PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

国境近くの都市と空港:サヴォア(=?)編

サヴォア語はマイナー過ぎて、サヴォア語でサヴォアを何と発音するのか分かりませんでした。

 

山の民は山の民同士で

忘れがちですが、フランスにはアルプスもあります。さらに忘れられていることですが、アルプス最高峰モンブランは、フランス―イタリアの国境紛争の場となっています。もちろんその土地は、例によってフランスでもイタリアでもない独立国でした。Savoie公国は18世紀まで存在し、現在のSavoie県、Haut-Savoie県やイタリア北西部、スイスの一部(ジュネーヴを含む)を領土としていました。現在、大国が国境を引いて分割しているのは、アレマン人の居住地と似ています。

 スイスの国旗と瓜二つの国旗・国章を持ちます。この赤字に白十字の意匠は、現在でも地方、県を表すために使われています。

 この地のワインのラベルにも入るSavoie国章。Savoieのワインは異質です。AOC制度を適用しようと、INAOが努力したのは明らかですが、複雑になり過ぎ。Pechedenferは一度整理しようとして公文書を集めた(=いろいろダウンロードした)のですが、諦めました。フランス流の制度を適用してフランス化を図った挙句、制度自体が完全崩壊している例です。

 

Savoieで最も重要な都市はGenèveでしょう。空港のIATAコードは GVA。英語の綴りをジェネバと呼んで、呼称のアドバイスをしてくれる日本の航空会社社員が居ましたが、ジュニーヴァと長音にして強勢を置かないと英語では通じないでしょう。そもそも最後の ”ァ” の音は曖昧な音なので、この社員の発音なら日本語の「ジュネーヴ」と発音した方が、「ジェネバ」よりはるかに英語になります。加えて日本では、相互主義からヨーロッパの地名は現地語とするのが公式ですから、航空会社の被雇用者としてはジュネーヴの方が適切でした。

 ところでGenève(ドイツ語ではGenf)は、スイス西側の拠点。GVAは比較的大きな国際空港です。これだけ設備が整っている便利な空港があるなら、Savoie人は国境を越えて使うだろうと、調べてみました。

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この空港は、ほとんどフランスースイスの国境に沿って建設されてます。

 

国境の無力化

GVAのターゲットになるフランスの都市は、AnnecyとChambéryでしょう。ともにSavoie。前者は、湖に面した美しい保養都市。日本人には新婚旅行向けかもしれません。後者はJean-Jacques Rousseauが若い頃、居候したという年配の女性宅があるフランス啓蒙主義ゆかりの地。そもそもRousseauはGenèveの生まれ。

 

ちなみに2都市とも、フランス第二の都市 Lyonの Saint-Exupéry空港(LYS)から遠くありません。

 LYS-Annecyは124 km

 LYS-Chambéryは87 km

です。問題のGenève空港は、

 GVA-Annecyは44 km

 GVA-Chambéryは90 km

Annecyは圧倒的にGVAが近いのですが、Chambéryは良い勝負。こうした地理的、歴史的な条件が分かってくると、外国人はおろか、フランス人でもRhône-Alpes以外の住民には見えにくいレベルで競争がありそうな気がしてきました。

 

GVAのシャトルバスの運転頻度と、料金は、

 GVA-Annecy:11往復(月火水木金)、5往復(土日)片道21 €、往復42 €

 GVA-Chambéry:6往復(毎日)片道33.5 €、往復41.5 €

です。なかなか実用的です。特にChambéryの往復は、戦略的な価格設定であることが明らか。対抗する相手は、当然LYS空港でしょう。そこでLYSへのアクセスも調べてみました。

 LYS-Annecy:6往復(月火水木金)、4往復(土日)片道34 €、往復51 €

 LYS-Chambéry:6往復(月火水木金)、4往復(土日)片道23 €、往復?€

となっていました。Annecyは、LYSよりGVAが有利。Chambéryは片道だとLYS有利ですが、往復だとGVA有利になっているのではないかと推定します。

 

そもそもSavoieと言う国は、スイスと歩調を合わせていた歴史があります。共に山がちな土地。親近感があることは間違いありません。LYSはかなり大きな空港ですが、GVAと比べると良い勝負~やや見劣りするぐらい。LYSにとって、GVAはかなり強敵になっていることでしょう。

 

公共事業のツケとスイスの攻勢

調べると、さらにえぐいことが見つかりました。GVAからは、Lyon Perrache駅にもシャトルバスが運行されているのでした。しかも

 GVA-Lyon Perrache:4往復(毎日)片道 9 €~、往復 18 €~

です。圧倒的に安い空港アクセスが提供されています。

 LYSとLyon市内の空港アクセスは、市民には人気が無いRhônexpress。この鉄道が開業したため、それまで存在したSatobusという安価なシャトルバスは無くなりました。建設費用を回収するため、既存の公共交通機関を廃止するという日本でもよくある公共事業の後始末にしか見えません。Rhônexpressは

 LYS-Lyon Part-Dieu:片道14.7 €、往復25.9 €

と、結構な値段がします。航空券の価格が10 €違うと、勝負になりにくい現状を考えると、Lyon市内に用事がある場合でも、LYSよりGVAを選択する方が賢いかもしれません。ただし山越えを含む150 kmですから、バスに揺られている時間はそれなりになります。

 

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外国、特にフランスから遠い国から飛来、目的地が LyonやGrenobleといった都市やSavoie内であった場合、LYSを使うか、GVAを使うかは複雑な問題となります。フライトスケジュール、シャトルのスケジュール、航空券価格、シャトルの価格で答えが違います。土地の住民なら、その時々で判断できそうなパラメーターの数ですが、一般旅行客には選択肢が多くなりすぎます。その分、情報を使えるならお得に旅行できそうです。これも結局、情報強者か情報弱者かという問題なのでした。

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このLYSの提供する地図では、Annecyから北に行って、フランスの外に出てすぐのところにGVAがあります。もちろん掲載されません。