PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

TG641:NRT-BKK ビジネス(その2)

ビジネスクラスでは、出発前の"Welcome drink, sir."で始まり、離陸後ベルトのサインが消えると、amuse-bouche、続いてl'entrée、plat principal、fromages、dessertと、型がしっかりしたコースです。

 出発は20分は遅れ、離陸が11時20分でした。このコースが全て終了したのが13時30分ぐらい。2時間かけた昼食でした。

 

機内食のメニューは、CXやMHと同じような簡素なものです。泰英日の3語で書かれているのは良いとして、デザインは明るくないし、洗練されていないし、高級感はないしと、要改良に見えます。

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形式を意識した食事に対応。ワインは全てフランス産。

Champagne, Palmer & Co. Brut Réserve

Pouilly-Fumé 2013, Pascal Jolivet

Chablis, Champs Royaux 2013

Château d'Aurilhac 2011

Bourgogne Pinot Noir Réserve 2013

というリスト。全て開栓したばかりのボトルが出てきました。

 CDGの免税店でおなじみのPascal Jolivetが機内で味わえるのは、うれしい驚き。少し時間が経つと、グリップと分厚いミネラル感が出てきました。彼のワインらしく、「伝統」と「現代性」の矛盾する要素が渾然一体になり、調和しています。Chablis Champs Royauxは、「言わずと知れた」William Fèvre。これは試しませんでした。BordeauxはHaut-Médocの評判の良いCru Bourgeois。そつの無い仕上がりです。このリストの中では、最も万民向けでしょうか。BourgogneはBouchard P & F。これはフラットでした。若すぎることが一因なので、厚みが出て、「本来の味わい」になるためには少々空気に触れさせる必要がありそうです。

 良く見かけるワインが多いのですが、がっかり感は無いどころか、何となくわくわくするリストです。オセアニア産も載せたら?などとは思いません。

 最近搭乗したMH、AFのビジネスクラスも、全部フランス産のリストだったのですが、それらについては記事でも書いたとおり、諦め気味でした。TGとは正反対です。価格的にも少し上なのですが、印象の違いは圧倒的に違います。この差がどこから生じるのか、自分でもわかりません。

 

ワインの扱いも上々です。供出温度はOK。グラスが小さ過ぎることは今後の課題です。客室乗務員の知識にも、CXやMHと同程度に問題があるのですが、東南アジアの会社で期待するのは少し難しいと思います。

 産地(地方、村、畑)名、品種名、生産者名のどれを指定しても、すぐに対応できるには少し勉強が必要ですが、全ての客室乗務員にやらせるとなると、大きなコストとなります。しかし、客の方で通じる努力をしなくてはならない状況は滑稽です。サービス業としては情けないことですが、TGに限らずアジアでは日系2社を除いてどこでも同じでしょう。アジアの国からみると、日本が欧米の国のように見えるという意見もありますが、こういう点にも現れています。

 

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amuse-boucheは、yakitori。メニューにもそう書いてありますし、串が短いことを除くと、焼き鳥そのものです。ただし僅かにタイの香り(ナムプラー?)がします。タレに隠し味を加えたのではなく、同じラインでいろいろなソースを作った結果、微少量混入したような感じです。

 

前菜とサラダがトレイで出てきます。

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バターの右にあるイルカの口先のような形の容器は、塩と胡椒。底にプラスティックの栓があるタイプですが、塩の方は栓が抜けています。どこか抜けていて、愛嬌があるTGのサービスです。

 サラダもentréeも、野菜は食感がしっかりしていて、一慣性があります。明らかに意識して調理されています。レバーのテリーヌも本物。マンゴーのチャツネが添えてありますが、鴨にフルーツで酸と甘味を加えるのは、かなり古典的。細部にほころびが感じらず、かなり満足できる皿になっています。「皿の見せ方」が華麗になれば言うことありません。

 

Le plat principalは、牛・魚・豚・鶏から選びます。離陸後すぐに注文を取りに来たので、びっくりしました。あまり深く考えず牛にしたところ、ほほ肉の(日本製)ビール煮込みでした。

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日本のビールで煮込んだことが何の売りになるのか、さっぱり理解できなかったのですが、これも見事な一皿でした。野菜のテキスチャは抜群。熱の入れ方、大きさに十分注意して、ある食感を追及していると感じられる野菜は、他ではAFでしか出会ったことがありません。それなりに野菜の繊維が感じられるのはタイ風ですが、これには好感が持てます。同じようにほほ肉も、皿の上ではしっかり形を保っていますが、口の中ではほろりと崩れます。煮込みを見切った感じです。Garnitureがジャガイモである点も古典的。マッシュポテトにして肉と食感を合わせた点も、他の航空会社には期待できない「当たり前の」気遣いです。

 

食器もタイ製。タイ航空用の特注品ですが、かなり良質な磁器です。少し重いので、燃費を下げるのではないかと心配してしまいます。

 

この段階で、日本茶を出してくるのが謎めいています。

 

fromagesとフルーツは同じ皿で出ます。

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青カビはGorgonzolaでしょうか。十分若いのですが、ねっとりして肌理細やかな質感がすばらしい一品でした。Camenbertと思われる白カビも、保管状態が良いのか、肌理細やかさに魅かれます。異文化の発酵食品の扱いは難しいはずですが、うまくこなしています。

 

締めはカシスのムースの載ったタルト。タイのスィーツと言っても、日本のモノに似ています。

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機内食は、呆然としたまま終わってしまいました。「皿の見せ方」には改善の余地があるとは言え、内容はライバルと比べて、頭ひとつぬきん出ていると思います。「機内食なんて単なる暖め直し、うまいはずが無い」という認識を改めました。

 

なお、着陸一時間前ぐらいにこんなものが…。

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冷え過ぎでスプーンが立たないほど硬くなっている某社のようなことはありません。

 

到着は5分遅れの15時50分。やはり直行便は早いと実感できます。17時にはホテルに入れます。夕刻も使えるし、週末バンコク族(?)にはTGが圧倒的に便利ですね。