PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

ワインスクール代わりの飛行機(その14):タイ航空ビジネスクラスのシャブリ

さて復習は、Chablisをテーマにしました。William FèvreのChablisは入手が易しいからです。

 

タイ航空シャブリはこちら。

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機内のワインは2013年で、これは2014年と収穫年違いですが、都内で特に割引の無い価格で2,850円でした。ファインズが輸入。

 

彼らのウェブサイトには載っていませんが、実はWiliam FèvreのChablisは3つあります。一番シンプルな素シャブリがこれ。同じ2014年です。

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これも同じ店で2,650円とほとんど同じ価格。つまりどちらかが上級キュベというほどでもありません。サントリーが輸入。

 

最後の1つはDomaineもの。ファインズが輸入。

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収穫年が2013と古いのは、domaineものだからでしょうが、比較がやや困難です。同じ生産者の異なる商品をテストする時、この問題は常に付きまといます。これは3,000円。

 

値段の差がほとんどない3種。中身がほとんど同じなんていう可能性もあるので、3本同時に開栓。水平試飲してみます。

Bourgogneは、中身が同じでラベルが違うとか、中身が違ってラベルが同じということが良くあります。ごまかしや不正ではなく、いろいろな習慣や制度がこういうことを起きやすくしています。

 

一日目

素シャブリ。

 色は明るい黄色にやや緑が混ざるというシャブリの色。レモン、ゆずなどの香り、酸は中庸。すっきりした辛口と言うか、シャブリ特有の余韻。名前から期待されるワインそのもので、それ以上でもそれ以下でもない、個性を否定するような印象を受けます。時間がたつと、トーストのような香りが出てきて、酸も強く感じるようになります。3つの中で最もストレートに酸が出てきます。

 

タイ航空シャブリ。

 色では素シャブリと区別がつきません。ただし足が長く、きれいです。麦わら、レモンの香りが強く、素シャブリとはっきり異なります。他は柑橘類などの甘い果実系。軽やかなボディに酸がしっかり乗っているワインで、余韻は普通。時間がたつと、アロマはさらに強くなり、火打石のような香りも出てきます。ミネラルを強く感じます。さらに時間がたつと全体にまとまりが出てきます。Kimméridgienらしい乾いた余韻を楽しめます。

 

Domaineもの。

  やや色は濃いかもしれません。柑橘類、レモン、メロンなど瓜系の果実の香りが特徴的です。なめらかでミネラルの強さを感じます。酸はきれいなのですが軽やかで、それほど強く感じません。3つの中では最も複雑です。余韻は長くはありません。「切れ味が良い」シャブリらしい余韻です。一方で、chardonnayワインとしての上質さを持っています。時間たつと、レモンの香りが引っ込み、酸が尖ってきて、シャブリらしい展開になります。

 

二日目

素シャブリ。

 Bourgogne chardonnayに典型的なアロマに変わります。クルミの香りも少し混ざります。堅牢な骨格に強い酸が重なるのですが、口当たりはまろやかで、良い余韻を持ちます。消費者に媚びず、ある種の近より難さを感じさせるワインです。フレッシュで清潔な造りですが古典的なシャブリ。

 

タイ航空シャブリ。

 レモンとゆず、麦わらの香りは続きます。素シャブリと比較してこのワインに上乗せされた香りは、1日目は華を添えていたのですが、それが劣化して足を引っ張っています。えぐ味を少し感じます。口当たりは少しまろやかになりました。時間の経過とともに、いろいろな要素を感じる間が短くなります。酸は相変わらず悪くなく、シャブリの特徴ははっきりしていますが、取り立てて関心を引くようなワインではなくなってきています。

 

Domaineもの。

 大きく変わりました。このワインだけミレジムが違うからしれません。香りの強さは、柑橘類>瓜系>レモンに変わります。シャブリらしく近寄りがたい酸が顕著です。さらに時間が経過すると、瓜系の香りが青草の香りのようになってきます。酸は相変わらず上質で特徴的。最初は何のワインかわからなくても、余韻の部分ではっきりシャブリだとわかるでしょう。

 

三日目

素シャブリとタイ航空シャブリはかなり香りが衰え、味わいが全体的に痩せてくるのに対して、Domaineものは2日目とあまり変わりません。それでも3本とも、それぞれの酸と余韻の性格がよく保たれており、さすがだと思いました。

 

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「シンプルシャブリ」の比較試飲なんて、プロでもなければやらないでしょう。一級畑の水平試飲やLes Closの垂直試飲ならワイン会も開けますが、ただのシャブリ3種を呼び物にして誰が来るでしょうか。ある意味で貴重な体験でした。意外に違いが大きく、シャブリに対する認識を改めることができました。

 

同じ風景を描いた絵画が3枚あったとします。いろいろな違いがありえますが、

1 絵具が違う、2 方法が違う、3 描かれた時刻が違う、4 季節が違う、5 画家が違う

の中で、この3種のシャブリの違いを例えるなら、1になるでしょうか。個人的には、一番安かった素シャブリが一番気に入りました