世界でも最も混雑する空港の一つ、London Heathrow。言わずと知れた British Airways の本拠地。Terminal 5という専用ターミナルを持ちます。十分巨大なターミナルです。そこに設置された特別なファーストクラスラウンジが、The Concorde Room。oneworldのエメラルド会員資格では利用できません。ファーストクラスで出発する以外には、Premier会員であるとか、The Concorde Room Cardを持っていないとダメ。階級社会らしい設定ですが、外国人も入れるので、客層は想像するほどぎちぎちな感じではありません。
2年以上ご無沙汰していた場所ですが、GGL会員になったので再訪することができました。ここに来ることが、半分義務のように感じられるのが奇妙。
今回はTerminal 3に到着後、Terminal 5から出発するという旅程でしたが、幸運だったのは、
(1) 予定時間前に出発した
(2) 向い風が弱かった
(3) Heathrowが空いていた
と3つの奇跡が重なり、Terminal 3から移動したのにもかかわらず、前便の到着予定時間には Terminal 5 のセキュリティを抜けていました。
ちなみにMCTは90分。全く同じ接続でも、90分余計にかかる事態が想定されているわけです。飛行機は時間が読めないとはそのとおり。
問題の場所は Louis Vuitton の真上。
到着してもアジアの国々のように、銅鑼を鳴らして「××様のおな~り~」なんて声をあげる事はありません。あれはあれで良いのですが、英国では国王クラスの到着。銅鑼の代わりに鐘か鈴。どちらにしても、割と世界で共通する古い(上流社会の)習慣。
内部は特に代わり映えしません。写真の初老の男性のように、1人カウンターに腰かけて新聞で情報でも仕入れながら、Champagneでも1、2杯というのが、格好良いようです。
Pechedenferは予想外に時間が出来てしまいましたが、入ってから行ったことは、
(1) Vincent Girardin, Puligny-Montrachet, 1er Cru Les Combettes(もちろん白)を3杯
(2) 隣に座った金回りが良さそう(で粗野)なドイツ人と英語でお話
(3) フランス語の旅行雑誌で城之崎、但馬、丹後の取材記事を読了
でした。
白ワインは、「こんなラベルを見たら即注文すべし」というもの。今日はGrand Siècleなんて選択はありえません。
Champagneは大量生産品。どこで飲んでも同じ味。華やかさとイメージの良さは抜群ですが、興味深いワインが他にあれば忘れられてしまうという、何ともかわいそうな存在。高く売れるのだから、生産者は気にしないのでしょう。質の追求よりマーケティングに費用がかかるのは仕方ありません。
白ワインは予想を超えて素晴らしいものでした。Domaineではないので、軽くつくってあり、開栓直後と最後の1杯で味わいが異なるワイン。完全に花開くと、硬いミネラルの中心に芯が感じられるBourgogneの美点がはっきり現れます。
http://www.vincentgirardin.com/fr/vins/puligny-montrachet-1er-cru-les-combettes.php
調べてみたら、意外と値段も控え目。見つけたら即買いですかね。ただし保存用ではなく、開ける為のワイン。
Gold 会員から GGL会員に格上げになって、いきなり素晴らしい体験ができました。「発見がある」が、固定客を得るために一番大切なことを思い出させてくれました。
雑誌はこんなラインアップ。
ロシア語の雑誌も2誌ありました。
しかしながら、相変わらずフランス語は軽視されています。フランスを無視するのも英国文化。1冊あったのが、旅行雑誌。
しかもフランス語が変。文法的には正しいのですが、表現があまり典型的ではなく、外国語を翻訳したような感じのフランス語。こういうのはわざと選んでいると思います。階上のラウンジでも、唯一あったフランス語新聞が Le Temps でしたし...。
写真はきれい。国内的には少しくたびれた関西の保養地、周辺地が、外国人の新鮮な目線で賛美されます。良い感じです。
次にパリに行ったら、朝倉山椒の tapenade を手に入れようと思いました。「パリでも手に入るよ」なんて、紹介されていた店は、Workshop Issé à Paris, 11 Rue Saint-Augustin, 75002. この記事、地名の "-" が抜けているし...。
新聞はこんな感じで、アラビア語が目立ちます。
写真を見て初めて気がつきましたが、日経がさり気なく並んでいました。英国版の方ももちろんあります。週末なので頁増の重量版。
時間があったので、水周りにも厄介になります。
備え付けられるのは、もちろん英国の液体石鹸。英国のフラグランス製品は、有機塩素系消毒薬の香りが根本にある気がします。トイレや病原菌で汚染された場所の消毒後の臭い。
それを言うなら、フランスも野生動物の臭いや植物の腐敗臭が根本にあるような気がします。不快な臭いから好ましい香りまで、シリーズとして一貫しており、海峡を挟んで異なるのですね。
British Airwaysの最も良いところだと思いますが、あらゆる場面で英国を前面に出します。現代では、大英語圏を舞台に文化より金を求めて英語話者は流動します。そんな中、頑固なまでに英国文化に固執するBritish Airways。これが将来の財産になることは、間違いありません。”British” を選択する理由に、文化以外では何が挙げられるでしょうか。
GDPを上げるために英語を選択する途上国は、国家安定のために仕方ないとは言え、文化没落の道も同時に選んでいると思います。個人には、
Que servira-t-il à un homme de gagner le monde entier, s'il perd son âme?
と言ってやれますが、相手が社会では簡単ではありません。
今日は、英国文化とインターナショナルな社交場の双方を感じさせる良い空間でした。そういえば何も食べていません。ラウンジ食を忘れるなんて、上級会員の風上にも置けません。でもそんな時思い出すべきは次の一節。
Que servira-t-il à un homme de manger la table entière, s'il perd son âme?
ラウンジ乞食はほどほどに。特にThe Concorde Roomでは、似つかわしくありません。