PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

機内でクルーに嫌われないために

直前の記事では、去年キャセイパシフィック航空の機内アンケートで自由記述を行い、その結果、今年は「特別扱い」になったことを書きました。CXの真意には、2つの可能性があります。

-顧客がさらに面倒な存在にならないかどうか、クルーは注意する

-顧客にさらに喜んでもらえるよう、個別の要望に応える体制をつくった

前者だと、私は迷惑な客になる崖っぷちに立っている訳で、後者だと特別なお客様扱いされています。CXによる評価は180度異なるように見えます。(註1)

 したがって客としては、CXに嫌われているかどうかが大変気になります。しかしながら、これは杞憂だったようです。先日のCX798では

「まだ白は温まっていないので赤を先に出してもよろしいでしょうか。」

と言われ、実際、赤の後に白が出てきました(註2)。さらに機内アンケートもやらされました。

CX798:CGK-HKG ビジネス - バス代わりの飛行機

クルーが、特別扱いの元となった機内アンケートをまた依頼したところを見ると、CXは「機内サービスが改善したでしょう。」とアピールしたいようです。したがって、私は「うれしくない」要注意客ではないようです。

 

(註1)デキる会社だと、この180度異なる2つの施策を同時にとっていると思います。

(註2)アメリカ、特に西海岸では、赤ワインを頼む習慣は、デキる女性のイメージと結びつき、最初から赤という場合もあるですが、白の後に赤を出すというプロトコルは20世紀後半以降、世界中で尊重されています。したがってこの発言は意味深、若いクルーだったのでストレートに言い過ぎてしまいました。ただし、ずいぶん前まで遡ると、赤先、白後が常識だった時代もあります。

f:id:PECHEDENFER:20150802154623j:plain

 

少しほっとしましたが、クルーに嫌われないことは良いサービスを受けるための基本。私も日頃からいろいろな方のブログを読んで、「特別扱い」と会員レベルや搭乗マナーの関係を調べているのですが、会員レベルはともかく、マナーの方は良くわかりません。

 

そこで私の方で自分が注意すべきことを公開することにしました。誰かにご指摘下さればありがたいし、そうでなくても、読んだ方が搭乗時の視点として意識すれば、私の知りたいポイントがブログ記事に現れるようになるかもという期待があります。

 常に実施できているとは限りませんが、気をつけるポイントは以下の通り。

 

(1) 搭乗時の挨拶

営業と同じで、覚えてもらうことが大切。搭乗時に印象付けます。飛行機に乗れることがうれしくて、ワクワクしている子供のような趣きで挨拶すると、クルーが仕事をする気になると思います。したがって、搭乗時は少し演技するぐらいで良いと思います。

 演技ついでに、航空会社の本拠地の言葉で行えばさらに効果的です。客室乗務員は言語に関心が高い人が多く、外国人がしゃべる「外国語」に興味を示す可能性が高いのです。やるなら徹底的に。Lufthansaなら標準ドイツ語(Hochdeutsch)でGuten Tag、Austrianだったらオーストリアバイエルン語(Boarisch)でGrüß Gott、Swissairだったらスイスドイツ語(Schwiizerdütsch)でGrüeziにすべきでしょう。発音はネットでも調べられるので、練習も簡単です。

NRTで乗ってくる客が次々”Grüezi."と挨拶し、ZRHで降りる時は次々"Ade."と言って立ち去るなんて、感涙モノです。

 

またどんな航空会社の利用でも、日本語で挨拶されたら、日本語で挨拶が基本です。たまに間違っていることがありますが、チャンスです。直してあげると、強い印象を残せます。相手は到着するまでは、絶対忘れません。

 

(2) 機内での基準状態

静かに着席、シートベルトを締める。これだけです。つまり、むやみやたらに立ち上がらず、用事は一度に済ますのが大切。客全員がきっちり着席している状態が、クルーにとって最も負担が小さいためです。

 ビジネスクラスからエコノミークラスのキャビンに用があって、立ち入ろうとしたら、制止されたと憤っている報告を時々見かけますが、これはセキュリティの上からあるべき対応です。勝手に別のキャビンに移ってしまうと、監視の目が届かなくなり、安全管理が難しくなるためです。

