PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

「巨大」航空会社と「巨大」空港

年間旅客数が国民の10倍にもなるフラッグキャリア

こういう並外れた航空会社があります。Icelandairです。ところが保有機材が30機、就航都市40と、小さな会社なのです。すべては国民の数が32万人と少ないためです。

 今、Icelandairは絶好調。年間の旅客数は、2014年200万人を初めて突破。驚いたことに2015年には300万人も超え、まさに破竹の勢い。2016年は350万人の旅客を見込んでいます。

http://www.icelandair.co.uk/news/story/icelandair-2015-passengers-pass-the-3-million-mark/

国民の10倍はレトリックですが、この業績拡大は実態。あらゆる会社がうらやましがるのではないでしょうか。

 

これを日本の場合に置換え、人口比で同じ規模、輸送実績が達成できたとすると

保有機材:11,800

年間旅客数:12億人

という超絶的な会社になります。世界の総旅客数が33億人(2014年)なので、3~4割を担うスーパーカンパニーですね。

 こんな大きな会社があったら、日本の産業構造と言う点では偏り過ぎという感じがします。しかしこれは国のサイズにあまり関係ないので、アイスランドでも同じことが言えます。要するにアイスランドは、航空輸送を国の収益の柱にしたということでしょう。そして、それはうまくいっており、旅客数の膨張ぶりに結果が出ています。

 

地勢

小国ですから、多かれ少なかれ、このような特定産業への集中が起きます。アイスランドがここに活路を見つけた理由の一つは地勢でしょう。北米と欧州という2大人口集積地帯の中継点として絶好の場所にあるのです。ロンドン並み、あるいはそれ以上に便利なのは、地図を見ればわかります。

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アイスランドは孤島です。歴史的にも外部との交流は低調、渡航は大変。ところが大量航空輸送時代にそのハンディはアドバンテージとなり、さらに次の一手も見えてきます。それは観光客の呼び込み。多くの人にとって未知の国ですからね。Icelandairも、ストップオーバーを盛んに売り込んでいます。北米16都市と欧州27都市を結びますが、最高7夜までのストップオーバーを可能にした航空券を大々的に売っています。

 観光客は少しずつ増えるでしょう。これは国策で観光を収入源にしようとする場合、理想的なのではないでしょうか。オリンピック招聘では、一時的な大混雑と以後の閑古鳥となりかねませんから。事実、賢いロンドンは2012年の開催にあたって、箱物への出費を極力抑えました。

 

外国勢

アイスランド政府の方針なのか、北海を超えて金の匂いが漂ってきたのかよくわかりませんが、最近、ぼちぼちとReykjavik-Keflavik空港への就航が続いています。外国の航空会社です。LCCでよければ、すでにいくつかの都市とつながっています。しかしレガシーキャリアだと、季節便がほとんど。

 

Dublin (Air Lingus)

Berlin (Airberlin)

Wien (Austrian, Niki)

Prague (Czech)

Zürich (Airberlin)

Madrid (Iberia Express) 

Frankfurt, München (Lufthansa)

 

程度です。定期便はわずかに

 

Copenhagen, Stockholm (SAS)

 

だけでした。

 

最近潮流が変わってきたのか、レガシーキャリアの就航が相次いでいます。2015年10月にはBritish Airwaysが週3で定期便を開設しました。これはA320を使い、

BA800 LHR 8:15-KEF10:15、BA801 KEF10:55-LHR14:50

というスケジュールで火、金、日に運航します。帰りのBA801便はともかく、行きのBA800便は、LHRでの乗継ぎ客のことは考慮したとは言えない時間帯です。

 

冬スケジュール(10月30日から来年5月3日)より、Airberlinは、DüsseldorfとReykjavik間に週2の定期便を開設します。機材はやはりA320です。

AB3928 DUS 9:15-KEF11:15、AB3929 KEF12:35-DUS16:55

というスケジュールで木、日の運航となります。British Airwaysよりは使いやすい時間ですが、それでも往路はDüsseldorfから直接搭乗する客向けです。季節便のようなのですが、結構運航しているBerlin便と併用すると、乗継でも対応できそうです。

AB3546 TXL22:35-KEF01:10 (+1)、AB3547 KEF12:35-TXL16:55

これも木、日の運航です。

 

もう一つはFinnair。来年の夏スケジュールからです。少なくとも2017年4月11日から10月28日まで、Helsinki-Reykjavik間に週4便で開設します。火、木、土が

AY603 HEL16:10-KEF17:00、AY604 KEF17:50-HEL 0:20 (+1)

金が

AY601 HEL 7:45-KEF 8:35、AY602 KEF 9:25-HEL15:55

となる模様です。

 これは日本人にはかなりの朗報で、成田発火木土のAY74, 成田着土曜日のAY73にそれぞれAY603とAY602がきっちり接続します。行きは50分、帰りは3時間半の乗継ぎ時間ですから、無理がありません。関空便のAY78, AY77、名古屋便のAY80, AY79にも同様に接続します。

 このHEL-KEF便、機材はA321ということですから、かなりの利用を見込んでいることになります。しかも週4便。AYのアジア便との接続を考慮して、アイスランドへの旅行需要を喚起する意図があったとしか思えません。

 

アイスランド旅行をするなら、Finnairで火木土に日本(NRT, NGO, KIX)を出発、同日Reykjavik着。帰りは現地を金曜朝に出発、土曜日に日本(NRT, NGO, KIX)着というパターンで決まりですね。今まで非常に行きにくかった国です。頼もしいルートが開設されます。

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Keflavik空港の混雑状況

こういう状況ですから、首都の国際空港の利用客数は加速して増大しており、前年比で2012年+12%、2013年+16%、2014年+21%、2015年+26%となっています。2015年の利用者はなんと486万人。Reykjavikの人口(20万人)の24倍にも達します。成田空港の利用者が年間8.5億人(1日233万人。現在の約23倍の利用者)なんて想像できません。

 

アイスランドでは、人の活動に極端な偏りがあることは良くわかりました。