PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

賑やかな買収と共同事業、影が薄くなる航空連合

航空会社が他社と協業するにあたっては、買収、ジョイントベンチャー、航空連合の結成・加盟などの方法があります。おおむね「親密な」方から、緩い関係に並んでいます。

 

買収、統合・吸収、資本参加など

昨年10月、ブリティッシュ・エアウエイズ (BA) の親会社 IAG は、エア・ヨーロッパ (UX) を買収することで Globalia Corporacion Empresarial S. A. と合意しました。スペインではすでに大手イベリア航空 (IB) は IAG 傘下。さらに同じスペインからフルサービスキャリア大手の UX が加わることになります。言ってみれば、スペインの空は IAG のものに。

 IAG は他にアイルランドエア・リンガス (EI) も有しており、支配圏がヨーロッパの西側から島嶼部に広がる大きな航空グループになります。

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内情は BA、IBが oneworld 加盟会社、EI はoneworldから脱退の後、独立していました。IAG傘下になるも現在は加盟予定なし。UXは Skyteam です。IAG の意向が報道されていますが、現在のところ

エア・ヨーロッパのブランドは維持

・LATAMが oneworld を脱退することにより空白化する南米路線の強化

・Iberia と合わせて路線の整理

マイレージプログラムの整理

を考えているようです。IAG は スペインの LCC Vueling (VY)、LEVEL (LV) の2社も有するスペインの会社。本社所在地はマドリッド。大胆な改革が暗示されます。

 

UX は2007年に Skyteam のアソシエートメンバー、2010年から正規メンバーになった歴史を持ちます。もともとエールフランスー KLMの一派でした。マイレージプログラムもフライングブルー (FB) でした。ところが FB のマイル金額制への移行が内部で固まった頃に FB を離れ、独自のマイレージプログラム SUMA を立ち上げています。

フライングブルーの縮小 - バス代わりの飛行機

SUMA は発足当初から金額制でしたが、マイルの換算比率は他に例を見ないぐらい低いもの (2 miles/euro) でした。後日修正され、FBより少し良くなりました。この経緯を見ると FB に留まっていても良さそうなものです。AF-KLMにうんざりして、独自路線を敷きたかったのでしょう。

 

この脱退4年後には、UX は IAG 傘下つまり BA の一味になるのですから、AFはしてやられたりというところ。その期間、自分たちの経営状態が一向に芳しいものにならないので、子分がとられることなど気にしている場合ではありませんが...。

 

航空会社の勢力図の塗り替えは世界中で起きていますが、資本に国境がなくなったEU圏内で買収・統合が盛んです。ルフトハンザグループは、スイス、オーストリアそしてブリュッセル航空と経営統合。接尾辞はドイツ航空から大ドイツ航空に変えた方が良さそうです。西では IAG が拡大を続けます。間に挟まれた AF-KLM は アリタリア に接近して痛い目に会い、その後元気がありません。最近になって MH の49%を買うとマレーシア政府に提案したようです。AF-KLMはどこを向いて走っているのでしょうか。

 

北米に目を向けると、2010年代前半がフルサービスキャリア再編の時代でした。Northwest が消え (2010 by DL)、Continental が消え (2012 by UA)、US Airwaysが消え (2015 by AA)、一段落ついています。今は「Alaska と Hawaiian との合併だ」などと大胆に予想する人もいます。

 

共同事業、共同運航

他地域でのビジネス拡大を容易にするための手段として、買収、統合は普通ではありません。どの国も航空会社に関しては、ほぼ確実に外資規制があります。米国の会社も、国内の統合・再編が一段落ついた後は、JV や共同運航を活発に進めます。Deltaと大韓航空中国東方航空との協業は東アジアでは印象的でしたが、今は南米路線がビッグ3の競争場所。

 日本では JAL が近年 JV に熱心です。新生 JAL は欧州路線で AY、BAと、北米路線で AA と JV を行っていました。昨年10月には太平洋路線でハワイアンとの JV が DOT に却下、再申請したようです。マレーシア航空との JV は、日マ当局の独占禁止法適用除外の認可を受けました。25%の資本参加の裏付けもあるようです。ただしここにきて AF-KLMの「横やり」提案が入り、話が怪しくなってきました。ガルーダインドネシア航空との間でも JV を進めています。一方で自社運航による路線網拡大については、ANAより慎重に見えます。

 その ANA もヴァージンオーストラリアと広いコードシャアを行うことを発表。それに加えシンガポール航空との JV も噂されています。過去には10億円を出資*、ベトナム航空のパートナーをJALから自社へ替えさせたように、ANAも必要な場所ではしっかり協業を行います。

*:Airbus の A380 のカタログ価格は 600億円。商売道具1つの60分の1の金額で、パートナー会社はライバルに取られます。モノの値段が良くわからなくなるような話でした。

 

IAG も買収大好きと言うわけではありません。上の例でも BA は JAL, AY, IB (日本に再就航した時追加) と日欧線 JV を行っているし、大西洋路線ではAA, IB, AYと同様のJVを行っています。カタール航空中国南方航空ともそれぞれ個別にJVを行っています。

Our partnership between Europe and Japan | Information | British Airways

Our partnership across the Atlantic | Information | British Airways

Our partnership with Qatar Airways | Information | British Airways

Our partnership with China Southern | Information | British Airways

ルフトハンザグループの LH, LX, OS は大西洋で AC, UA と、日欧で ANA と、東南アジア・西太平洋で SQ と、中国で CA と JV を行っています。

Lufthansa Group: Joint Ventures

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航空連合

ロイヤルエアモロッコoneworld 加盟は、2020年4月1日と発表されました。oneworldはアフリカに初の足掛かりをつくることになります。三大航空連合での新規加入は、ほぼ6年ぶりです。

 一方で脱退は頻繁に起きています。アビアンカ・ブラジル (2019)と アドリア航空 (2019) が Star Allianceから、エア・ベルリン (2017)が oneworldから、中国南方航空 (2018)が Skyteamからと、最近3年間に4社も消え去っています。このうち最初の3社は会社が破綻したケースですが、中国南方は十分元気。つまり「Skyteam は不要」と出て行ったわけですから、問題は深刻。さらに近い将来 LATAM の oneworld 脱退も確実視されています。これは デルタ航空の資本参加 ⇒ デルタとの協業 ⇒ oneworldが邪魔というconséquence。

 寡占を伴わなわずに世界中の都市を滑らかに結ぶというグローバル航空連合の発想は素晴らしく、21世紀初頭から15年ぐらいは機能したようですが、どうも逆風が吹く時代になったようです。

 

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3大航空連合がこのままジリ貧になるかどうか、第二幕ですね。