Minga という名のドイツ第二の都。人口は Hamburg を下回りますが、歴史から言っても、この格付は妥当なところ。100 年ほど前までは Wittelsbach 家の統べる王国の首都。
他の州・地方と同様、土着の言葉はドイツ語(= Hochdeutsch,高級ドイツ語)ではありません。ドイツ語はゲルマン諸民族の共通語となりましたが、表現媒体としては作品を重厚長大にしてしまいがち。個人的にドイツ語が苦手なのは、高度化するほど、深化するほど何でも長くなるという特性*が合わないためでしょう。Hochdeutschの事は、他の方にお任せして、Pechedenfer はこの地の方々との交流を円滑にするためにバイエルン語をお勉強。(嘘)
*:立派になるほど、単語、一文、段落、作品全体のいずれか、あるいは全てが長くなる傾向がありませんか?
この一般読者向けの書籍では、バイエルン語 = das echte Hochdeutsch(高地ドイツ語)と来ました。昔からそうですが、ややこしいことです。
冗談は抜きにして、街では外国人が少しでもドイツ語を使うと、後すべてドイツ語になりがちなミュンヘン*。難しいし、疲れるし、単純なことしか言えないしとなるので、英語以外はしゃべれないふりをするのが肝要です。若い世代は皆ドイツ語が上手で、圧倒されますから...。
*:「ハロー」と声をかけられることが多いからといって、こっちから ”Hello” ではなく ”Hallo”(母音よりも強弱アクセントの違いが重要)と言うと、大変なことになりますから。是非お試しを。少なくとも個人的にはBerlinよりはるかにドイツ語強要度が高く感じられるMünchen 。英語の会話は全然続きません。今回の滞在ではこの地のドイツ語度を観察しましたが、空港のセキュリティでもドイツ語デフォだと言う事に気づき唖然としました。
地雷づくしのお土地柄ですが、一般に天気が良いのは二重丸。イタリアの北の端とはよく言われますが、科学的に問題ないかどうか調べたことはありません。なお冬は晴れるからといって、暖かいわけではありません。Hamburgよりは確実に、Berlinよりはたぶん寒いと思います。
心理的な中心と都市機能の中心がだいたい一致するのは、ミュンヘンの良いところ。仕事で訪れても、観光で訪れても、Marienplatz を中心に考えると理解しやすく、無理がありません。
交通はどちらかと言うと多中心。中央駅 München Hbf は結節点として確かに機能していますが、常にそこに出る必要があるかというと、そんなことはありません。
特徴的なのは、「どこに滞在するか」が「どこに住むか」とほとんど同じレベルで検討できることです。利便と歴史を感じる中心部、郊外の田舎町、高地バイエルンの自然...これらの全ての場所が、無理なく居住、滞在に向いています。
空港近くの Freising は小さな町ですが、静かで美しく、ゆったりした滞在にはもってこいです。Starnberg のように飲用可能な水質の湖の畔に滞在しても中央駅まで20分です。ここまで都会、田舎、自然が手に届きやすい大都市はなかなかありません。
ミュンヘン空港に着陸するため降下している飛行機から窓の光景です。
手前の水溜りは市民の間で行楽地として人気の Ammersee、中央奥に見えるのは水質が飲料水レベルのStarnberger See。Pechedenferが野生の蛍の乱舞を初めて見たのは、このStarnberger Seeの畔です。朝は遠くからの教会の鐘で目が覚めるというような生活ができます。
「普通の」ビールは涙が出るほどうまいし、オペラ、美術館も充実しています。周辺のジョギング、サイクリング、ハイキングのコースは、それこそ幾ら時間があっても制覇できないほど整備されています。
一つケチをつけるとすると、人々の間でバイエルン文化、ミュンヘン文化が支配的であり、外の世界の流行を感じにくいことでしょうか。世界中で一様に見かけるブランドの製品を探すのには、全く向いていません。これは「ドイツあるある」の少し極端な例なので、無理を言っても仕方ありません。
こういう街では、自分なりに良い職人、良い店を「開拓」するのが常道。たとえばチョコレート屋。この都市で有名なのは、Beluga
そして店員がとてもフレンドリーで買い物が楽しくなる Elly Seidl。客層も非常に良く、チョコ好きには一押し。
目立つ場所にあるのがWoerner's。実態は Konditorei & Kaffeehaus ですが、チョコレートにも力が入ります 。
世界中どこでも見かける Godiva や Neuhaus に飽き飽きしている方は多いはずです。それに反発、パリの成り上がり職人を持ち上げる方もいらっしゃいます。これらの全ての成功者たちは、その技が周囲に愛されたことから始まったはずです。そして職人養成は、フランス、ドイツ、イタリアで国家レベルの取り組みを行っており、どの都市に行ってもそれなりの職人がいるものです。
ミュンヘンにいるとそうした社会構造を実感せざる得ません。むしろ世界ブランドになると、その分価格が上がることがよく理解できます。ラベルの代金を真剣に検討するようになります。
なおバイエルン地方では、クリスマスにシュトーレンは普通とは言えません。Elly Seidl の通りを隔てた向かい側にドレスデンが本拠地のケーキ屋・喫茶店(Kreutzkamm)が支店を持ち、そこではシュトーレンを年中購入することが出来ます。ミュンヘンでは輸入文化です。
このように良くも悪くも自分たちの文化が強固なので、外国人でも長期滞在すると、思考形式が型にはめられます。バイエルンで通じることがドイツ全体、あるいはヨーロッパ全体で通じると誤解しやすくなります。
もしミュンヘンに住むことになったら、自分用に民族衣装を一揃えしたくなるかもしれません。実際役立つ機会は年に何回もあります。しかしそんなことより月に一度はパリかロンドンに出かけて、外の空気を吸いましょう。
女性用の晴れ着(民族衣装ではない式典・パーティ向けのドレスや周辺アイテム)を専門に取り扱う店。Dirndlを外してみても、こんな調子ですから。
野生と洗練の奇妙な同居。フランス女に求められる(時代遅れながらも逃れられない)価値がフランスより濃厚に出ています。
Beckenbauerも、BMWも、Glockenbachviertelも、みんなミュンヘン。永久(とわ)に聖母の加護のあらんことを。