フレンチミッション第2弾。こんなことをやらせるのは、Air Franceだけです。
KAIZENのための調査法三種
昨年、米国の某大手航空会社で調査員を搭乗させ、サービスのチェックを行うという施策が内部漏洩だか噂だかで流れて大騒ぎになりました。もちろん騒いだのは顧客ではなく、乗務員と労働組合。しかしこの方法は人件費がかかるし、販売可能な席が減るしと、いかにも効率が悪そうです。
一方、日系で一般的な「お客様の声」。一見どろどろしていますが、経営側からすればスマートなやり方なのだと感じました。
それらのやり方の中間に来るのが、(おそらく) KLMが始めた Quality Observer。専門調査員に準じた方法で、搭乗客に現場調査をさせます。
人件費は不要。そして何より席の販売に影響がありません。航空会社の現場サービスの調査には、大したスキルは必要ありません。客をうまく抽出できれば機能するだろうと考えたわけです。けち臭くも賢いやり方。
経営側が期待するとおりに(=規定どおりに)、現場が働いているかどうかを調査するのが目的です。したがって数多くの細かい事柄を観察して、記録、報告することになります。
任務を受ける顧客
任務を遂行する顧客は Flying Blue の会員から選ばれます。基準は分かりません。選ばれると、英仏 2 言語によって書かれた招待メールが突然届きます。人によっては蘭英文かもしれません。招待を受けたら、スマホ用のアプリをダウンロード、チュートリアルビデオを見て準備します。スマホを持っていない人は、購入の必要があります。
搭乗・調査の最低1ヶ月前には招待が届くようです。
Pechedenferは、3年前に一度行っています。
エールフランス-KLM、クオリティ・オブザーバーからの招待 - バス代わりの飛行機
AF1560:CDG-ZAG エコノミー - バス代わりの飛行機
そして継続意志の確認メールが2018年 8月に届き、これにはOKをしました。
Skywalker n'a jamais rêvé de se déplacer en tapis volant. - バス代わりの飛行機
具体的なミッションは、搭乗の3週間前に指示されました。
調査項目は 50 から 100ぐらいになりますが、今回は2回目なので心理的に余裕があります。おかげで調査の様子を記事にできるよう観察できました。
搭乗まで
乗継ぎ便だったので、チェックイン場面に関する調査はできません。パリ Charles de Gaulle空港 Terminal 2F、搭乗ホールから開始です。
プログラムは、任務を遂行する会員の予約に応じてカスタマライズして出てくるわけではありません。今度の場合、チェックインはスキップして、ラウンジまたは搭乗ゲートから調査することになります。
このホールに到着した時、搭乗開始時刻まで残り20分でした。この状況でラウンジ利用は普通考えません。しかしそこは調査。充実した結果を出したいので、強引に立ち寄ります。
滞在時間10分。適当な場所に腰掛けて、飲み食いせず、スマホの画面と格闘するだけでした。文字通り調査だけで、ラウンジを後にします。
ゲート付近では、搭乗を待つ列が形成されていました。Terminal 2Fは、AF-KLMなどの近距離中距離便専用のターミナルですが、ホール全体がいつも混んでいるようです。列といってもかなり乱れているので、どこに並ぶべきか分かりにくくなっています。これは自由記述で報告。すると写真を撮れと指示が来ました。
アプリ上からスマホの内臓カメラが立ち上がります。人は撮るなという一般注意があるので、腹部から下しか写らないように撮影してアップロード。
さらにこちらから行動を起さないと分からない調査項目があったので、係員に質問しに行きました。こういう場合、面倒です。感づかれた可能性もあり、ばかし合いのような気分がしてきます。
そこでカムフラージュのため、何でも良いから無難な写真を撮ります。「パリ、初めてなんです」風観光客のふり。
搭乗では SkyPriority を活用、子連れ客と共に賑やかに進入。機内整備未了のため、搭乗ブリッジ内で足止めを喰らいます。本日はこれ幸いと搭乗場面の回答を送信し、機内場面の予習をします。
機内で
ソーシャルメディアでは決定的に重要な機内食は、Quality Observer では完全に脇役。ほとんど質問がありません。
たまたまトレイテーブルに勾配があり、押さえていないとトレイが手前に移動、膝の上に落ちる状態でした。トレイの底にゴムが張ってあればよいのですが、あいにく平滑。自由記述欄で報告するのに適当な内容です。しかし「滑止め」に anti-glissoire、anti-glissant、anti-glisseと様々な単語が思い浮かぶものの、どれが適当かわからず、記述は諦めました。辞書を手に調べることは可能かもしれませんが、そんな気にはなれない慌しい調査。
ハードウェアの不都合をあげつらう代わりに、機内食とワインを褒め称えておきました。
Quality Observerは、明らかに現場の欠陥を改善するために存在します。しかしガストロノミーに関して素晴らしいと感じた場合、言っておかないと....。
この Haut-Médoc は新鮮さと深みを兼ね備え、Bordeaux の観光当局が好んで使いそうなワイン。機内で出すなんて Air France しかできないでしょう。こういうのがサラリと出てくるのは、抗し難い魅力。
「アナウンスは流暢な英語でも行われていたか?」という質問が、客室乗務員についても、パイロットについてもあります。これは AF 便の調査のみに設定された質問のような気がします。さらに「機長の名前を言ったか?」なんて、服務規定が透けて見えてくる質問もあります。「現地の気温と天候についての案内はあったか」とか、それはそれは細かいのでした。
アナウンスを含め、乗務員の言うことを注意深く聴くことになりますが、意外と一語一語全て聞き取れるものですね。天候の案内なんて、dégagé の一単語しか該当しませんでしたが、それだけで Oui の選択になります。
英語のアナウンス中、"... il est ten-forty three.(10時43分です。)" と不思議な英語が出てきましたが、ぼぉっと聞いていたら、気が付かないと思います。そこで英語も Oui にしました。そもそも英語以外の言語で回答する者に、英語の質を調査させることが間違っています。
到着空港で
前回は到着後の空港サービスに関する質問もありましたが、今回はなし。多分ハンドリングが AF-KLM ではないためだと思います。その程度にはカスタマライズされているようです。ただし最終段階の送信を行わなくては成らないので、到着空港でも Wifi 接続。ようやくミッションが終了します。
補足と結論
・報酬は Flying Blue 500 miles に加え、Air France Shopping で 20% OFFのお買い物。割に合うかと問われると、微妙と答えざるえません。 搭乗自体を楽しみたい場合は、受けない方が良いと思います。
・この調査は 12 か 14 言語に対応しています。日本語があったかどうかは、見落としました。翻訳では分かりにくくなりそうです。
現場では相当な量の質問を、次々消化していく必要があります。しかも補足説明や念押しの注意があちこちで行われます。未知の単語が出現しても、前後からすぐに意味がわからないとと勤まりません。つまり格好をつけて、独語でやろうなんて考えない方が無難です。
têtièreなんて単語、初めて見ました。意味はわかりましたが、広く使われているのでしょうか。
大忙しですが、Flying Blueに満足する会員なら、喜んで協力するのではないでしょうか。普段とは違った観点からサービスを見ることができて、興味深い体験になることは間違いありません。