算できるのも、Karmaのおかげ。アナリストにはgrands écolesの出身者ばかり採用しているようですが、なかなか仕事は楽しそうです。