会費不要でマイルが貯まるという、FFP会員に共通する特典に加え、預入手荷物の無料追加とか、空港ラウンジの無料利用とか、座席優待とかいう上級会員向けのサービスが永久に受けられる会員。それが生涯上級会員です。
一度なれば「おイタ」をしない限り死ぬまで資格が保たれるので、一気に生涯上級会員になって、それ以降の旅では楽をしようという、少し無謀な「修行」です。
今回はBritish Airwaysです。
(b) British Airways Executive Club
上級会員資格は、搭乗距離と搭乗クラスに応じて定められたtier pointsの積算で行われます。このtier pointsが35,000に達すると、生涯Gold会員(oneworld Emeraldレベル)になります。日本在住者の特権、JGCはSapphireレベル。Emeraldレベルには対応していません。この差へのこだわりが、修行への強い意志になるかもしれません。
狙い目は、tier pointsが格安エコノミーの4倍になるビジネスクラス。というのも、価格は格安エコノミーの2倍~3倍で収まることも多いからです。そして距離は2,000マイル超の中距離が、必要時間も航空券価格も小さくなります。これら2つの留意点は、Gold会員(一年限りの資格でoneworld Emerald)になる時と同じです。
1年で1,500 tier pointsがGold会員の基準です。終身Gold会員は四半世紀にわたってGold会員を続けるような特殊な人たちなのです。距離に換算しても、明らかにKEのSkyPassより大変です。
なお2,000マイルの区間をビジネスクラスに搭乗すると、tier pointsは140です。
① TPE発の東南アジア便のビジネスクラスは、現在でも格安です。TPE-KUL、HKG-CGK、HKG-DPS、HKG-SUBなどが2,000マイル を超えます。したがって、MH利用KUL経由による東南アジア各都市(SIN, BKK, CGK, SGN, REP, PNH, RGN)の旅とか、CX利用のTPE-HKG-インドネシアの往復で360 tier pointsになります。
これは大体1往復100,000円弱です。97往復して34,920 tier pointsになります。後はJAL国内線クラスJ一往復で、晴れて生涯Gold会員です。
これらの格安ビジネスでは、現地滞在が必ず必要なので、どんなにがんばっても300日は必要です。航空券代がざっと10,000,000円ですが、300日台北に拠点を構えるのが難しいでしょう。NRT-TPEを別切でつなぐと、日数が365日を越えます。
台湾はリアイアメントビザ制度があり、55歳以上、金融資産5万ドル、その他の条件を満たすと、180日間の滞在が認められます。該当するならTPE発のビジネスクラスが使いやすくなりますが、それでも期間は不足します。
② TPE発の東南アジア便だと経費は抑えられますが、1年以内の実現は困難なので、南アジアまで対象にします。するとHKGからもKULからも、インド、スリランカの各都市まで2,000マイルを越える航路が数多く存在します。TPE-KUL-BOMとか、CTS-HKG-CMBなどは往復で560 tier points加算されますが、費用は最低200,000円ぐらいになります。63往復もすればよいので、日程的にはNRT-TPEを別切でつないでも、1年以内に35,000 tier pointsが達成します。
しかしながら、かかる費用はoneworld分だけで最低12,600,000円となります。これにホテル代、NRT-TPEの往復運賃がかかりますから、合計で15,000,000円は下らないでしょう。
費用以外の問題も想定されます。
どの国でも頻繁に出入国する外国人は歓迎されません。出入国管理において、真っ先に疑われる旅行者です。日本人だと、台湾とか、タイは頻繁に訪れても大丈夫なようですが、他の国では注意が必要です。
例えばインドでは、6ヶ月の数次観光ビザの取得が一般的ですが、原則として前回滞在から2月開けないと再入国できません。それ以外の場合は手続きが必要です。(インドを拠点に90日の滞在中、第三国へ遠足に行く時など。)ベトナムもビザなしでは、前回の出国から30日経っていないと入国できないようになりました。
当然、正当化が必要となりますが、目的が目的だけに説明が難しそうです。これは長期滞在資格を持っていても同じだと思います。
アジア諸国はましな方で、英国、北米、オーストラリアなど英語圏の先進国は、毎月出入国するだけで、疑われる可能性があります。
結局①とか②の方法は、入国管理の問題があり、あまり現実的ではありません。
