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Changi空港のショッピング・レストラン案内

Changi空港が作成した空港内商業施設の案内があります。出発時のチェックイン前、到着時の税関通過後に利用できる店です。

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Shop & Dine と動詞を並べています。より基本的な単語を使うと、Buy & Eat となりますが、こうすると2つの動詞が関連づけられ1つの意味になりそうです。つまり「買い物する、食事する」が、「買って喰う」と理解されがちになります。複合動詞化しています。

 2つの動詞が、ともに古英語の動詞や古ノルド語の動詞に由来する基本動詞(take, go, come, get, keep, etc.)の場合、こうしたことが起きやすいようです。

 

hit and run が野球で使われると、投球と同時に走者が次塁へ走り出す方法です。(打者が無事安打を行えば、走者はより安全に次塁に進む、あるいはより先の塁に進む。)安打の練習と走塁の練習とは普通考えません。また球場の外の hit and run は、普通「轢き逃げ」です。一方 shop & dineでは、2つの動詞はばらばら。どちらも単音節で単純な単語なのに、感覚と言うのは不思議なものです。

 

もしShopだけ、Dineだけだったとすると、どうなるでしょう。たとえばこの表紙に物品の写真を載せず Shop と書いてあったら。曖昧模糊としてきます。いろいろな意味が考えられるからです。Shops なら物品販売店の紹介でしょうが、これは複数形の成せる業。shop だけだと品詞すら落ち着きません。Changiのパンフレットで shops なら商店で決まりです。もし物品販売店が一店しかないような小さな空港でも Shopとすると意味が把握しにくくなります。

 一語で表現するなら、ShopよりBuyの方が誤解が少なそうです。しかしこの場合は、空港自体を「誰か買ってくれ」という経営側の嘆願になっているかもしれません。

 

単独利用なら、Dineも同様。古臭いラテン語系統の単語なので、これだけで出現すると付随した意味や雰囲気が強調されます。正餐?晩餐?どれだけの人数に対応できる?いろいろと考え込んでしまいそうです。この場合も Eat の方が良いかもしれません。

 

大空港が作るガイドの表題というシチュエーションで、Shop & Dine だから意味が明白で誤解されにくくなっているのでした。

 

このように何か表現する場合、単語の意味範囲、単語の連携、単語が使われる状況と、実はいろいろなことを考えています。これは正法か誤用かというレベルの話ではありません。

 

時々ANAの使う英語がおかしいと話題になりますが、この辺の発想が欠けていると感じることがよくあります。母語話者がチェックしているとは思います。しかし彼らは、センスにかかわることは指摘しません。それは依頼の範囲外。意見を述べることは有害にすらなります。典型的で正確な表現にしてしまえば誤解は生じないし、嘲笑されることもなくなるでしょうが、センスがない退屈な言い回しになります。どこまで外すか、どこまで模糊とさせるは常に問題となります。

 Dineを単独で使うなら、辞書にはダイナマイトの米俗語というエントリーがあるのでこれも考慮する必要があります。ダイナマイト自体あまり聞くことがないので、本当かどうかよくわかりません。とにかく dyne ではありません。dyneには力の単位という顔があります。これは単語を多義的に利用する場合(例えば、シャレや掛詞)、有益にもなります。

 さらに dynamiteには比喩的な意味がいろいろあり、それらは常にまとわりついてきます。比喩的な意で用いたいなら、現代は blockbuster の方がまだ使われます。しかしこの語とて、かなり使い尽くされた感があります。

 言葉なんて、こんな状況がいちいち複雑に絡み合っているのですから、母語話者が意見を述べるなら抑制的になるのは当たり前です。

 

正しいか間違っているかという観点から OKは出ても、違和感があるとか、理解困難だとかいう表現が多いのは、ANAに限りません。Cathay Pacificでも良く見かけます。この会社、一文あるいは一項目に情報を詰め込みすぎる傾向があります。状況の設定で個々の表現が規定されるようにすれば良いのに、とよく思います。逆に状況の設定がどこまで有効になっているのかボケてきて、ある文の意味が2通りに取れることもあります。漢字の発想に引きずられているのでしょうか。

 

この点で、SingaporeやMalaysiaの英語は安心できます。それでも我慢ならない我儘なイギリス人も多いでしょうが、そういう人はアメリカでもイヤになってくるでしょう。

 

今の時代、外国人が現れる所には英語は付き物ですが、その状況はいろいろだと感じます。

 

ちなみにChangiには、スーパーマーケット、幼稚園もあります。日本の空港よりははるかに幅広いサービスを展開しています。

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もっともPechedenferは、Singapore全体に見られるこの「都市機能をとにかく充実させようとする傾向」が苦手です。空港内商店を江戸の街並みにしてしまうとか、空港内にビール醸造所を作ってしまうとかいうバカな発想の方に魅かれます。