PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

機内食における究極の選択(その2)

高価高名の廉価品か、知られざる逸品か

ビジネスクラスとファーストクラスで起きる問題です。残念ですが、エコノミークラスでは年々コストがカットされ、今では質の問題を議論できるほどの余裕はありません。

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種類が多く、変化が激しいワインの場合に顕著です。ラベルの読める人に限定されますが、高価高名な酒は喜ばれます。価格のせいで、なかなか味わう機会がないためであることは間違いありません。浅ましい根性が根底にあります。

 とは言うものの、航空会社は商売を行っているのであり、啓蒙活動ではありません。客が呼べなくては仕方ありません。下世話な内容でも、選択肢から排除する理由にはなりません。高価高名な酒を安く入荷、提供するのは、ある程度の客を惹き付けるのに手っ取り早い方法です。

 

この路線で頑張っているのが、カタール航空です。有名だけれど、ミレジムが悪いワインがよくリストに出ています。中東にはワイン文化はありませんから、生産者、供給者や確立した階級の消費者からの嫌悪感からも無縁です。反面、ワイン文化の担い手のヨーロッパの航空会社では、取引の因習も加わり、こうしたことを行うのは得策ではありません。客ですら、一部は嫌悪すると思います。さらに、金を持っている人間にとっては、機内で飲む酒の価格なんてどうでも良い話です。

 

そこで「デキる」航空会社は、無名の逸品を探しに走ります。高価高名なワインは限られます。いろいろ飲んでいるうちに、「それだけでは世界はつまらない」となるお金持ちは大勢いるのです。お金があって、感度が高い人たちは飽きています。一方で官能の喜びは発見にあります。この点も良く理解して、多くの航空会社は頑張っています。

 しかしアリタリアカンタスニュージーランド航空あたりは、有利でしょうね。ホームグランドで新しい魅力に満ちたワインが見つかりやすいので。

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フランスのようにワインが知られつくされている場所では、当然困難な作業となります。エールフランスの好んで使うワインは、普段の評判はそれほどでもないのですが、たまたま成功した年、生産者といったところです。あるいは飲み頃の頂点にあるようなワインとか。

 

この領域では、どの会社もそれなりに努力が感じられます。

 

著名監修者がいるか、自社の創意工夫か

Pechedenferにはどうしても理解できないのですが、ある程度の集団に訴求力があるのでしょう。シンガポール航空ANAでは、有名料理人やコンサルタント、MWなどが顔写真、履歴つきでずらりと紹介されます。機内食メニューやドリンクリストの冊子、ウェブサイトでの給食サービスの紹介しています。それぞれの監修協力者が、それぞれの場でトップレベルにいることは間違いなく、その部分については疑う余地はありません。こういうことが機内サービスの宣伝に結びつくことが不思議なのです。

 多くの一流が集まると、間違いなく船頭多くして船山に登ります。それぞれの能力はバラバラに切り分けた小領域の中で発揮してもらうしかありません。彼らもサービスのプロですから、クライアントの注文の範囲で仕事をするはずです。結果として、軽い仕事にせざる得ないので、内容はそれなりにとなるはずです。監修した機内食が現場で破綻していても、不思議ありません。またそれに気づく客は、事情が分かっているでしょうから、監修者の不手際にも寛容です。問題は起きにくいはずですが、この営みは不毛です。企画担当の一部は、仕事にやる気を失いそうです。

 ただしエールフランスが上級キャビンでやっている企画は例外でした。一般化できるかどうか分かりませんが、料理人の個性が分かり易く現れる料理になっていました。

 

ワインの説明が輸入業者の説明(=生産者の説明)をそのまま利用しているとか、地名(=ワイン名)を間違っているとか、その程度のレベルでも仕方ありません。大した対価は貰っていないでしょうから。

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一方こういうことを全く行わない会社は数多いのですが、実体を伴わないことにコストをかけるのは無駄と考えているのでしょう。これ自体は卓見ですが、機内食や機内ドリンクの売り込みはどう行うのでしょうか。口コミですか?

 こうした会社では、ブロガーを大切にするかもしれません。もっとも自分から名乗り出ても、良いことはないので、ブロガー名刺を作っても無駄ですね。