PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

ワインスクール代わりの飛行機(その11):英国航空ファーストクラスのリスト

残りは赤ワイン3種とデザートワイン2種。5本が同じページに載っています。

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赤の筆頭は、私も機内で注文したSaint-Emilion。説明の下の方にRobert Parkerが高得点を付けた旨、書いてあります。説明を最後まで読まなかった私も悪いのですが、一口で飲み飽きるワインで、一杯飲み干すのは大変でした。こういうワインを好む人もいるので、Gironde右岸は気を付けないといけません。

 2番目は、New Zealandからpinot noir。産地はCentral Otago。すでに成功しているMarlboroughに飽き足らない生産者・消費者を惹きつけている産地ですが、NZに無知なPechedenferはよく知りません。NZのワインはイギリスで特に人気が高いようで、BAならそれなりの考えで選んでいるでしょうから、こちらを試すべきでした。

 3番目は、PiemonteのGajaがToscanaで生産しているワイン。言わずもがなのことですが、このイタリア2大産地はライバル同士。山の農民のPiemonte人が大商人と貴族文化のToscanaを意識しているという方が正しいと思いますが、Piemonteの盟主GajaがわざわざToscanaでワイン造り。そういう意味でも面白い存在です。もっともGajaがワイン法による品種規制を嫌っていることは明らかで、アメリカ市場で大成功をおさめているSuper Toscansの土地で別種の事業を行いたくなったのでしょう。こういうワインには、あまり関心がありません。

 デザートワインは、フランス南西部の自然の甘口とヴィンテージポート。イギリス人に馴染み深いポートは、説明が1行。ありふれている物は簡単な扱い。乗客も乗務員も生きた知識を十分持つので、長々とした説明は品位に欠けるのかもしれません。

 Cabidos 2011, Petit Mansengの方は機内で試しました。非常に魅力的なワイン。オタク向けというほどではありませんが、やや珍しい代物です。

 

さてビジネスクラスと比べて、種類が多いことはすぐ分かります。泡が3、白が3、赤が3、デザートが2です。ビジネスクラスの倍です。機内で全部を試飲するのは、無理があります。

 次に価格帯は明らかに上です。白のMontlouisの価格ならビジネスクラスでもおかしくありませんが、その他は2倍から4倍といった線です。ただファーストのキャビンですから、高価なワインという理由で喜ぶ客は例外的です。

 

重要な点は、ほとんどのワインがビジネスクラスで出されるものより、はるかに個性的だということです。これには2つ理由がありそうです。第一に、ワインは高級になるほど個性的になるという傾向が強いためです。万人に愛されるワインは、そもそも存在しないと開き直るしかありません。

 第二の理由の方が重要ですが、ファーストクラスではサービスに「驚き」が必要なためです。ワインを「嗜む」客を想定せざる得ないキャビンです。機内食に合わせたバランスの良いワインでは、退屈なのです。そこでセレクションに工夫をして、客を喜ばせる必要があります。高価格をキャビンの魅力にするのは難しいのですが、これはファーストの客を驚かすためには相当な代物を出さざるを得ず、そうしたものは安定供給できません。泡のMarion-BosserやDuval-Leroy、白のEnvoy、赤のGaja、デザートワインのCabidosなどは、価格はそれほどでもありませんが、役回りには十分です。

もちろんこれらが個人的にありふれたワインである可能性は、いつも付きまといます。しかしこれらのワインが全て退屈と感じるようだと、もうワインには関心が無くなってきているのでしょう。プロだとか、非常に経験豊富なアマチュアだとかです。

 

勉強には体系が必要ですが、これだけ個性的になると、世界を知るには相当な数のワインを挙げる必要があります。そういう点から、ファーストクラスは学習には向いていない気がします。このキャビンでは、体験を求める方が良さそうです。しかしそれが貴重な体験かどうかは、ワインに嗜む層でないとわかりません。そして何が貴重な体験かは、個人によって変わります。これはワインに限りません。

 逆に言うと、BAがどういう点に気を配ってセレクトしたのか、想像できないと貴重な体験に出会う可能性が低いでしょう。「客を選ぶ」と言えば、ファーストクラスの宣伝らしくなりますが、翻訳すれば、「サービス提供のさじ加減が難しい」だけのことです。ファーストクラスはいろいろな点で制約が少ないので、考えなくてはならないことが多そうです。

 

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今選ぶなら、泡とデザートワインは前回の搭乗の選択で正解、白と赤はNZにすべきでした。私は意識せずフランスのワインばかり頼んでいたのですが、少し疲れていたのかもしれません。せっかくの機会を逃し、もったいないことをしました。体調、気分によって選ぶワインは大きく変わりますね。認識を新たにしました。