 クルーがもっとも神経をすり減らすのが安全対策。この点において優等生であることは、嫌われないためにもっとも重要な点だと思います。

 

(3) クルーの観察

忙しい、スタンバイに近い、休憩しているの3段階で考え、どの状態にあるか把握しておきます。特別に物事をお願いする時は2番目の状態が前提です。免税品の購入も販売ワゴンが巡回している時以外は、気をつけなくてはなりません。もちろん緊急時は別で、必要があれば、大騒ぎしてでもクルーに来てもらう必要があります。

 

(4) 返事の工夫

飲み物や機内食の選択をする時に、何か短い一言加えると良いかもしれません。単調な返事ばかり聞いていると飽きます。もちろん困らせたり、忙しいのに時間をとらせるようなことはご法度です。

 

(5) 礼儀正しく

サービスを受けたらお礼、通る時に邪魔になったり、作業を中断させるようなことになったら謝罪を述べる。特別に物を頼む時は一段と丁寧に。これら当たり前のことを当たり前に行うのはとても大切です。育ちの良い人に見え、そういう人にはサービスが良くなる可能性大です。「育ちが良い」と「お金がある」は、強い相関を持っているためです。もちろん礼儀正しく接されることは、尊重されている証拠ですから、単純に嬉しいはず。この効果も無視できません。

 

(6) コミュニケーションの機会を最大限活用

上級キャビンに搭乗したり、FFP上級会員になったりすると、クルーと会話をする機会が増えます。こういう機会を有効活用しない手はありません。一つ一つ経験を積み重ねると、サービスの特徴も見えてくるし、クルーの方にもやりやすい客になるはずです。徒手空拳のエコノミークラス搭乗だと、免税品の購入がチャンスです。

 いずれにしても会話の取り掛かりは難しく、多くの引き出しを普段から用意することは欠かせません。

 客と会社との関係では、アンケートも積極的に行った方が良いようです。5-10回ぐらいの搭乗で効果が出るわけではありませんが、地道に続ければ事態は変わってくると思います。

 CX9diaさんから頂いたコメントにもありましたが、キャセイはコミュニケーションをとった方が良い会社のようです。しかし、これはキャセイに限ったことではありません。特にFFP会員の積極性は良い結果をもたらすようです。

 

(7) 降機時に挨拶

搭乗時の挨拶に比べ、バリエーションが出てきます。何も無い平穏なフライトだったら、単純にGoodbyeとかAu revoirとかになります。何か特別なことを頼んだり、明らかに気を使ってくれたクルーが立っていたら、礼を述べることは欠かせません。機内で会話を交わしたクルーがいたら、少し工夫が必要です。例えば羽田到着のAF便でチーフパーサーに世話になっていたら、"Je vous souhaite un bon séjour à Tokyo."などとさらりと加えると恐縮されます。

 礼儀正しく、気品ある振舞いをする顧客は、レガシーキャリアにとって財産になるはずです。伝えられる範囲でしか知りませんが、大陸人のマナーと大陸の航空会社の現状を見れば、この意味は明らかです。落とす金で上客になれないなら、良い客層の一員として上客になるしかありません。

 

(8) 日頃の訓練

スポーツ選手が基礎トレーニングを欠かせないのと同様、旅行のため普段から意識して言語能力を磨く必要があると思います。日系の航空会社以外の国際便では、大抵英語が必要ですから、普段から英語に接しておく、使えそうな気の利いたフレーズは覚える(お笑い芸人のネタ帳のごとく記憶)などの努力が有効です。他言語を利用する場合も同様です。これは日本語を含みます。

 さらに利用航空会社の言葉の価値は高く、言葉が使えると、利用できるサービスは増え、クルーのサービスは間違いなく良くなる他、他の人には見えない良さがわかるようになります。

 しかし実際にはかなり困難です。例えばキャセイ搭乗は旅行ブログ、航空ブログでよく記事にされますが、キャセイ搭乗のため粤語を習得するなどというブログは見たことがありません。語学学習自体もブログの材料としては悪くなく、両方の世界を持っているとネタ切れも起きにくいので、考えてみれば不思議です。

 

誰か本格的に開始しないでしょうか。「スイス航空ファーストクラスを求めて:3年間のマイル積算とスイスドイツ語学習」みたいなブログを。

f:id:PECHEDENFER:20150802155236j:plain