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JAL、ANAとクラウン

トヨタ自動車のクラウンが6月、久々にモデルチェンジ。販売が好調ということです。

トヨタ、新型「クラウン」3万台受注 目標の7倍 :日本経済新聞

クラウンと言えば、そのキャッチコピーが自動車や宣伝の世界を超えて伝説になっています。ちょっと挙げてみても、

 

「いつかはクラウン」  (カミラの独り言のようですが、無関係です。)

「いつまでも、クラウン」(リジーの独り言のようですが、無関係です。)

「すべては、クラウン」 (チャーリーの独り言のようですが、無関係です。)

 

これらのコピーが現れたのは、1983年の高度成長期末期から 1991年のバブル崩壊まで。日本経済が頂点に登り詰めた時と一致します。高級車であり、もともと多数の手に渡るのが困難だったクラウン。しかし国の経済成長を背景に、大衆の憧れが現実に遷移するフェーズをトヨタは上手にとらえました。コピーにそのことが現れています。時代との同期が見事だったため、クラウンは戦後日本の歩みを象徴するような存在となってしまいました。

 1992年以降、一人あたりのGDPは変動が激しいものの右上がりの傾向はわずか。つまりここ四半世紀の日本は、世界有数の劣等生です。2017年の一人当たりの購買力平価GDPでは、台湾に抜かれました。物質的に豊かな国とは、言えなくなってきている日本。

 

1990-1995年あたりが、他国との比較で日本が最も豊かだった時代。つまり海外旅行が楽だった時代です。1995年と2016年で一人当たりの名目GDP(USD)を比較すると、

       1995   2016

日本    43,000  39,000

アメリカ  29,000  57,000

タイ      2,800    6,000

 

アメリカもタイも約2倍に成長したのに対し、日本は1割ほど減少。タイのような経済発展中の国では、旅行者向けサービスも開発が進むので、経済格差が旅行しやすさとなるほど単純ではありません。しかしアメリカのような「昔も今も先進国」を旅行するなら、昔より貧乏人になったのは明らか。同じ期間を旅行するのに、予算が半分になるようなものです。旅行中なら、自分の所得が半分である場合を想像すると良いでしょう。20年間に、どれだけ懐事情が悪化したかが理解できます。

 

世の中は夏休みですが、外国旅行の方が安いなんて昔の話。国内の方が安上がりと平凡な世の中。Pechedenferも地味に国内旅行。国内には面白いところがいくらでもあるので、楽しいのですがね。

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史跡としては無意味な建築物の背後で、飛行機が盛んに離陸、上昇していきます。高台で風が通り、空いていてなかなか良い場所。

 

JALANAも国内線利用客が多くなれば、それはそれでうれしいはず。飛行機の旅は昔の憧れ。そして今の現実。良くなる未来というイメージの形成が、クラウンの歴史と共通しています。ANAの国内線プレミアムクラスでは、路線限定でシャンパン供出が始まります。今更シャンパンでもあるまいと思うのですが、まだ特別なものを感じるANAの顧客にはより良い未来でしょう。

 

一方、クラウンは広範囲の顧客の手が届くようになった結果、改造車の代表格になりました。基本設計が立派だから様々な改造に耐えるわけで、高性能の証なのですが、上位階層向けのイメージは破壊されました。

 同じようなことがJAL, ANAの客層、象徴的に言えばFFP上級会員の質にも起きています。大衆の憧れが大衆の現実に変わる時、会社には大きな金が入る一方、ブランドを大きく損なう力が発生するのは不可避なのでした。

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宣伝に表現されるクラウンは、憧憬 → 現実 → 良い未来 → 変革と推移してきました。今ではメルセデスも改造車のベースとして人気があり、クラウン=改造車のイメージは和らいでいます。車離れも手伝い、社会におけるクラウンの存在感が縮小しており、現代では信奉者が普通に買って、普通に使う家電という感じです。

 JALANAは高級な世界、憧れの世界を演出する一方、悪いイメージが普遍的に見られる(マナーの悪いユーザーをよく見聞きする)フェーズにあります。クラウンが辿った道をトレースしています。

 その証拠にかつてのクラウンのコピーは、ほとんどJALANAも使うことができます。以下のように ANA 向けに言い換えてもパロディの諧謔味は感じられません。パロディどころか現実の ANA の宣伝より、はるかに筋が良いようです。

 

美しい日本のファイブスター航空サービス

日本の薫り

美しい日本の新しいANA

いつかはプレミアムクラス

満たされて、新しいANA

日本の誇りと喜び

いつまでも、ANA

新しいANAが、動き出す

ZERO ANA

超えてゆく、ブランド

未来とつながるか。ANA Beyond

 

商品ではなく会社名の方が調和するコピーが多いのですが、驚くほど自然に収まります。クラウンは実質的に国内専用にもかかわらず存在感がありますが、JALANAも日本語によって形成されるイメージは、良いレベルにあります。

 

クラウンは売りませんが、トヨタは早くから海外市場で頑張っており、それは現地に溶け込んだ宣伝にも現れます。JALANAの国際的な存在感がまだまだなのも、外国での宣伝からうかがわれます。言わばクラウンだけの状態にある JALANA。日本人利用客頼みということを意味しますから、日本が相対的に貧乏になっても会社はびくともしないのでしょう。

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