PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

パリ Charles de Gaulle空港 新ターミナルの計画

蘊蓄ネタ向けの数字

パリの表玄関 CDG 空港は、年間旅客数 6,900 万人が世界 10 位(2018年)。巨大空港と言って差し支えありません。ヨーロッパでは、世界第 7 位、7,800 万人のロンドンの LHR (2018)に次ぎます。一方 CDG の面積 32.4 km2 はヨーロッパのナンバー1で、LHR 12.1 km2の 2.5倍以上。面積あたりの旅客処理量は、ライバルの 38%に過ぎません。巨大なターミナルが所狭しと並んで、収拾がつかなくなっている印象を受ける CDG ですが、まだ建てる余地が十分あります。

 

ちなみに面積による世界の空港ランキングは、

1. DMM (776), 2. DEN (135.7), 3. DFW (69.6), 4. MCO (53.8), 5. IAD (48.6), 6. IAH (44.5), 7. PVG (39.9), 8. CAI (36.3), 9. BKK (32.4), 10. CDG (32.4), 11. MAD (30.5), 12. ORD (29.1), 13. SLC (28.3), 14. AMS (27.9), 15. FRA (23.0)

となります。( )内は面積 [km2]。

 上位は本当に巨大で、小国の領土に比肩します。DMM の面積を国・領土のランキングに入れると、224国中 183 位。バーレーンシンガポールの国土面積より広い空港なのでした。大阪の地域単位で表すと、甲子園球場 20,000 個分。2位のDENでさえ、東京都文京区より広いという現実。敷地面積ですから、仕切った内側に過ぎません。それでも拡大困難な空港の関係者やその利用者にしてみれば、うらやましい限りでしょう。

 羽田空港の統計は、年間旅客数 8,500 万人、面積 15.2 km2。混雑の程度は LHR の 87%、CDG の 264%といったところ。世界4位の旅客数ですが、面積では小さな空港です。というか、それより狭い LHRはかなり無理があるようです

 

その頃はライフタイムプラチナになっているかも?みたいな話

ロンドンでは大規模な土地収用が必要な LHR の拡張計画が一歩、一歩進められています。一方でパリでも CDG の新しいターミナル建設の計画が固まってきました。

ADP ouvre le débat sur le futur terminal 4 de Roissy-CDG

住民との交渉があまり必要ない分、簡単に思えますが、どうも予算が問題のようで途方もない期間が出てきます。

 

公共協議の場が 2月12日から 5月12日にかけて設けられますが、ADP(パリ空港会社)と Air France はすでに話を進めており、2028年に供用開始、2037年の完成時に発着回数が毎日500便増え、このターミナルのみで年間 4,000万人の旅客を扱うとすでにぶちあげています。

Bruit : le projet de terminal 4 de Roissy inquiète

 

デザイン画も出来ていたりします。

Voilà à quoi ressemblera le futur terminal 4 de Roissy-CDG

建設場所は Terminal 2の北側、Terminal 3の東側で、ほとんど議論の余地がないようです。そもそも、他に大きな建造物を収容する空間がありません。また Air France が引っ越す*ことも規定路線になっています。AF専用のターミナルまたは SkyTeamのターミナルになりそうです。

*: Terminal 2A~ 2Dが完成したら、Terminal 1から引越し。Terminal 2Fが完成したら、再度大型引越し。2Eの完成で長距離便は 2Fから引越しして、Terminal 1や2A ~ 2Dは空け渡し。そして今度 Terminal 4が出来たら(恐らく)大部分引越し。住所不定、やどかり Air France。ちなみにやどかりは仏語で bernard-l'hermite(別綴りで bernard-l'ermite)と言いますが、昔 Bernard という隠遁修行者 (ermite, 隠遁する場所は hermitage) が居て、ペットのやどかりを可愛がっていたわけではない模様。

 

現在でも巨大な混雑空港なのに、その容量を57%増やすことを見込んでいるのですから、大工事になることは間違いありません。しかし 2037年とは 18年も先の話。自分が生きていることにも自信が持てなくなりますが、Air France の存続はさらに怪しいお話。

 大型の国際空港でも、建設地決定から開業まで10年が目安なのに、上物の工事だけで18年とは...。こんな気の長い話をしても誰も関心を示さないので、オリンピック(2024年のパリ開催五輪のこと)に合わせてオープンなんて発言する人もいます。フランス人総体は祭り好き(fêtards)なので、頑張って一部を先行開業する案が存在するようです。

ADP prépare le terminal 4, la dernière grande aérogare de Roissy

それで良い印象が形成され、ADPも Air France も、Ben 君も労組もハッピーですが、全体で18年かかる工事です。5年間で一体何が完成するのでしょう。一抹の不安がよぎります。

 

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何百年にもわたる対立が効果的に働き…
さてこの計画がうまく運び、旅客利用が十分促進されると、CDGは旅客数の上でも LHR 超えが見えてきます。フランスのことです。イギリスの鼻を明かすことは、何でも大歓迎。そういう歴史的、社会的な基本構造を考えると、異例の長期計画も飽きることなく熱心に進められると思います。

 CDG は1974年 3月に開業しました。2037年には63歳。そこで一応の完成を見ることになります。