PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

通常の会員種別の上にある上級会員(その5)

ワンワの流行

歴史上初の地球連合 Star Allianceの特徴の一つは、「お得意様」相互搾取の仕組み、つまりFFPの標準化、共通化でした。後発隊である oneworldは、これの深化、細分化を図りました。開拓者への対抗意識や差別化のためではなく、加盟会社がもともと持っていた特徴を生かしたためでした。設立5社の内、BA, QF, CXは長距離路線が断然強く、ラウンジの整備もそれぞれ力を入れていたのでそうしたことは自然です。

 

oneworld結成から20年近くたち、航空旅行も大きく変わりました。中でもLCC興隆の影響は大きく、加盟各社が料金値下げ、業務の効率化、サービスの簡素化を進めたことは明らかです。しかしその方向ばかりに変化していては、LCCと同一になる道しか残されません。どのみち滅んでしまいます。上級会員制度を広げ、充実させることは新次元のサービス展開。世界規模の路線を持つレガシーキャリアにしかできない挑戦という見方が正しい気がします。客の数は微々たるもので、経営には大きな影響は無いでしょうが、生き残りをかけた改革の一環であることには間違いはありません。

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このシリーズで取り上げた究極の上級会員制度は、oneworldではあちこちの会社が整備しています。

American Airlines(AA) Concierge Key

British Airways(BA)Gold Guest List

Cathay Pacific(CX)Diamond Plus

Qantas Airways(QF)Platinum One

Finnair (AY)Platinum Lumo

と、消滅したカナダ航空を除く全ての創始メンバーに加え、Finnair が運用しています。他にも

LATAM(LA)には Black Signature

という会員レベルがあり、Black という Emerald 会員に比して、到達の困難さは場合によっては2倍。この範疇に入れても良いと思います。すると 13社中の6社、半数に迫る勢いです。「究極の」という枕詞はもはや不要です。

 

今後この会員制度がどう変化するか、個人的には高い関心を持っています。少なくてもoneworld内で一般化しつつあるわけですし、サービスの幅をどう広げていくのか興味があります。

 

その近未来

(1) oneworld内では、かなりの確率でサービスの相互乗り入れが始まるでしょう。初歩的なレベル、例えば

・これらの会員は、oneworld他社でも会員レベルが認識される

・各社のやり方で、それらの会員を優待する

だけでも随分印象は違います。会員情報の共有は、すでに行なわれていそうです。

 気が付いている人が多いはずですが、be recognisedと言うキャッチフレーズが、長年に渡り oneworld の宣伝で使われています。これはお得意様取扱いの基本ですね。

 

こういう「超優良」会員は、エコノミークラス搭乗時に自分だけシャンパンが振る舞われるとか、クルーメンバー全員に挨拶されるなんて特典は真っ平ご免でしょう。通常のFFP上級会員向け特典の延長で考えてはダメで、それは各社とも分かっているはず。Emerald会員向けとは質的に異なり、さりげないサービスが良いはずです。

 例えば特別な名刺を用意して、搭乗時に客室責任者が手書きのメッセージを添えて渡すぐらいなら、客の負担にもならず、良い印象を残すことができそうです。労働組合との調整は必要ですが、会社にも大きな負担になりません。客室責任者の「自分の言葉による」挨拶を制度化するだけでも良いと思います。

  

 

(2) 次に容易なのは、導入している数社でいくつかの優待・特典を共通化する事です。コードシェアを広範に行う会社間で特に有効です。

 航空連合内の共通基準を超えて会員を相互優待する制度は、SQ, NH, LHの間に存在します。Star Allianceには存在しない Emerald 会員向けサービスが部分的に実施されているようなものです。別に進んでいるわけではありませんが、発想は同じ。

 

そういうことが始まると、未導入の oneworld 加盟会社も、この上級会員レベル*を創設、サービスを開始せざる得ないでしょう。JAL と Iberiaはその最右翼。AA, BA, AYと共同事業を行っているわけですし、開発に乗り出さないと、他社の「足を引っ張る」ことになります。

*① 制度と基準は公表されている年単位の資格、② 国籍、身分、職業、性別に無関係、➂ 従来の上級会員に比して、圧倒的に達成困難という会員資格。

 

(3) 以上のことは予想できますが、他は全く分かりません。ただしSapphire会員、Emerald会員へのサービス低下は目立つようになるでしょう。現在でも地盤沈下のように低下する部分があるのですが、そうした傾向が顕著になることは十分考えられます。あまり金にならない客が多くなるようだったら、そこに係るコストは削減します。また何がコストになるかは、時代とともに変わります。対応は当然なのです。これはサービスの質の上への拡大とは無関係な話ですが、比較されることは目に見えていますから。