ワインの説明は難しいですね。試しに書いてみると、ひどい出来です。
ワインスクール代わりの飛行機(その2):ANAのビジネスクラス - バス代わりの飛行機
そのまま残しておきますが、これをさらりと読んでわかる人はいないと思います。最初は軽くと思い、適度に身近なアルザスを選んだのが敗因です。
ある地方のワインへの傾倒は、言語、交友関係、歴史や文化の理解の全てがべったり付いてきます。南の国の女性と結婚すると一族郎党がおまけについてくるような感じでしょうか。どちらが卵でどちらが鶏か知りませんが、私の場合はそうなります。彼の地で常識的なことが問題で、背景の説明も加えようとしてドツボにはまる失敗の黄金パターンです。何たることやら。
標準語をしゃべている大阪人に、大阪の話を振ると関西アクセントがもどるのに似ています。
ということで、今回はあっさりキャセイパシフィックを俯瞰します。ワインリストです。
最近クーリングオフ状態で、キャセイに乗ってません。ごめんなさいキャセイ。縁切りしたわけではありません。今年後半は乗ります。予約もちゃんとあります。
2014年から2015年にかけての1年半の間の搭乗から、持ち出したワインリストを丹念に見てみました。まず構成は、
泡1、白2、赤2、デザートワイン1
で不変。ビジネスクラスの基本形にデザートワインが加わっています。サービスが良いということです。
内容は、個々のワインの銘柄に入れ替わりがあるものの、
①泡:Champagne
②白:Bourgogne
③白:New ZealandのSauvignon Blanc
④赤:France (BordeauxまたはBeaujolais)
⑤赤:AustraliaのShiraz
⑥デザート:Vintage Port
とかっちり決まっています。機内サービスの大きな見直しがない限り、おそらくこのパターンなのでしょう。
詳しく見ると、
①泡枠は下の2つのどちらか。
生産地:France> Champagne,品種:Champagneの規定7品種*,生産者:Billecart-Salmon,他の名前:Brut
生産地:France> Champagne,品種:Champagneの規定7品種*,生産者:Henriot,他の名前:Blanc de Blancs
*規定7品種:chardonnay, pinot noir, pinot meunier, arbane, petit meslier, pinot gris, pinot blanc
②白枠は下の3つのどれか。
生産地:France> Bourgogne> Saint-Véran,品種:chardonnay,生産者:Pierre André
生産地:France> Bourgogne> ,品種:たぶん主にchardonnay,生産者:Buxy組合
他の名前:Tête de Cuvée
生産地:France> Bourgogne> Viré-Clessé,品種:chardonnay,生産者:Chanson
他の名前:Réserve du Bastion
③白枠はほとんど指定席。
生産地:New Zealand> Marlborough,品種:sauvignon blanc,生産者:Spy Valley
④赤枠は下の4つのどれか。
生産地:France> Beaujolais> Fleurie,品種:gamay,生産者:Paul Sapin
他の名前:Cuvée Prestige, Les Chambards
生産地:France> Beaujolais> Morgon,品種:gamay,生産者:Louis Jadot
他の名前:Château des Jacques
生産地:France> Bordeaux> Haut-Médoc,品種:規定品種*,生産者:Château Hanteillan
生産地:France> Bordeaux> Grave de Vayres,品種:規定品種*,生産者:Château Cantelaudette,他の名前:Cuvée Prestige
*規定品種:cabernet sauvignon, merlot, cabernet franc, malbec, petit verdotなど
⑤赤枠は下の3つのどちらか。
生産地:Australia> Barossa Valley,品種:Shiraz,生産者:Dandelion Vine Yards
他の名前:Lionheat of Barossa
生産地:Australia> McLaren Vale,品種:Shiraz,生産者:Zonte's Footstep
他の名前:Chocolate Factory
生産地:Australia> McLaren Vale,品種:Shiraz,生産者:Fox Creek
⑥デザート枠は指定席。
生産地:Portugal> Port,品種:規定29品種,生産者:Dow,他の名前:Late Bottled Vintage
なお、同じワイン名でも異なる収穫年のボトルが出ています。キャセイが同じ業者から毎年仕入れているのでしょう。
なおワインは、生産地、品種、生産者で特徴づけられ、値段帯も決まります。収穫年記載がある場合は、その値段帯の中で変わると言って間違いありません。したがって、この3要素を抑えることが第一。これは、ワインを注文する時も同じです。キャセイの機内で注文する場合、通じやすい名称を赤字で示しました。青字は注文ではやや通じにくい名前。
ワインの名前が分かりにくいとか、勉強が必要なのは客室乗務員も同じ。なお生産地名で注文する場合、赤か白かを言い加えるのが普通です。その産地で片方しか有名でない場合は、もちろん別。Meursaultとか、Puligny-Montrachetと言って、赤ワインを期待するのは無理ですし、Beaujolaisという黒板の殴り書きを見て、白ワインを連想してはいけません。
なぜこんな基本的なことを書くかと言うと、これらのワインが(キャセイに)どういう風に認識されているかよく表れているからです。
赤も白も性格が違うもので構成されています。しかし世界的に見たら入手しやすく、代表的なカテゴリーのワインです。sauvignon blancでもBourgogne産は無いし、もしAustralia産のgamayが好きだったとしても、登場は期待できません。
赤、白にそれぞれ2種類の「味」を用意したのは、食事を考えてのことでしょう。ビジネスクラスのワインリストは、機内食と合わせて供するための最低条件で構成されています。またワイン名を見るだけで、かなりのレベルまで特徴がわかりますが、価格的にはそれほどでもありません。街で購入して1本2,000円前後でしょう。(Champagneを除く。)
ビジネスクラスのワインリストは、ミニマリズムというか、ある意味潔く、選者の性格も出ているので、相当呑む人でも興味深いのではないでしょうか。