PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

ワインスクール代わりの飛行機(その6):キャセイパシフィックの復習

さて次は復習。機内で出会ったワインを地上で探すこともできます。意外に大変です。東京で探しても、同一ラベルは売りに出ていない可能性が高いでしょう。また同じワインでは、知識も体験もほとんど広がりません。「このワイン、くさやの干物を炙ったものに合うはずだと思ったんだよね。」とか、「パパ、この間出張しただろ。機内で見つけたんだけど、とても良かったから、お前も飲んでみたらと思って...そろそろワインのことも少し知っておかないとならんだろうし...。」みたいな場合以外は、同一にこだわる必要もないでしょう。

 

そこでターゲットを変えます。収穫年違い、生産者違い、あるいは生産地違いなど、機内のワインと少しだけ異なるワイン。これはかなり見つかります。この「少し違う」が、知識の拡大に役立ちます。

 キャセイのワインリストの②枠、Bourgogne白の一つは、生産地がSaint-Véranで生産者はPierre Andréです。

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これに対して、

・同じ生産地、異なる生産者のワイン

・異なる生産地、同じ生産者のワイン

のどちらも見つかりました。まずは生産者違い。

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収穫年2013年。1,900円ぐらいです。これはBeauneの著名な生産者、Joseph Drouhinの手によるもの。Saint-Véranの地を深く知るための復習という位置づけ。

 

ちなみにJoseph Drouhinは、Beauneの城壁内にオフィスを構えています。ファサードはこんな感じですね。

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CX261でCDG(Terminal 2A)に着いたら、とことこ歩いて空港のTGV駅へ。そこからTGVでLyon Part-Dieuまで一直線。TERに乗り換え、Beaune到着は11時か13時。駅から、徒歩15分ぐらいです。

 

さてDrouhinのSaint-Véran。スクリュー・キャップなので、コルク臭の心配はいりません。明るい黄色。足が長く、レモン、ライム、青草。花の香りはアカシアでしょうか。カリンやライチの香りもします。口に含むとなめらかでボリューム感があります。ヘーゼルナッツの香りが加わります。ニュアンスに富んでおり、口の中でいろいろな味わいが出てきます。表情に奥行きがあって、飽きません。酸は乗っていますが、余韻は長くありません。少し若いと思います。というのも、開栓後少し経つと、グリップが出てきます。

 キャセイの機内で味わったPierre Andréの方が、淡麗、繊細かもしれません。どちらも気に入りました。

 

次に生産地違い。Pierre Andréという生産者をさらに理解するための努力。あちこち探したのですが、見つかったのは、これ。

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2012年の赤ワインです。広域名ですが、ブドウ自体はAloxe-Corton, Pernand-Vergelesses, Savigny-les-Beaune, Ladoixあたりで採れたものでしょうか。そんな味わいです。2,000円ぐらい。

 

Pierre Andréのオフィスは、Aloxe-Cortonにあります。Beauneから北東へ10 kmほど行ったところで、D974をDijon方面へ向かう通るバスが日に10本ぐらいあります。こちらも大きなメゾンです。Beauneもいい加減田舎ですが、Aloxe-Cortonは住民が170人ほど。村というより集落に近いので、訪問はコンタクトを取ってから。

 

色は美しいルビー。中心部は黒色。平均的な照りがあります。鉛筆の香りにカシス、サクランボなどの香りが特徴的。口に含むとタンニンがまだまだ若く、少し収斂性があります。赤スグリ、乾燥したバラのような香りがします。余韻は短めです。2杯目から、Aloxe-Cortonの地に特徴的な、咬めるような感じが出てきます。タンニンも丸くなっています。いろいろな野の果実も、ジャムのような香りに変わります。慎み深いワインです。2時間も経つと、芯に硬さを感じる小さく凝縮したような酸を感じ取れます。古典的なブルゴーニュですね。3時間後には、香りもかなり変わり、肉感的な味わいが表れます。ゆっくり変化する品の良いワインです。

 

Pierre Andréは、おそらく白の方に人気がありますが、赤もとても良いと思いました。少し単純に言うと、一杯目でわかりやすい派手さがないと試飲で不利で、評論家は高く評価せず、その分値段は上がりません。そういうお買い得ワインでした。

 

さらに探したところ、④枠のLouis JadotのBeaujolaisも見つかりました。同じマークの品種違い。Château des Jacquesは、Louis Jadotが保有するBeaujolaisの物件で、88 haに渡る異なる畑を有します。Beaujolais地区における自社畑というところです。

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しかしこれは白なのですね。Beaujolaisの白は、基本的にChardonnayで作るため、値段も上がり3,000円。赤だと、こんなものも転がっていました。

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こういうのは全く格が違うので、機内のワインと比べることにどれだけ意味があるかわかりません。

 ビジネスクラスの機内ワインや類似ワインを地上で探す場合、値段が判断材料になります。東京で購入する場合、大体2,000円~3,000円だと思ってよいでしょう。1,500円ぐらいのものや、4,000円するようなものもありますが、地上でのワイン探しには2,000円~3,000円を目安にするのが良いのではないかと思います。

 

さてキャセイ編は一区切りつけます。ワインリストの性格、機内食との相性、事後の復習と、意外と世界が広がりますね。テースティングなんて生産者の前以外では、ほとんどやらないので疲れます。一方で普段、どれだけ雑に飲んでいたかわかりました。

 キャセイパシフィックは、ワインに関しても個別対応してくれるので、搭乗がかなり実のあるものとなります。次回の搭乗後も取り上げる予定です。