PECHEDENFERのブログ

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最近の「痛い」ニュース

カンタスの新サービス:優先降機

上位キャビンの客および FFP 上級会員を対象とした優先搭乗(priority boarding, embarquement prioritaire)は、レガシーキャリアのサービスとして一般化しています。優先搭乗と対になる単語は優先降機(priority landing, débarquement prioritaire)ですが、これは稀な単語です。個人的には聞いたことがありません。ところが、カンタスは有料サービスとして優先降機を試験的に導入するようです。7月10日の報道。

Qantas propose le débarquement prioritaire contre un supplément

話はメインキャビンの中で完結します。つまりエコノミークラスの差別化。SYD-MELのような短距離で 5 AUD、大陸横断便で 15 AUD、ニュージーランド路線で 20 AUD、それ以上の長距離国際便で 45 AUDの追加料金となります。エコノミークラスのキャビン前方席の指定と組合せて販売されます。実際の運用を考えれば、これ以外の方法は無さそうです。

 

何のことはない、エコノミー前方席の値上げです。新サービス導入に際しては、追加コストは生まれません。ビジネスクラス客を降ろした後、機内後方の客に「おあずけ」を言いつけるだけです。簡単な機内アナウンスを加えるだけ。追加コストゼロで利益を創造。うまい方法です。

 

追加料金によりバルクヘッドや非常口席を指定できるシステムは、多くの会社が採用しています。そのバリエーションが加わりました。「棺桶に片足が入っている世代」には涙ぐましい努力に見えるでしょうが、投資家には受けが良いはずです。

 

レガシーキャリアのサービスは抱合せが基本。カンタスの「新サービス」導入で、むしろばら売りが難しいことに気が付きました。LCCのように一度白紙にして再構築しないと、個々の客に必要サービスを自由に選ばせる料金体系は無理です。

 

この文脈からある程度論理的な帰結となりますが、客の方で感覚的に知っておくと良いのは、有料サービスを追加すると、乗務員が何かと気を使い、公式に明示されない点で優先扱いされることです。レガシーキャリアがサービスばら売りに慣れていないためです。追加サービスは有料席の指定、グルメ機内食の追加、機内販売など多岐に渡り、少し高く感じられるかもしれません。しかしいろいろ付いてくる点も評価する必要があります。

 

大量航空輸送の構成は、

ファースト(レッドリスト入り~絶滅)

ビジネス

プレミアムエコノミー

前方エコノミー

その他エコノミー

と変わりつつあります。形は変わっても階級性の存在感は維持されています。この保存則が人間社会全般の変化と同じである点には、興味を魅かれます。

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機長が客用のシャンパンに手を伸ばす大韓航空

舞台は韓国からアムステルダムへの便。意図的にリークがあったのか、関係者に想像もつかなかったリークなのかはわかりません。7月9日の報道。

https://www.independent.co.uk/travel/news-and-advice/korean-air-pilot-drunk-champagne-alcohol-wine-cabin-crew-demoted-a8996711.html

機長がビジネスクラスのウェルカムドリンクのシャンパンに手を伸ばしたとのこと。もし母親が見ていたら、「はしたない」と説教されそうです。客室乗務員は制止したと言うことですが、御国柄を考えるとこの乗務員は勇気があります。

 

この機長はフライト中にもワインを所望、客室乗務員に拒否されたそうですから、かなりのダメ人間。客室責任者がしっかりしていたので、事なきを得たようです。記事を読んでいると、この客室責任者のバックに大韓航空の大物がいるような気がしてきました。それでもこんな「インシデント」が表沙汰になるとは、この航空会社も変りつつあるようです。

 

ブリティッシュ・エアウェイズの預入手荷物用電子タグ

環境意識が高い欧州の民。航空旅行なんて、資源の大量消費そのものの世界。紙もプラスティックも食糧も大量に使われ、大量に破棄されます。預入時、スーツケースに付けられる荷物タグも使い捨て。生分解性にも疑問がつきそうな素材ということで、有権者の環境意識を逆なでするような存在。機内食の食器は紙皿と竹箸にすべきなどと言う急進派が文句をつけるまでもなく、大問題です。

 しかし試みは数年前からなされています。熱心だったのはカバン屋のリモワ。電子タグ内蔵のスーツケースを開発しました。しかしどの航空会社もマジメに相手をしなかったようで、製品の販売はジリ貧になったようです。

 航空会社の立場では、読取機への投資が必要なことに加え、従業員訓練も必要です。投資は無視できません。さらに従業員が新システム導入で業務が煩雑になると、ストライキを起す可能性もあります。リモワはこんなことまで責任を持ちません。地球環境の御旗に航空会社が背を向けても、非難は出来ません。

 

住民の漠然とした環境意識が背景にあるなら、行政が規制するべきことです。しかし、EUとして電子タグ化を進めるという話は何故か低調。推進しようと情熱を燃やす官僚がいなかったのでしょう。

 

ということで、何だか社会のダメぶりが顕在化した電子化への道。航空会社が自社イメージの向上を図って導入するというラインで落ち着きそうです。

 

このような状況下、ブリティッシュ・エアウェイズは客に電子タグを販売することにしました。7月1日の報道です。

British Airways introduces digital baggage tags to simplify luggage check-in

アメリカ、カナダ、スペイン、EU諸国、ジャマイカ、中国を含む63カ国で 3,000回以上利用できると、客の環境意識に訴えます。ところが価格は 80 GBP(10,869円)。これは10月からの定価で、今買えば 63 GBP(8,560円)にすることもできます。

 タグの方がケース本体より高いなんて、普通にありそうです。下手すると、荷物全体の価値よりタグの方が高かったりして...。

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こんな支出を客に強要するシステムを提案するなんて、無理があります。ブリティッシュ・エアウエイズは環境意識が低いと言われないまでも、本気で考えているのかと非難されても仕方ありません。

 

公式説明はこちら。日本でも使えます。

Digital bag tag | Information | British Airways