PECHEDENFERのブログ

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エールフランスは、カーゴクラスと格安路線拡大を検討中

エールフランスは、エコノミーの客をカーゴスペースで運ぶことを検討し始めました。半分冗談。半分本当です。Le Figaro, Le Pointなどで、金曜日に報道されています。

 

AFが研究に着手したのは、エコノミークラス用のフルフラットベッドです。客室のシートを工夫するのではなく、カーゴスペースか天井スペースに簡易ベッドを設けます。ニュージーランド航空などとは異なります。

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Couchettes en soute

こういう名前で呼ばれています。bagages en soute(預入手荷物)は、AFの顧客にはお馴染みの言い回し。AF-KLMのスポークスマンが、金曜日にAFPに語ったところによると、可能性を探求し始めたそうです。

 AF-KLMのPDG(最高経営責任者)、Jean-Marc Janaillacはその前日、「長距離便、特にアジア路線について、湾岸の航空会社との競争に対抗しうるAFの新子会社を作る」計画を発表しました。これは「競争力を保つため、コストを抑え、革新的なサービス」を提供します。この新会社の名前は決まっていませんが、商品、デジタル、技術、補修、キャビンデザイン、顧客のサービスと履歴の追跡、労働の方法に関する革新を探求する実験的性格の強い会社となります。コード名は"Boost"。

 couchettes(簡易ベッド)に関しては、「閉所恐怖症ではない搭乗客が、わずかな追加料金で睡眠がとれるようにする」と、PDG。

 

カーゴスペースの簡易ベッドとの関係では、「今のところ計画段階に過ぎず、とにかくエコノミークラスでも横たわって旅行できることを考えている。AF-KLMグループのマーケティングイノベーションのチームが、この計画に従事している。」とスポークスマンは付け加えました。この新会社は2018年の夏には、AFの重要な長距離路線で活動を開始するに違いなく、 2017年冬からは中距離路線に配置される予定です。

 キャビン内装デザインの専門家、Jacques Pierrejeanによると、研究は実験段階に過ぎず、Couchettes en souteにブレーキをかけるのは、何よりも収支の問題。付加的にせよ、カーゴは収入になっているし、客の手荷物用の容量も減らすことになります。キャビンの天井スペースに設置する場合は、スペース自体が限られ、せいぜい最大30床程度しか設置できません。機体の前方と後方のスペースは、すでにクルー用の休憩室に使われています。

 

 Air Australは今年の秋、ニュージーランド航空と同様、3シートを2人用簡易ベッドに変える方式を採用しました。これはLa Réunionとはいえ、フランスの会社です。

 

先祖返り

1950年代のAFは、キャビン内にcouchettesを持っていました。限られた人間しか飛行機で旅行できなかった時代、ラクジャリー商品として開発されたものです。1947年、ロッキードSuper Constellationは、ParisとNew Yorkを17時間で結びました。この機材には、カーテン付き2段ベッドが18床も設置されていました。1960年代には、シート・ベッドの"Fauteuil Pullman" が出現、徐々に置き換えが進みました。そして1970年代には完全に消失。ファーストクラスを残し、一人当たりのスペースは狭くなり、乗客は映画を見て旅をすることになったのです。

 AFは今また、エコノミークラスにフラットベッドを持ち込み、(これまでもずっと探求してきた快適さに)革命を起こそうとしています。

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コストを抑制した子会社の長距離路線

ここから先はメディアの発表ではありません。

 

AFのライバルと言ってよい欧州の巨人、Lufthansaは既にLCCに長距離路線を任せています。2011年に100%子会社にしたEurowingsが運航主体。LCCの長距離路線への進出は就航段階で騒がれていたので、Pechedenferも記事にしています。

欧州LCC長距離便の始動 - バス代わりの飛行機

昨年3月初めのことでした。1年8カ月経過しました。どのぐらい成功しているのか、興味が起きたので就航都市を調べてみました。

 するとカリブ海が Puerto Plata, Veraderoの2か所、アジアは Phuketの1か所にしか飛んでいません。どれもレジャー路線ですね。Bangkok、Punta Cana、Boston、Dubaiは撤退したようです。近い未来に Las Vegas, Havanaへの路線が予定されています。可能性がありそうな路線に就航しては、採算が取れず撤退しているような感じです。この例からもわかりますが、LCCが長距離路線で成功するのは、なかなか難しいようです。

  Lufthansaその他が苦心している例をよく観察しているから、AFではハードのイノベーションを武器にするという戦略が出て来たものと思われます。もっとも今のところ、長距離路線LCC化と簡易ベッド設置の2つのイノベーションは、関連付けられていません。経営陣としては、全てのオプションを維持しているという立場でしょう。