再びワインの記事。個人的には大して面白くないテーマでも少しは役立つ記事を書いた方が良いと、考えを改めています。今日のテーマは
機内ワインならではのアドバンテージ
および
ファーストクラスとビジネスクラスのワインの違い
です。
場にふさわしいワインを選ぶのは、人によっては悩ましく、人によっては楽しみです。ワインにあまり関心がなく、〇〇放題が好きな人が客なら、予算の許す限り高価なものを選ぶと喜ばれます。逆にワインに関心が高い客に、そういう思考様式でワインを選ぶと失望されます。
この問題は想像以上に普遍的で、主(あるじ)が単数/多数、客が単数/複数にかかわらず存在しています。この問題を受けて、機内やラウンジで消費されるワインに、どういう特徴が現れているか指摘します。ワインリストを理解し、より良い選択するために相当役に立つからです。
最初に指摘しなくてはならないこと、それは相場感の存在です。最近少しぼんやりしていますが、ファーストクラスのワインの標準は、
泡:大手メゾンの上級キュベ
白:ブルゴーニュ1級畑
です。格上になる Médoc の premier grand cru classé、Bourgogne の grand cru は過剰と見なされる傾向があります。とにかくこの標準にぴったりでも相当な種類があり、さらに生産者、収穫年で価格や品質が異なるので、各社十分腕を見せることができます。価格の方は、50 EUR~200 EURが大まかな目安。
ビジネスクラスの方が会社によって差が大きいのですが、基本的には泡は大手メゾンの普及キュベで30 EUR~40 EUR程度、白と赤は10 EUR ~20 EUR程度、「首都レベルの大都市ではスーパーで購入できるが、平均住民の日用品を明らかに超えるレベル」のワインです。しかしファーストクラスとの値段の差は明らかです。
通常のレストランでは価格的に様々なワインを取りそろえ、全ての客に提供可能な状態にしています。一方、機内で提供されるワインは、様々な観点で狭い範囲に分布しています。決定的に選択の幅が狭いのです。しかしこのことは欠点とは言えません。
その理由こそが、次に指摘すべきことそのもの。主(あるじ)から客へメッセージが伝わることです。Pechedenferはよくワインリストの説明を読みます。ブログネタのために粗探しをしていることが多いのですが、それはさておき確実に言えることがあります。航空会社は、どのように乗客をもてなすかよく考えてワインを選んでいます。そしてリストを読めば、それがメッセージとして伝わって来ます。
特にファーストクラスの場合は個性の強いワインを提供できるため、ワイン名だけでいろいろなことが伝わって来ます。これは選択肢に制限が大きいからこそ、可能になることです。地上のレストランでは、バリエーションを大きくする方を優先せざる得ないので、しょせん無理な話。
つまり、ワインのメッセージ性は
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ならざるえないのです。
例えば Cathay Pacific の機内ワイン。
Vin | Repas en vol | Voyager avec nous - Cathay Pacific
このページでは、ファーストクラスのワインに
Comtes de Champagne Taittinger 2007
Lamblin & Fils Chablis Premier Cru "Fourchaumes" 2017
Château Montrose 2005
の3種が紹介されています。大した経験がなくても、名前だけでワインを特定でき、味も想像できます。それだけ有名かつ優秀なワインです。
そして泡、白、赤とも上で述べた原則どおり。典型的と言えます。相場や原則を極めて大切にするという会社のポリシーが伝わって来ます。
Montrose 2005は英国で高評価の2級シャトー、21世紀では著名な当たり年。しかしその事実を有り難がるより、知る人ぞ知るというレベルの話が重要。このワイン、買い付け次第でかなり安く入手できたはずです。きっと彼らは成功したのでしょう。それを客に還元したい、そんな気持ちが伝わって来ます。白の Fourchaumes はシャブリの中では、飲みなれた人向けかもしれません。これらのワインは、オーソドックスながら魅力的なセレクションです。
一方のビジネスクラスは、
Allan Scott Sauvignon Blanc 2018
The Islander Estate Vineyard Shiraz 2017
Catena Zapata Appellation Agrelo Cabernet Sauvignon 2016
の3種が紹介されています。キャセイの当事者以外は、ワインのラベルと味を思い浮かべるのは難しいと思います。ちなみに上から、New Zealand のSauvignon Blanc、Australia の Shiraz、Argentine の Cabernet Sauvignonです。上2つは先日述べたアジア・中東の航空会社のパターンそのままです。
機内、ラウンジでのワインの注文方法(その2) - バス代わりの飛行機
ワインリストでは、バランス(と機内サービスの容易さ)を重視していることが伝わってきます。
このように会社が何を考え、客にどういうサービスをしたいのかリストを見れば、いろいろ判ります。これは一種のコミュニケーションであり、機内ワインの醍醐味だと思います。
相場感に戻ります。上記のサイトは、ファーストクラス、ビジネスクラスで広く提供されるワインを掲載したと思われます。つまりそれぞれのクラスの平均的ワイン。価格を見ると差ははっきりしています。
ファーストクラスは Montrose 2005 が 200 EUR、Fourchaumes が 30 EURぐらい。ビジネスクラスは、上2本が 10 EUR、3本目が 15 EURぐらいの品です。大きな差です。しかしながら個人的には名前から味がイメージできる点でファーストクラスのワインは決定的に違います。メッセージ性もファーストクラスの方が先鋭化しています。やはりこの2つのキャビンクラスは、根本的にサービスの発想が異なります。そして航空会社の個性は、ファーストの方が明快に表現されます。