イタリアの持つイメージに反して、Alitaliaは定時運行を相当意識しています。15分も遅れると必ず機長からお詫びの言葉があります。最近の利用で、この会社にいい加減さを感じることが可能なのは、以下の2点です。
・ウェブサイトや予約システムなどのプログラムの若干の不備
・FCOの受託手荷物の扱い
安全性はあらゆるサービス業で必要なので、議論から除外すると、交通機関で最も大切なのは定時性です。この点に関しては、AZはLHやAFより優れているように思えます。また受託手荷物の扱いも、FRAやMUCに比べ、劣るというほどのことはありません。
サービスはおしぼりから始まります。
飛行機初体験のようにこんな写真まで撮った理由は、こんな皿までRichard Ginoriだったからです。
Alitailaでは、長距離ビジネスクラスが最上になります。要素要素を見ると、できる限りの最上のことを行っています。それはサービスの随所に感じることができました。上にファーストがあると、天井を設けてしまいます。それが無い分サービスが良くなるのは、ある意味当たり前。
駆けつけ一杯と突出し。
Ferrariと小さなイギリス風パンに乗ったamuse-gueules。Ginoriの皿以外は特にコメントはなし。
イタリアらしいと感じたのは、地方の食文化をシリーズで取り上げていたことです。現在は、Emilia-RomagnaとCampaniaを特集していました。季節ごとに2州づつ紹介するのでしょう。機内食はCampaniaのオンパレード。
こだわりと言うか、問題の一皿がl'entrée。
メニューにはmozzarellaにpomodoroとあったので、当然質問しました。「このmozzarellaは本物?」微妙だったのですね。生産地からRomaまでの距離が。特に高価なチーズではないし、Napoliでは何の問題もなく手が届きます。しかしこのチーズは日持ちせず、作ったその日に食べてしまうような代物です。しかもSalernoあたりでしか生産していないと思います。世界中に出現する牛乳製モッツァレラチーズは、まがい物。よく言って別物です。Parmigiano Reggianoとパルメザンチーズの関係はよく知られるようになりましたが、mozzarellaの理解はまだまだという気がします。そもそもCampaniaから離れてまで食べたいと思うようなチーズでもありませんし。
形には問題ありません。このチーズは、絞った形のまま輸送するのが理に適っています。当地では、サンドイッチに挟むとかピザに載せるため直前にスライスする以外は、その形のまま供されるようです。この品、外側の皮が少し硬く、中は水分が多くなります。このmozzarellaは、やや時間が経っており、どうも本物のようでした。まずは合格点。こんな大空でmozzarellaが食べられるなんて、貴重な体験をしました。
どうでも良いのですが、ステンレス製カトラリーも重量級。
Primo piattoは焼きパスタのようです。鮟鱇のラグーを使っています。
深海魚だけあって力強い味わい。こんなパスタは、イタリアでしかお目にかかれません。しかしワインには合わず。
ここで新しくパンが出てきます。巻貝のような形です。 剥いて食べることができますが、それが正しい食べ方かどうかは知りません。
Secondo piattoはCampania料理を選択。Braciole di scamone alla napoletana。牛ランプのロールです。何を巻いたかはよくわかりませんでした。付け合わせの野菜がヘルシー。
ワインのお勧めはaglianico。同じ地方だという以上に、何かあるのでしょうか。
デザートはスキップしたのですが、間違って一瞬出てきました。こだわりの品だったのでそのままもらうべきでした。が、結局チーズ。
右手前の不細工な塊は、リコッタのオーブン焼きです。こんな「余りモノ始末系料理」を仰々しい説明と共に出すところが、イタリア。家庭の味なのか、マンマの味なのか知りませんが、実際のところファンが多いのでしょう。真正リコッタを出すのは、難しいのでしょう。
最後はフルーツとエスプレッソ。エスプレッソにもこだわりがありました。コーヒー豆(のブレンド)が選べます。
フルーツは、東南アジアの航空会社の水準と変わりません。生産地が異なるものが多いようで、香りが少し違います。エスプレッソは、機内で味わうコーヒーとしては最高です。ご自慢のLavazzaです。
たかが温め直し、と言い切るには躊躇する機内食でした。質も高いのですが、量もそこそこあります。機内食としては、ランクが一つ上です。極端に高価ではないゾーンに豊かさを感じる点に、イタリアのガストロノミーの特徴があると思いますが、これは機内食を構成する時とても有利。
ビジネスクラスで一本200 EURなんてワインは出せませんから。そして一本200 EURのフランスワインなんて、星の数ほどもあり、しかもメディアでお馴染み、特別感がありませんから。
サービスを行う人も、その食文化に十分慣れ親しんでいるので、安定感があります。久々に圧倒されました。
圧巻のコース料理は、大体2時間で終了。お約束の照明落ち+窓閉め。
まだ8時間以上もフライトは残っています。
ちなみに皿の選択や朝起こすか必要性など、搭乗時にいろいろなことを一気に聞かれます。メニューが解読できなくても説明してくれますが、正しくイメージできるかどうかは別問題。客の方では、街の一般レストランで食事をする時の意気込みが必要です。
食前酒を手にメニューを解読して、質問を整理し、給仕の意見も聞きながら、注文を決めるという「普通の」プロセスが必要です。機上では初めての体験でした。