PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

優先される者よ、汝の名は

優先搭乗シミュレーション

ANA上級会員。バンコクから東京に帰ります。ANAが満席だったので、タイ航空になりました。同じスターアライアンスなので、迷いません。

 優先搭乗の開始です。ビジネスクラス客、Royal Orchid PlusのPlatnium、Gold会員、Star Alliance Gold会員(*G)が呼ばれます。タイ語、英語、日本語でアナウンスされますが、ドメ専門SFCではないので英語で動きます。

 四方から搭乗口に集中する該当者。ゲートでは行儀よく交互に通っていきます。別の客とかち合います。どちらが譲り、どちらが先に通るべきでしょうか。搭乗客の序列化に熱心なスターアライアンス。共通規則がなくてもプロトコルの必要性を感じます。

 *Gのエコノミー客だったら、ビジネスクラス客が先だとか、ANAのDiamond、ROPのPlatinumなどの上位*Gは、ビジネスクラス一見客より優先だとか、この際、客にも推奨される順番を示してもらいたいものです。その方が混乱も少ないでしょう。こう考える会員もいるかもしれません。

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しかし、何か忘れていませんか。婦女子は男性に優先するという、世界に広く薄く浸透する規範です。レディーファーストは、優先搭乗のどこに割り込むのでしょう。

 

レディーファースト

日本人はこの習慣が苦手とされます。このことは、エセ〇〇人や✖✖かぶれが好きな「外国賞賛=ニッポン人ダメ論」としては古典に属します。実際のところ、優劣の議論は時間の無駄です。レディーファーストは、日本の外でも普遍的な習慣ではありませんから。

 

価値は否定しますが、Pechedenferはこの習慣には抗せません。

”Les femmes sont plus durables que les hommes. Pourquoi sont-elles traitées plus attentivement?(女の方が男より長持ちするのに、どうしてより注意深く取り扱うのか。)"

などと、茶化するのは危険です。実施しているかというと、実施しています。いつもではありません。最近、濃淡があることに気づきました。国籍によって実施の程度が異なるのです。無意識に人種差別しているのかとも疑いましたが、どうも違います。

 

公開すると、以下のような感じです。年齢はあまり関係ありません。

 

(グループA)一部の例外を除いて無視

日本人、韓国人、(一部を除く)中国人

 

(グループB)その女性の振舞いが上品だったら、実施

台湾人、上海人<香港人<フィリピン人、ベトナム

 

(グループC)その女性の振舞いが普通の文明人だったら、実施

タイ人<インド人<マレー人、インドネシア

 

(グループD)実施が基本

ロシア人、北欧人<ドイツ人、英国人

 

(グループE)やらないと怖いので実施

フランス人<イタリア人、スペイン人

 

おまえ、いちいち国籍チェックしているのかと言われそうです。調査しているのではなく、後で判明した例を総合すると、レディファーストの「無言の強制」レベルが異なることに気づいたということです。

 他にも、機内での通行とか、(レディーファーストとは少し異なるけれど、根は一緒の)荷物の上げ下げの手伝いとか、いろいろな場面でひょっこり顔を出す序列です。

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社会習慣と個人の空気

整理して気が付いたのですが、この序列はレディーファーストが幅を利かせる社会の序列と一致していないでしょうか。

 例えばイスラム教の社会は、婦女子優先が徹底しています。中東の航空会社では、奥さんは上位キャビン、旦那はエコノミーというパターンをよく見かけます。中東では家族なしに女性が外の男性に会うことはありませんが、東南アジアのイスラム教国では、社会で活躍する女性も多く、当然一人で旅行もします。しかし依然として、女性と子供が守られる対象である社会には違いありません。

 レディーファーストを自然に受けられる人は、普段から守られ慣れているのですね。

 欧州でもレディーファーストの徹底には濃淡があります。地中海世界に比べると、ゲルマン人の社会は明らかに適当です。

 

空港では、相手の雰囲気に反応しているようです。女性がホームグランドの習慣を空気としてまとっているのでしょう。

 

こうしてみると、

・人は自分の属する社会の習慣を身にまとっていて、それは外から感じ取れる程度である。

・国際空港では、non-verbal communicationが意外と幅を利かす。

・レディーファーストは、エスカレーターの片側を空けるかどうかと言うような、限られた社会の規範に過ぎない。

と結論できそうです。

 

優先搭乗で習慣の読み違えがあっても、出会い頭の衝突が起きる程度。大したことはありません。

 

婦女子は優先すべきか

レディーファーストが普通の社会は、そうでない社会より男女の役割が明確です。地中海沿岸の国々が、北ヨーロッパよりマッチョというのはステレオタイプの定番。こうした社会は自己実現が難しいとか、個人の能力を十分生かせず、社会の損失になりやすいとかいう欠点もあるのですが、それは分けて考えるべき話。搭乗客には、社会習慣が衝突すると、割り込み程度の障害になるという事実認識が大切です。

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空港でのレディーファーストは、異なる社会で生活している者が出会った時、どちらのやり方で対処するかという問題に過ぎません。背後にある事情を考えると、進んだ社会の習慣という訳でもありません。北東アジアの人間なら、男女とも無視して構わないはずです。もちろん良いマナーを心がけるなら、相手を読み、相手が親しんだやり方をとる方が良いに決まっています。non-verbal communicationに敏感になることは、損にはならないと思います。