③ 入国しないで日本に帰ってきてしまえば、こうした問題は起きません。しかし、とんぼ返りの航空券は大抵正規運賃になります。とにかく乗継いで、できる限り入国しないという工夫が必要です。普通の「修行」では宿泊費用の節約のため、「~タッチ」がはやりましたが、生涯上級会員修行では、出入国を減らすことが目的です。
HND-CTS, CTS-HKG-CMB, CMB-DOH-SOF, SOF-LHR-JFK, JFK-PHX-HNL, HNL-HNDというビジネスクラスの航空券をつなげたとします。往復で2,480 tier pointsになり、理論的には一泊もしなくて済みますが、料金は2,000,000円ぐらいになるでしょう。片道で5日ぐらい必要です。14回実施して、34,720 tier points。あとはNRT-KULの往復を1回で最終解脱となります。140日、28,000,000円ぐらいで可能です。ただし、現在はCTS-HKG便がやや遅い時間帯で、その後の接続があまりうまく行きません。
TPE-KUL-BOM, BOM-HKG-NRT, NRT-TPE(NRT-TPEは数に入れず、往復920 tier points)とか、TPE-KUL-CGK, CGK-HKG-NRT, NRT-TPE(NRT-TPEは数に入れず、往復720 tier points)とかでは、接続は何とかなりそうですが、前者は往復で50万円を38回、後者は往復で30万円を49回搭乗することになります。共に楽々1年以内に終わりますが、それぞれ費用総額が1900万円、1500万円となります。
こういう経路は他にもいくつも探せると思います。
④ 入国を避けるために航空券をいくつも連結するのは、遅延処理のリスクが大きいことも無視できません。いっそ世界一周航空券を買った方が安全かつ、安上がりになるはずです。
世界一周航空券は三大航空連合とも商品にしており、同一連合内の便を乗継ぐ形で構成されます。Star AllianceとSkyTeamは距離別運賃で、FFPとの関係は単純ですが、oneworldでは大陸数別です。したがって経路の組み方によって積算マイルが大きく変わると同時に、tier pointsも変わります。
いろいろルールがあるのですが、滞在との関係で問題になるのはストップオーバー。最低2回は必要です。16セグメントまで飛べますが、大陸数が少ない方が安く、時間もかかりません。日本を起点にすると、
アジアー北米ー欧州・中東ーアジア
と、この逆周りが一番簡単な世界一周航空券ですが、北米単純横断は一度しかできないため、最大のtier points(16 x 140 = 2,240)を得るのは難しいようです。例えば
NRT > HNL-PHX-ANC-DFW-LAX-JFK > LHR-DOH-MAD-DOH-AMS > KUL-BOM-HKG-CGK-NRT
では、一周7~10日ぐらいで2,140 tier points、おそらく70万円程度になるはずです。この場合は、地球を16周して、残り760 tier pointsとなります。残りのtier pointsは別の方法で集めて、総額12,000,000円ほどになるでしょう。
この「地球グルグル」、反復の際に、なるべく重複しないようにストップオーバー地を選ぶ必要があります。
実施は、③と④との組合せでしょうか。いずれにしても合計1200万円以上100日以上必要でしょう。日本在住者に限って言えば、Executive ClubのGold会員は、到達も維持もoneworld中でもっとも容易ですが、Lifetime Goldは別に簡単ではありません。
⑤ 国内便では出入国管理は問題になりません。2,000マイルの有利さは忘れて、ひたすらOKA-MMYを往復しても構わないわけです。クラスJで一日3往復すると146日目に35,000 tier pointsを超えます。片道7,500円として計算すると、航空券総額は6,570,000円です。那覇市内に住宅を5ヶ月借りて、礼金、光熱水料合わせて40万円ほど。必要資金は700万円となります。
これはおそらく一番安くなり、一番頭を使いません。JGC「修行」にも使われる区間ですが、期間の長さと単調さは比べ物になりません。5ヶ月間、毎日沖縄グルグルですから…。
このOKA-MMY、総搭乗距離は154,875マイル。ビジネスクラスで125%積算だとしても194,250マイルにしかなりません。20万マイル以下で到達する生涯Emeraldなのでした。
なお終身Gold会員の要件には、BAの搭乗は含まれません。とは言うものの、いちゃもんをつけられるのも嫌ですから、適当な回数を乗っておく方が良いと思います。