PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

ボヘミアの中心でJALを叫ぶ

センチメンタルな表題ですが、望郷や愛惜とは無縁です。むしろBAネタ。日本を離れると JAL に郷愁を感じるより、その存在が意識から消える方ですが、弱小首都だからこそ気が付くことがあります。

 

BAの機内放送

最近搭乗した BA853(PRG→LHR)と BA856(LHR→PRG)は、共にアメリカン航空日本航空とのコードシェア便でした。これは機内放送で知りました。

 例の「××便に、ご搭乗ありがとうございます」です。BAは英語しか使わないので、"Thank you for... airways.” という語順になります。

 

往復で計3回、型にはまった挨拶を聞きました。BA欧州便は、出発時にしかこの挨拶をしません。BA856で、挨拶の重複があったのでした。2回目を行った人は、同僚がすでに行ったことに気づかなかったのだと思います。

 その挨拶の最後の部分が常に問題。Ouch!

 

BA853便:...codeshare flight with American Airlines, Qatar Airways and Japan Airways.

BA856便:...codeshare flight with American Airlines and Japanese Airlines.(1回目)

BA856便:...codeshare flight with American Airlines and Japan Air.(2回目)

 

お気づきになりましたか。誰一人として日本航空の英語名*を正しく言えないのでした。しかも、三者三様に間違えるという嘘のような本当の話**。恐るべしBBBA。

*言うまでもなくJapan Airlines。

**La réalité dépasse la fiction.ですね。英語にもほぼ同じ言い回しがあったはず。

 

英国かぶれの老先生なら、

JALは知ってもらうための努力が足りないのではないだろうか。このままでは国際的な地位は低下する一方であろう。」

と浅薄な思考から独自性皆無な結論を導くでしょうし、anti-JGC他社FFP会員なら、

JALに対していつもやっているように、BAにもクレームを出せばいいのにね。あ、そうか英語がわからないから、そもそも気づかないか。ごめん。」

などと皮肉も出て来るというところ。ところで Pechedenfer の場合、

「これは秀逸ネタ。記事一本頂き。」

と静かに小喜び。聞き手のバイアスによって感じることが変わりますが、今日はそういう筋の話ではなく、損得の話。

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JALの欧州ネットワーク

1990年代には BA, AF, LHと比して、JALの路線網は見劣りする程度でしたが、今では埋め難き差をつけられました。ロシアを除く欧州へは、LHR, CDG, HEL, FRAに飛ぶぐらいで、その他の都市へは JLの番号も持つコードシェア便を BA, IB, AF, AY が運航します。LHR-PRG間のBA運航便により、JALの客がプラハに行けるのはその一例。

 では、BA853便、BA856便に日本人がちらほらいたかと言うと、答えはNO。あまり使われていないようなのです。

 

そもそも JALLHR 便は B787-8。Terminal 3では、他のoneworld各社のB777がずらずら停泊する中、一回り小さい機材が目立ちます。しかも一日一便。しかも一日二便で一つは深夜便。つまりロンドンへの輸送量自体が、かなり小さい***のです。LHRから先のBAの世界に、JGC系日本人がほとんど目に入らないのも無理ありません。

***AAは CLT2, ORD2, DFW2, LAX1, MIA2, JFK2, PHL2, RDU1の14便を毎日運航しています。CXも1日3便あります。CXには LGW 便も1日1便あります。JALのロンドン便については、コメントご指摘ありがとうございました。

 

JALが名前を覚えてもらえないのは、そもそもロンドンへ運ぶ旅客量が小さく、乗継客が少ないためでした。BAの乗務員に文句をいうのは、酷な話です。

 

得をするJALの客

それではJALは、何故あまり使われない路線を維持するのかと言う疑問もでますが、その話には触れずに客のメリットに目を向けた方が面白そうです。

 

国内、特に地上交通のインフラと比較すると、JALの客のお得度が見えてきます。

 鉄道、空港、道路の整備では、利用者が少ない土地が利便を要求すると、税金の無駄遣い、地域エゴなどと非難されます。少数のために法外な金を使うなということですね。民間企業は、採算の上から対応できないので合理的な範囲に収まるとされていますが、JALはそれほど使われない路線網まで維持しているようです。つまり顧客は合理性を越えた得をしています。

 また伊丹や新千歳で ANA と比較すれば感じますが、とにかくJALは空いています。料金がほとんど変わらないのに、どうして混雑する ANA を選ぶ客がいるのか、不思議なぐらい違います。JAL はオーバーブッキングが ANA の半分だとか、定時率がかなり高いとか、客観的に数字を挙げられるサービスの指標で ANA を凌いでいます。JALの客の方が構造的に得をしている事実はいろいろ出てきます。

 

これは倒産後、新規路線就航などの規模拡大ができず、投資が旅客サービス向上に集中したことが一因だと思います。軛は無くなったので、今後は普通の民間会社として規模拡大を行うでしょう。

 規制が多い業界ですから、会社の業績のためには規模拡大への投資が重要。国内の競争相手不在の間、ANAが頑張ってJALを超えたのは良い話ですが、会社が安定して儲けるため、旅客サービスの拡充が遅れていると考えると、利用者は歓迎できないはずです。

 残念ながらJALの客も今が花。今後は規模拡大への投資のため、新キャビン、新シートの開発では、旅客サービスは低下を指向しそうな気がします。兆候も出ています。

 

旅のtips

JALLHRでは、Termnal 3を使用。このターミナルにおいて、BAのコードシェア便で、

Barcelona, Bilbao, Budapest, São Paulo (JJ便), Helsinki, Lisbona, Prague, Wien, Warsaw

へ乗り継げます。つまりこれらの都市へ渡航するなら、JAL-BA便が便利となります。

 またTerminal 3 でJMB会員が使うラウンジは、JALが運営するどのラウンジより充実しているようです。ダイヤモンド会員、プレミア会員が利用できる Gallery First Lounge の方は、給仕付きのダイニングもあります。世界中のスターアライアンス各社が用意するラウンジより、満足度が高いのではないかと思います。

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ということで、BUD, PRG, VIE, WAWなどの東欧の都市に行く時は、時間優先ならHEL経由、旅に豊かさを加えたければ LHR経由。利用者目線では、ドイツという中継地が無くても困らない気がします。

 ただし OS の VIE 直行便は5月15日に再開、さすがに直行便には抗しがたい魅力があります。

 

ついでに弁護

JALの国内線では、結構な確率で Qatar Airlines と間違えてアナウンスします。地上係員も、「British Airlineですか」などと堂々と呼ぶし、-ways ⇄ -lines の頻出エラーを学習済みなら「ぶりてぃっしゅさんですね」などと間抜けな応答をします。しかし、これをJAL社員の英語力に帰するようでは単純過ぎます。BAの乗務員でも、コードシェアパートナーをろくに言えないのですから。