PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

アポストロフィ "s"

読み返すと、今回は英語の話になっています。得な情報はもちろんのこと、航空関連の新しい情報も掲載できていません。

 

アライアンスで共通化?:変な表現

違和感を感じるという声が多かったANAのコピー

JAPAN'S ONLY 5-STAR AIRLINE

は、今年 JAL が同じファイブスターに列せられたため、用済みになりました。めでたしめでたしです。代わりに ANA が使い始めた新コピーも取沙汰されていると思いますが、今日はその話ではありません。

 この評判が芳しくなかった「国名's」。英語学者でもないし、調べたわけでもないので確実なことは言えませんが、かしこまった場*で

「世界では他にもあるけれど(or 珍しくないけれど)、その国の中では唯一(or 稀)」

などという意味で名詞を限定する場合、「国名's」を使うとすっきりしないようです。

* その用法で醸し出される印象が、航空会社の宣伝としてどうかと言う問題です。

 

文法的には誤りとは言えないだろうし、ANAの他にも Lufthansa が同じ用法の「's」を使っています。

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ドイツ語の表現は、そのまま翻訳しても誤りとは言えない水準にとどまることが多いので、見逃しやすいのでしょう。ドイツ語の EUROPASというGenitivをEuropa's に単純変換。

 

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こういう単純変換が普通になっているためか、ドイツでは不細工な英語表記が横行しています。彼らの英語を信頼するのは危険です。

30語も並んだ文の最後の二語が be 動詞と過去分詞という受動態の構文なんて、勘弁して欲しいものです。

 

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母語話者に難しい英語

さて ANALufthansa に共通となった英語表現ですが、英語圏で「変だ」という声は上がりにくいのではないかと思います。これは表で礼儀正しく、陰で嘲笑するという有りがちな話ではありません。

 

少なくともイギリスでは「's」は鬼門です。一般人には正書法が極めて難しく、外国人の用法が変だったとしても、笑う余裕はない気がします。

 

(1) 非常に良い例は、街中の薬局。英語で chemist's shop または、chemist'sです。外国語として習う場合も基本語彙ですが、このアポストロフィと s の使い方は、混乱の元になっています。

english.stackexchange.com

実際のところ、”chemists shop" で検索しても相当数がヒットし、そうしたサイトの本文では、多くの場合アポストロフィーが抜けています。画像検索からサイトに移る方が、この事情をよく理解できるかもしれません。

 

(2) 衝撃的な例は、今年3月のニュース。英国人女優としてはおそらく世界一の人気者、Emma Watson が彫った刺青にエラーがあるというもの。

Emma Watson Debuts Temporary Time’s Up Tattoo at the Vanity Fair Oscar Party | Vanity Fair

 Time's up と綴るべき所を、Times upとしたわけです。英語圏で文字列を彫る人は多いのですが、綴りの誤りが頻繁に起きることがこのニュースからうかがわれます。刺青ですよ、刺青。間違った英語を世間に晒して送る一生になったわけです。

 

Emma Watsonの場合、この失敗をネタにしてしまいました。自らのツイッター

https://twitter.com/EmmaWatson/status/970803023856439297

"Fake tattoo proofreading position available. Experience with apostrophes a must."

と呟いたのでした。意味は

「刺青ゲラ校正の虚構ポストに空きあり。アポストロフィの経験は必須。」

ですね。世界の人気者が繰り出すユーモアはなかなか見事で、Emma Watson の知性が高いことを示唆します。そしてこんな高い知性の持ち主でも簡単に間違えるという事実が、英語教育の問題を雄弁に語ります。

 

(3) 最後は母語話者にも、外国人にも難しそうな「's」。映画のタイトル「ブリジット・ジョーンズの日記」は「人名's」ですから、基本的な「's」の用例。原題は " Bridget Jones's Diary " ですが、「s」で終わる人名の場合、必ず「's」が付くというわけではありません。

https://ontariotraining.net/grammar-tip-possessive-with-names/

これはカナダのサイトとは言え、このケースでも母語話者が自信を持つのは難しいようです。解説する人も、音声学上の法則を断定するに至っていません。

 

ついでにANAの英語がらみで

最後に「's」とは離れますが、笑撃を受けたのでここで書いてしまいます。何で英語と日本語でこんなに結果が違うのか、不思議な話です。

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ANAは、最近ウィーンへの就航を決めました。2月から運航開始のようです。

ANA is heading to Vienna in February – Business Traveller

Bruxellesに続いて、Wienとは素晴らしいというか、目の付け所が良いと感じました。これに関連して就航都市を地図で確認したくなり、ANA route” で画像検索してみました。もちろん種々のルートマップが出てきます。そもそもそれを期待したので、"route"を単数で検索したのでした。

 

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検索には少しコツが必要です。それは決して日本語で入力しないことです。どうしてかって、思いましたか?実際に "ANA ルート" で画像検索すれば、一瞬にして理由がわかります。この検索スピード。Googleはよくできています。

 

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全く違う世界に紛れ込みました。ルートマップにたどり着くのは、不可能な気がします。まともな検索を圧倒的パワーで妨害するANAの顧客集団。神とも呼ばれるGoogleの能力をあっさり無効化するなんて、ANAマイラーたちは大したものです。