PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

今、世界から注目されている2社

すっかり更新をさぼっていますが、そんなことは関係なしに世の中は変化します。航空業界ではいろいろなことが起きるものだと、考えさせられるこの頃。テロで空港閉鎖だとか、火山噴火で足止めだとか、過去にもバラエティに飛んだ不都合が起きていますが、目下の問題のうち一つはありふれた話、一つは比較的珍しい話。

 

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アリタリアの清算

経営改革案が、4月下旬の労働者の総投票で3分の2という多数により拒否されたことを受け、5月初めに会社清算が決まりました。

www.lefigaro.fr

目下売出し中のAlitalia。新聞では労働問題や業界再編の視点もありますが、全体として誰か買う人いませんかねみたいなトーンになっています。

www.air-cosmos.com

6か月の運転資金を国が出して、現在安定して事業を継続しているものの、包括的なスポンサーが現れなければ、資産切売り、消滅です。5月以来の報道を見ていると、事業の大きな部分を温存して会社を継続する可能性は低そうです。

 

Alitaliaの「経営危機→他社による救済」には、長い歴史があります。1996年にはすでにKLMと包括提携(JV)を始めています。これは将来の経営統合への布石と見なされていました。欧州大手が生き残りをかけて動き始めた頃です。しかし2000年、KLMは一方的にこの提携を破棄します。この時の違約金は、250000000ユーロ。この違約金が引き金になったかどうかは知りませんが、KLMは2003年、Air Franceに吸収されるような形で合併します。

 この程度の金で、Alitaliaの経営が順風満帆になるはずありません。Air Franceが2000年に発足させたSkyTeamに、2001年には加盟します。その後Air Franceとの提携を深化させていましたが、Air Franceの経営が怪しくなってくると共に、関係がぎくしゃくしてきました。2014年にはEtihadから資本提携を受け、AFとは距離を取り、一息ついていたところでした。

 

欧州大手には、Alitaliaを助ける力はないでしょう。他地域の会社にとっても、今となっては傘下に入れるメリットが大きいとは思えません。どの会社もAlitaliaの救済、あるいは投資に関して慎重な姿勢を崩していないようです。一方でメディアは騒ぎ立てるのが商売ですから、いろいろな会社を挙げています。最近ではRyanairの名前も。

www.journaldeleconomie.fr

アリタリアに興味を持つライアンエア

ただし事業パートナーとして。買収対象としてではなく。

などと週刊誌の見出しのよう。ネタ切れも近いようです。

 

AZにとって明るい話題というべきか、新事業のニュースも出ています。

www.deplacementspros.com

Rome- New Dehli線が10月29日から運航を始めるとのことです。インドは9年前に撤退したAlitalia。再上陸です。欧州の渡航先でインドからの客に最も人気が高いのは、UK。第二位がイタリアなのでした。2015年には426000人がイタリアを訪れ、これは前年比で50%の伸びと景気の良い話。250席3クラス(C, PY, Y)のA330で運航するとのことです。

 またAerolineas Argentinasとコードシェア契約を新たに結んでいます。EZEには9月から週3往復の運航を行うようですが、そこから先でもAZ便が42都市に運航を始めます。

airinfo.org

逆にFCOからAR便は33都市へ。

 

これらの計画、どこまで実施されるでしょうか。

 

カタール航空のピンチ

Alitaliaの危機を伝える5月18日の記事では、Qatar Airwaysも買い手として取りざたされています。今年3月にMeridianaの49%を取得することになり、イタリアに興味を持っているだろうという勘繰られたのでしょう。こんな勘繰り、根拠になるはずありません。しかしこの話、一月も経っていないのに隔世の感があります。その間にQatar Airwaysは、自分の身に危機が迫ってきたのでした。

 

Qatarは、周辺7か国から国交を断絶されました。中東では久しぶりに起きる国家間騒動でした。

 

これは5月に搭乗した時のIFEの画像です。こういう画面は、現在表示されることはありません。Qatar籍の航空機は、エジプト上空の飛行を禁止されましたから。

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 新聞では、Qatar Airwaysは外交危機の最初の犠牲者などと報道されています。

・断交国家の領土上空の飛行が禁じられ、遠回りを余儀なくされる

・飲食物の調達がより困難になる

・Qatar国内の滞在が不便・不要になり、旅客が減る

・国交断絶国家から顧客が消える

経営への影響が甚大なことは、すぐに想像がつきます。

www.leparisien.fr

Qatar Airwaysは、他国の一般人にも身近だから記事になっていると考えた方が良さそうです。他企業もQatarに拠点を置く限り、同程度かそれ以上のダメージを受けるはずです。そして、それは企業の国籍にかかわりません。

 

一般的に言うと、食料輸送が困難になることが重大です。Qatarには今も昔も集積地はDohaしかなく、Dohaはもともと漁村。1960年ごろは10万人程度しか人が居なかったはずです。食物は海産物だったのでした。土地は砂だらけで食物生産に不向き。流通を除き、食に関する文化や技術の蓄積が不十分です。

 この半世紀、石油と天然ガスのおかげで国は潤い、人口は250万人にもなっていますが、Qatar国籍は30万人程度。90%近くが外国人労働者です。環境が悪くなると事業は順次中止、外国人労働者はいる必要がなくなり、Qatarから消えます。生産や流通の現場から人が居なくなるのです。こうなると生活困難になります。じわじわと経済を破壊していくようなシナリオでしょうか。

化石燃料はだぶつき気味。Qatarが無くても世界全体への影響は限定的と判断、舵が切られたという裏がありそうです。

 

締め上げている周辺国からすると、Qatarに人が住めなくなるという事態を招いたとしても難民は最大30万人。サウジアラビアだけでも人口は3100万人。エジプトは人口9100万人。引き受ける能力は十分あります。目的を果たすまで断交を維持するでしょう。結局、Qatarの首長交代で終息するのではないでしょうか。(最悪な事態まで国を混乱させたら、トップは命がありませんから。)

 

もちろん航空ブロガーの関心は、Qatar Airwaysの未来。事態の推移を見守るしかないのですが、

・欧州、南米へは迂回により、飛行時間が無駄に延びます。東アフリカは壊滅的なレベルとなります。

・中東アフリカのいくつかの都市へは、運航停止します。

・特に空港での飲食サービスが低下する可能性があります。

現在は体力があるはずなので、Qatar Airwaysの混乱はすぐ落ち着くと思いますが、国交断絶が長引き、国が混乱したままだと経営がおかしくなる可能性があります。メディアは破産、清算の可能性ありなどと早速騒いでいますが、Alitaliaとは違い、道が見えているわけではありません。11月以降のAlitaliaの予約があるとか、 MilleMigliaにマイルが貯まっているとかいう人は、行動した方が良い気がしますが、Qatar Airwaysの場合、旅行計画が変更になる人が少しいる以外、今後のカイロ発券を再考する程度の話でしょう。

 

Pechedenferは現在、AZもQRも予約を持っていません。FFPは全くかすりません。少しでも関係があればブログネタになったのですが、残念です。今からAZやQRを予約するのもワザとらしいので止めます。