PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

非日常と予定調和

意識の二端と実態

旅は非日常とは言いますが、実はほとんど日常、ごく一部が非日常です。これは、快適さを捨てられないことが原因。個人の意志で外国旅行するような先進国の住民は、十分快適な日常を送っています。習慣は快適に、快適は習慣になっています。そして快適のために、できることは大抵しています。快適な非日常は、存在しがたいのです。

 世界中どこに行ってもハンバーガーとコカ・コーラを求める旅行者は、笑われるでしょう。しかし、多くの人は旅先に日常を移植しています。素手でライオンに立ち向かうとか、南極大陸を軽装で歩いて縦断するとかいうことは決してありません。

 旅行の正体はほとんど日常で、少し非日常が混じった時間だとしても、非日常の混ざる程度は異なります。このわずかに混じった部分だけが、旅の体験とされ、意識の上では100%に近くなってしまいます。

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目的の二端

出張のように強制される旅と、休暇で自発的に行う旅では、日常と非日常のバランスが大きく異なります。強制される旅では目的地で為すことが全てです。すべての要素が日常であるべきでしょう。ネットや電話が使えなくては話にならないでしょうし、スーツのプレスや靴磨きが必要です。居住地や普段の職場と同様の環境が効率を上げるので、渡航先でも日常そのものがサポートする方が良いのです。

 一方、自発的に出かける旅で、日常そのままが再現されるのでは意味がありません。「制御下にある」非日常を期待します。

 強制なのか、自発なのかで、指向が異なります。宿泊施設や交通機関のアンケートで、必ず問われるのが旅の目的で、仕事か、遊びかとなっているのは当然。目的のニ端は、非日常が望ましいかどうかを完全に支配します。 

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目的地に旅があるのか、途中も旅か

何でこんなことを言いだしたかというと、非日常性を求める程度によって、移動に対する視点が大きく違ってくるからです。あるいは他人の嗜好が理解できないということが起きます。

 強制される旅では、移動は必要最小限かつ確実が求められます。一方で自発的な旅行では、移動も旅です。不快なことは避るという本能の部分を除けば、非日常の体験が望まれているはずです。

 この違いは、時として航空会社の評価を逆転させます。強制される旅では、予約通りの空間が提供され、予約通りの時刻で運航され、予約通りのサービスが受けられるのが最上になります。空の移動自体が強制で、ストレスの原因。予定調和が、ビジネス旅行では最上です。

 一方、自発的に行う旅の場合、ハプニングも新体験。旅の他の部分を台無しにするのは問題ですが、そうでない限り楽しみの一部になりえます。遅延、欠航、機材変更ですら、そうなります。実質的に害がないにもかかわらず、予定変更へ嫌悪感があるとしたら、時間と気持ちに余裕がなさすぎるためでしょう。

 こうした違いは、航空会社の経営にも大きく関係すると思います。遅延や故障はある確率で起きますから、機材に余裕がないと予定通りに運航できません。しかしながら、その点で秀でていれば、ビジネス客が積極的に選択するようになります。一方、バカンス客は時間に余裕があるとか、ビジネス客ほど切迫していないとかの理由で、多少予定が変更されても値段の安い航空会社を選びます。

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ビジネス客は、比較的多くの金を使います。多く集めたければ、予定通りのサービスを行うことが肝要ですが、経費がかかります。ANAやSingapore Ailinesなどは、この辺を上手に行っているように見えます。

 逆にキャセイパシフィックなどは、経費を抑えることに熱心で、欠航、機材変更が良くあります。それを現場でフォローする仕組みを作った方が、経費はかからないし、非日常を求める客には喜ばれるはずです。この辺が、この会社の魅力になっていたような気がします。

 

ビジネス客には移動、バカンス客には旅を提供できる会社が理想ですが、これはニ律背反です。

 

スターアライアンス

予定されたことが、予定された場所、予定された時刻で起きる世界が好きなドイツ人。ドイツの鉄道車両内に、設置されている大型液晶ディスプレイは、現在の停車駅と5駅~10駅先まで到着時刻と共に表示します。そして駅に着くたびに更新されます。車内で携帯通話している人が最も口にするのは、”Ich bin unterwegs."です。「今、〇〇線に乗っている」ぐらいの意味。ミュンヘン付近では、ドイツ語が分からない人でも覚えるのでは、と思うほど頻繁に耳にします。

 Lufthansaが、こういう連中の嗜好に応えないはずありません。ひたすら予定調和を目指します。そういう意味では、ビジネス客向け。

 Lufthansaが作ったStar Alliance。そのサービスは同じ方向を向いています。共通化されたサービスの部分です。ビジネス志向が強く、事は確実に運ぶけれど、悪く言うと味気ない、そんな印象を持ちます。Pechedenferは、そこにドイツの影を見てしまいます。

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ANAは国際線のノウハウを、Star Allianceで教わったと言われます。ANAを利用する限りは、この筋で優等生になっているように感じます。Singapore Airlinesは、もともとその線では一流でした。

 oneworldSkyTeamを利用すると、確かにごたごたした印象を持ちます。利用していると、いろいろと事が起きる気がします。

 

・ビジネス客=目的地の事象が全て=日常の追求 ⇒ Star Alliance

・休暇客=移動途中も旅=日常の支配下にある非日常の追求 ⇒ oneworld, SkyTeam

 

というスキームは大雑把すぎるでしょうか。

Deltaはビジネス向け、Aegeanは休暇向けと、航空会社別に見ると例外だらけですが、連合共通のサービスではこんなものでしょう。

 

不合理

ハンバーガー+コカコーラはステレオタイプだとしても、世界中どこでもステーキと水割りを注文する者ならいます。そういう行動を嘲笑する一方、自分は中東の朝食で出たエッグベネディクトを高く評価したのでは、わけがわかりません。距離を置いてみれば、五十歩百歩なのですが、ありがちではないでしょうか。

 もっとも、

 

・完全に休暇で出かけていて、航空会社、空港、ホテルのサービスに「〇〇がないから、良くない」と頻繁に判断する。〇〇が、ありふれたものならなおさら。

・出張でも、機内食に美食を求める。

・出張旅行で受けるアップグレードが、休暇で受けるアップグレードと等しくうれしい。

 

などという行動や反応は不合理です。休暇、仕事以外の意識が強く働いていることを窺わせます。意外と人の嗜好や行動は、合理的ではありません。