「暮らすように旅する」という言い回しはすっかり定着しています。Googleで「暮らすy」まで入力すると、検索予測に出る有様。しかしこの言葉、焦点がぼけた空虚な響きを持ちます。何を意味するのか、実体がわかりません。例えば、
気温が上がったから、河川敷を走り回り、
紙が切れたから、買いに出かけ、
靴に穴が開いたから、作りに行き、
新作が噂になっているから、映画館へ行き、
好みの女性がいたから、声をかけ、
ナンパに失敗したから、一人酒することですか?
旅行でやることと言ったら、せいぜいこんなもの。旅かどうかなんて、関係のない営み。
暮らすように旅をする...現実から目をそらし、年金生活者の真似事をしているバックパッカーが自分を美化しているような欺瞞が漂います。無意味なフレーズ。
しかしですね、蔑むのは誰にでもできます。大切なのは、「無意味でも、世に定着する新語を作ることができるのか、お前」ということですね。世に発信するなら、最低限の心がけは「批判より創造」。
熱くなるとこのブログらしくないので、このぐらいにします。だいたい20世紀もすっかり前世紀扱いになった最近では、旅と日常の関係も様変わりしました。「暮らすように旅する」、「旅するように暮らす」よりも、「暮らすように移動する」、「移動するように暮らす」の方が実感に近い日本の修行僧たち。喰って、寝て、体洗って、ネットにつないでって、セキュリティ通過後に行うことは空港でも機内でも、生活そのもの。
そして本日はそんな移動の話。芭蕉の子孫が暮らす土地へ移動。
ゲート付近の座る場所(seating area)に雰囲気があるターミナル3。
今日のキャビンはこちら。JALが誇るプレミアムエコノミー。実はエコノミーもかなりワイドなので、差が小さい「半上級」キャビン。
クッション、アメニティ、ヘッドセット、毛布が整頓されて客を待ちます。この様式美はまさにニッポン。
アメニティの中身は、料金相応。
布おしぼりも専用メニューもあり、エコノミーとの差別化が相当意識されています。一方機内販売等の物品販売カタログは同じ。
JALが特別扱いすべき所得階層は、このキャビンを利用するとは予想されていません。
JALはTRAMONTANOに特製バックを作らせたようです。Longchampと同じ扱いになりつつあります。
このナポリの高級鞄屋はちょっと偏屈者で、あまり他所では見られませんでした。土着の革製品。非常に個性的です。使いやすいかどうかは、ユーザー次第。世界で売ることを考えなかった結果、最近は沈没気味のようです。
このJALの機内販売は、飼い慣らされた商品になっていると思います。このバッグを使ってみて気に入ったら、次は全革のバッグをナポリで。まだ命脈は保たれていると思います。
ドリンクメニューにはChampagneがあります。高級エアラインJAL。
とは言っても、通(connoisseurs=英語)が軽蔑する4分の1瓶(le quart = connoisseurs が格好をつけるために覚える仏単語)とプラコップによるサービス。
多少の不便にはつべこべ言わず、ありがたく拝領します。
JALのPYでは、食器を含め、機内食はレギュラーエコノミークラスと同じはず。
整列しています。以前申し上げた通りのトレイが眼前に出現し、自分でも妙な気分。お前のブログなんていちいち覚えているかというのは、もっともなご意見ですので、「JALとは違う」と主張した時の BA の機内食 (Yクラス) を再掲します。
並べてみると明らか。同じロンドンー東京間。共同事業路線ですが、ここまで違います。人によっては、ロシアンルーレットになっている路線ではないでしょうか。
機内食の違いなんてごく一例。一事が万事違うのがJALとBA。出張など旅程最優先で移動する場合、悲喜こもごもの発券になっているでしょう。罪つくりなワンワールドの共同事業。
アイスクリームでとりあえず〆。clotted creamで、とってもイングランド。
学校英語の復習。dairy、diary、dailyを決して混同してはいけません。
この後キャビンは暗くなります。皆さん、go to Bedfordshire。Goodnight !
勤勉な Pechedenfer はブログ更新のため、水周りのチェック。B787らしい間接照明。
便器横には、独立した折りたたみ式腰かけ。某社の東京ーロンドン便ファーストクラスのトイレよりずっと立派な個室。
一方で赤ん坊置き場は、小さく心もとないのですが、使う人はいるのでしょうか。だいたい首がすわる頃には、このベッドからはみ出しそうなのですが...。
シートに戻り、Fnacで購入した雑誌を延々と読んでいたら、巡回する客室乗務員から、声がかかります。これは JAL欧州便のお約束で、必ず一度あります。「うるさいから、ほっとけばいいのに」と思うようになれば、立派な BA の客。ユーモアでも一発かましてくれるならともかく、ひねりも効いていないお世辞では意味がありません。
共同事業になり、BAにはJALの客、JALにはBAの客が大勢搭乗するようになりました。優秀なJALの客室乗務員です。BAの客かJAL本来の客は一目瞭然なはず。しかし区別せずJAL流のサービスを行うのは、会社の方針でしょう。
一方 BAの方はどうかというと、JALの客かどうかなんて、乗務員が区別できるはずがなく、どう扱うかの問題自体起きません。
間食はブラウニー。何も言わないとこれが出てきますが、うどんですかいも選択できます。
続いて延々と in the middle of nowhere を飛ぶ静かな時間。
日本海へ出る頃になると、最後の晩餐ならぬ到着前のご朝食。
素材はわかるのですが、料理はわからないという得体の知れないものが出てきます。ちょっとイギリスを感じます。もちろんドイツでもオランダでも、こういうわけの分からない料理を作る人は大勢います。
時間通りの到着。写真はなし。そして今日からは、「暮らすように暮らす」だけです。