PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

機内、ラウンジでのワインの注文方法(その3)

航空会社別ワインの注文方法の2番目は、新大陸ワイン生産国。自国で大規模生産する農作物ですから、航空会社のお膝元でも相当消費されます。国民は日常的に情報に接しているので、それなりに詳しくなります。しかしながら自国のワインについての知識は多いものの、他国のワインについては普通関心がありません。これは自然なことです。

 

アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド(、南米、南アフリカ)などの航空会社

AA, DL, UA, QF, NZ (, LA, JJ, AR, SA) など。新世界のワイン生産国では、一般にワインは品種で特徴付けられます。まだまだブランドを形成する産地は少ないのが現状です。したがってワインの注文は品種で構いません。アジア、中東の会社と異なる点は、

 

自国のワインを優先して搭載している

 

ことです。それらは旧世界(欧州)に元々あって、国際品種になったものばかりですが、Chardonnay, Sauvignon Blanc, Shirazと3種覚えれば、まず大丈夫と言うほど単純化できません。初心者の場合、搭乗前に5分ほど予習が必要なレベル。

 

アメリカが最初に世界市場で成功した品種は

白がChardonnay

赤がCabernet Sauvignon

でした。しかし最近ではいろいろな品種が栽培されており、ChardonnayとCabernet Sauvignon は、現在では「目立つ程度」にまで重要度が下がっています。ちなみに United の現行ワインリストは以下の通り。

International Flights Inflight Wine List

ごく自然に自国のワインばかり採用しています。一方、Delta は世界中から安いワインを集めている様子が伝わってきます。

https://www.delta.com/content/dam/delta-www/pdfs/delta-spring-wine-2019-program-8.5x11-final.pdf

 赤は Merlot ブームが昔あったこと、ここ数十年 Pinot Noir にも力を入れていることからこれら2つも頻出です。それから Shiraz (アメリカでは Syrah) と Zinfandel も忘れてはいけません。これらは、客室乗務員が常識レベルで知っている単語です。

 

オーストラリアでは

白はChardonnay

赤は Shiraz

が特に有名ですが、白では Sauvignon Blanc も結構消費されます。赤では Cabernet SauvignonPinot Noir でも個性が評価されるワインが多数作られます。したがってこれらの品種は、覚える価値があります。なおオーストラリアは新世界の中では産地へのこだわりが強く、かの地のワイン生産地に詳しいと客室乗務員から好感をもたれるかもしれません。

 

ニュージーランドでは

白はSauvignon Blanc

赤はPinot Noir

が特別扱い。したがってこれらを覚える必要はあります。冷涼な気候から Riesling という発想をする人も多いのですが、実際つくられています。そういう世の期待に答えるために Riesling が機内で出てきてもおかしくありません。彼らが Riesling を [s] と発音するか、[z] と発音するかは知りません。

 

南米、アフリカの会社も様々な品種が植えられていますが、

Chardonnay

Cabernet SauvignonPinot Noir

は世界市場を意識してきているので、要注意です。搭乗経験が無いので想像です。

 

アジア・中東よりややこしくなってきました。最後に相変わらず難しいヨーロッパと、つかみどころがない島国に進みます。

 

ヨーロッパの航空会社

高価格なワインを産出するフランス、イタリア、スペイン、そしてドイツ、オーストリアでは、基本は産地です。したがって生産地名を覚えなければいけません。品種でもコミュニケーションは可能な場合があります。また時には両方必要です。つまり適当な呼び方が、場合によって産地名、品種名、その両方の組み合わせと変わります。

 

Air France 型。ワインリストはフランスワインだけでしょう。それができることはフランスの誇りですから当然そうなります。多分リストにある通りにワイン名を発音するのがベスト。身も蓋も無い話ですが、レストランで注文する場合と変わりません。ワインは難しいままです。

 欧州ではどの国の航空会社も、固有のサービスを提供する必要に迫られているらしく、AZ や IB から A3 まで自国のワインがずらりと並びます。こういう航空会社に乗った時、思い出すべきことは以下の通り、

 

・平均的な客室乗務員はワインには詳しくないが、産地名は大抵聞いたことがある。

・その地方の出身者でない限り、品種は知らないことも多く、セパージュ(比)なんてとんでもない話。

・常識がベースにあるので、サービスの打合わせは普遍的なものになっていないはず。

 

したがって注文する時は、ワイン名をできる限り詳しく言うのが正解でしょう。アジア系航空会社で回避されるべき方法がむしろ有効です。リストを棒読みすれば良いのである意味で簡単。

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フランス人乗務員だったらこういうワインは名前で分かる可能性大。機内でお目にかかることはまずありませんが...。

 

Lufthansa 型:一部のカテゴリーで非常に高く評価されるワインを産出するドイツ。こういう場合、機内では自国産、他国産の混成チームになりやすいのです。ドイツの白ワインでは品種が意識されることが普通なので、品種で呼ぶことが少し優先されるでしょう。産地で呼ぶ場合、国産ワインはRhaingauとか、Moselとかの地域名、外国産ワインは国名*で呼ぶとそれっぽい感じ(ほどほどにワインを嗜む余裕がある人の臭い)がします。国産ワインを品種、外国産を国名でも同じ効果があります。そういう言葉遣いが乗務員には感覚的に受け入れられやすいようです。

*:ドイツ人は地方名をドイツ語で覚えます。一方日本人は現地語を元にした日本語で覚えます。欧州の地方名が一発で通じる確率は低いと考えて間違いありません。

 

さらに状況によって適切な語彙が変わるのがヨーロッパ的ややこしさ。仕方ありません。一例はLHの国内線で体験したとおり。

LH2041:TXL-MUC エコノミー(その3) - バス代わりの飛行機

この時、白は一種類でしたが、Riesling と注文するのが最も適当でした。こういうレベルの話になるとワインだけの知識ではありません。

 OSも似たところがありますが、オーストリアは一流の白ワインに加え、質の良い赤ワインも大量に生産します。質は良い、それは世界では有名ではない、OSは積極的に採用せざる得ないとなると、外国人はオーストリア産を機内で見つけたら注文するのがコツです。この場合、リストの通り読んで問題ないし、その方が好感を与えそうです。

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こういうヨーロッパの航空会社でも、品種名で押しまくるのは一つのやり方です。客に対応してサービスを行うのが彼らの仕事ですから、面倒だったら品種中心の発想で良いと思います。すべてはコミュニケーションの問題ですから。

 

日本、英国の航空会社

JL, NH, BAなどです。微妙なのがこれら文化文明の輸入大国。外国文化の受容力に優れる一方、吸収した文化は自由自在に歪曲してしまいます。伝統的なワインの産地でもないのですが、ワインも海を渡ってきた他の文物と同様に消化しています。妙に詳しいこともある一方、見ていてハラハラすることもあり、ワインの言語も型にはまらず処方箋なし。サービスにあたる人を見て、客の方で丁寧に対応するしかありません。一番難儀なのかも知れません。

 

まとめ

新世界のワイン生産国は、品種名で注文。強い品種が国により違うので簡単な予習を。

ヨーロッパではワインはやはり難しいので、とりあえずリストの通り読む。

日本、英国では処方箋なし。ハプニングを面白がる方が良いのでは。