PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

機内食における究極の選択(その1)

食事における究極の選択と言っても、「xxx味の○○○か、○○○味のxxxか」というようなどうしようもない話ではありません。はたまた贅の限りを尽くしたxxxという話でもありません。流儀に両端があり、人により一方を高く評価して、他方はダメと決めつけ、それが普遍の真理であると思い込みがちなケースです。機内環境は地上にはない制限が付きまとうため、興味深い状況に陥っています。

 

ワゴン展示式か、注文式か

事実上、ビジネスクラス限定の問題です。

 

その日に用意できた品を見せて客に選ばせる。これは給食サービスの一つのやり方です。地表においては、大きな塊を切り分けるデザート、好みの熟成具合が人によって異なるチーズで良く行われます。グランドメゾンでも、オプションで用意されています。メインについても大きなジビエを丸ごと焼いたような料理は、切り分ける前に客に見せたりします。これは視覚上の効果ですが、歴史に対する敬意のようなものも感じさせます。

 一人分に取り分けた皿や視覚上の効果が望めない料理で、わざわざ展示式は行いません。ホテルのビュッフェのようで、チープな感じが拭えません。

 機内食ではどうかと言うと、デザート、チーズは地上と同様に考えることが可能です。メインでは、(客の選択を無くして大物を切り分けることはないので、)可能なチョイスを皿に載せてワゴンで展示ということになります。キャセイがやっているパターンですが、給食サービスとしては安物感が付きまといます。

 ただし見て選ぶのですから、間違った選択をしても客は言い逃れが出来ず、機能的です。加えて国際線に付き物の、言葉の問題も解決できます。レストランの食事に不慣れな客でも簡単です。合理的なのです。

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その一方で格式に欠けるので、一定レベル以上の客からの評価は低くなります。この辺はどういう顧客が多いか、どういう顧客が欲しいか、航空会社の考え方が表れます。この点で、アリタリアが展示式から注文式に変えたことは注目されます。より高い階層、階級の客を求めることですから。訴求力が強くなるのかどうか見ものです。

 ライバルになるかどうか知りませんが、エールフランスビジネスクラスでは、メニューの説明は一流です。国民性と言うか、給仕はお手の物のようです。

 

ファーストクラスではデザートとチーズを除くと、展示式はさすがにありません。メニューの説明も、一流であることが求められますから。

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皿の上が破綻していることまでは、説明では分かりません。そういうこともあります。写真はBAのファーストにて。搭載するものを間違えたか、一部をダメにしたか、クルーがつまみ食いをしたか、そんなところでしょう。ちゃんと客は見ています。

 

破綻ないワンプレートか、破綻つき多段サービスか

これもビジネスクラスの問題です。国際線ファーストクラスでワンプレートは、考えにくい話ですし、エコノミーで何段階かに分けた給仕をするほどクルーは勤務していません。

 ワンプレートではハードの問題が大きくなります。暖めるところは適切に暖め、冷えているところはそのままと温度を保って客の前に出せるということ。食品工場から積載、機内での保管・調製で大体問題は片付きます。乗務員はマニュアルに従ってスイッチを押し、しかるべき時間を待ち、後は配膳するだけ。ほとんど装置の問題です。企画と事前実験をしっかり行っておけば、個々の料理に破綻は起きません。

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一方で多段階の給仕はソフトの問題です。前菜、メイン、デザートと機内で次々に調製する一方、給仕も行わないといけません。厨房とホールで別の人間が働くほどクルーの数は多くないし、スペースも取れません。装置も専用より汎用の方が便利になります。品質管理と相反する要素だらけです。調理にバラつきが生じるのは、必然です。

 

人の手がかかるサービスの方が、高級なのは言うまでもありません。ワンプレートは、サービスとしては低レベルです。手間のかかったサービスのため、所々にある調理の不都合を甘受するか、ほとんど自動的に出てくる適切に調理された食事を尊ぶか。これも搭乗客の階層や階級によって、好みが分かれそうです。

 

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こういうことを考えると、キャセイビジネスクラスの破綻料理に文句を言っても仕方ない気がします。白ワインの冷えすぎはともかく、白米の一部が加熱しすぎて、水分を失っていたり、焦げていたりするのは見逃した方が、長期的には客の利益になる気がします。私もよく記事であげつらっていますが、釜で炊けばお焦げは付き物。米喰い民族がこんなことを攻撃するのは大人気ないかもしれません。少し反省。