10月5日のエールフランス地上職員のストは、運航にはほとんど影響がなかったようです。極東から見ていると「やれやれ」というところですが、フランスでの視点はかなり異なります。
Air Franceのトップ(PDG)のFrédéric Gageyは、10月5日のCCE(comité central d'entreprise-中央企業委員会=従業員代表委員会)においてplan Bの詳細を発表しました。その内容は
・2,900人の従業員削減(パイロット300、客室乗務員900、地上職員1,700)
・22路線の便削減(2016年)
・6路線の季節便化
・5路線の廃止(2017年。インド便、東南アジア便。)
・保有機材から14機の削減(2017年夏までに。A340全廃とB787の発注取消。)
というところです。
Air Franceの活動および資産から、収益、採算に対して有害な方から10%削減するというのがベースになっているようです。ロードマップが描かれており、3%が2016年、7%が2017年に実行されます。
機材の構成については、私も最近「リストラが進んでいないじゃないの」と記事にしたばかりです。
機材の推移にみるエールフランスのリストラ - バス代わりの飛行機
これから2年で少し削減・交代が進むでしょう。
10月5日に予定されていたストは、この委員会の開催と当然関係があります。なおplan Bは英語と同じで、「○○○が無理なら、xxxするしかないね。」という代替策です。AF-KLMグループのPDGはFrédéric Gageyとは別で、Alexandre de Juniacというフランス人。
上記のplan Bは、さまざまな新聞で報道されています。例えば
Le détail du « plan B » d’Air France
どの記事でも、労使間の緊張がこれまでになく高まったと報じています。フランスの国情を考えると、こんなポスト削減をするなら当然です。今回ニュースバリューが高かったのは、この発表によって暴力事件(=労働者側による小規模な暴動が原因)が起きたためです。DRH(directeur des ressources humaines-人事責任者)のXavier Broseta氏は哀れなことに、労働者に着衣を剥がされ、上半身裸で逃げ回ることに。
Air France : le gars à côté du DRH torse nu sur la photo, c’est Abdel - Rue89 - L'Obs
ビデオでも報道されていますが、日本だと久しく見られない労働闘争の光景です。フランスではこういう労使対立に起因する「暴動」は時々起きます。あまり日本には伝わってきませんが、示威行動や労使対立は、近隣諸国の持つ典型的なフランスのイメージ。
しかし今回の事件に関しては、Air Franceのイメージを傷つけたという論調があちこちで見られます。労働運動は、連帯感から大目に見られるのがフランス社会ですが、Air Franceに対しては厳しい視線が注がれているようです。
あまり対立が続くと、会社整理が現実になります。Manuel Valls首相もパイロットの責任として「AFは進化しない限り、危機から抜け出せない。会社というものが消えうることは皆知っている。」とまで言っています。昨年9月のパイロットのストが契機になって、「欧州で最も高い給与レベルで最も少ない労働時間」という社会での評価が定着、「面の皮が厚すぎて呆れる」から、「消滅やむなし」という世論に変わってきているようです。
航空会社の危機で心配になるのがマイレージプログラム。日本でもFlying Blueのアカウントを持っている人は数多くいるはずです。Flying BlueはKLMのプログラムでもあるので、FFP自体はJALの倒産時よりもさらに安全だと思います。一方、路線削減の影響はありそうです。NRT-CDGは廃止なんてこともあるかもしれません。
AFは結構振替えを行います。以前、羽田国際化に際して、発着枠は確実、諸制限がはっきりしない期間が長々と続いた時、NRT便も運行ダイヤが定まらず、東京-パリ便ではKL便(AMS経由)を数ヶ月にわたり売っていたことがあります。AF便を予約した場合、もし運航停止になっても、KLMにはすぐ振替えができるし、それが一杯ならAZ、それでもダメならアメリカ経由のDLという振替えをやると予想しています。たとえ会社が困難な状態に陥ったとしても、日本の利用者には大きな問題は起きないと思います。