機内や空港ラウンジのワインを気に入ることがあります。それなりに選ばれた品ですから、スーパーで闇雲に買ったワインより「うまい」可能性が高いのは、ある意味当然。その喜びを他人と共有するとか、自分で再び味わうためには、ワインが何であるか記録しなければなりません。そして入手する方法を持っていないといけません。
情報の記録
ワインの知識がないと自認する人でも、記録は可能です。充電されたiPhoneがあればOK。ラベルの写真を撮るだけです。機内サービス中で難しければ、ワインリストを撮影。ラベルが読めないとか、情報が分からなくても、店に行けば喜んで「何か」探し出してくれます。
「ラベルが読める」人が周囲にいると、状況は随分良くなります。というのは、同一ワインを別の土地で探すのは、非常に難しいのが普通だからです。すると類似ワインを探すことになります。それで十分追体験ができることもあるし、別の目が開くこともあります。同一ワインが居住地周辺で見つからないのは、それほど残念なことではありません。ただし店員は店のワインを売るのが仕事ですから、やや無理があっても強く勧めてきます。「ラベルが読める」友人なら、喜んでワインの説明をしてくれます。そしてこういう条件で探すと良いという事前のアドバイスもくれることでしょう。アドバイスが適切かどうかは難しい問題を孕みますが、少なくとも店の商売気を緩和する効果があります。
ワインの基本情報は、
(1) 産地(細かければ細かいほど良い情報。)
(2) ブドウ品種(表示がないことも。)
(3) 名称
(4) 生産者(中身に責任を持つ人。耕作者と醸造者が異なることも。)
そして以上が明らかな場合、
(5) ブドウの収穫年
というところでしょう。これらを読めることが「ラベルが読める」、「ワインリストが読める」ことだと言って差し支えないと思います。
(1) ~ (3)は相互に規定する場合があります。Chablisが良い例です。これは産地名ですが、ワインの名前にもなっています。この名称を使うためには、Chablis地区で収穫されたChardonnayブドウを100%使わなくてはなりません。Chablisとあれば品種も規定されてしまいます。したがって、(1), (4), (5)が「ワインを同定する」表示となります。
同じ生産者がChablisを何種類も出していることがあり、その場合は区別するために名前を付記しています。
同一ワインが無い場合、大抵は収穫年で妥協します。Pechedenferなら、むしろ積極的に別の年のワインを探します。同じ風味を求める場合、年の次に妥協できるのは生産者でしょう。
ワインの作りが特徴的なら、同じ生産者でブドウ品種を変えるとか、産地を変えてワインを探すというのは、楽しい作業となります。もちろんワインの性格が変わってきます。
詳しい友人なら、問題のワインに特化して、こういうことをいろいろ説明してくれるでしょう。さらにどこに行けば、これこれが入手できるというアドバイスまでしてくれると思います。もっと有難い友人なら、自分のカーブから類似ワインを出して、ご馳走してくれるかもしれません。持つべきものが友なのは、ワインの世界でも同じです。
どこで入手するか
さて記録はあるものの、丸腰で店に行くと危険なのは説明した通りです。本意ではないワインを買わされる羽目になります。一番良いのは気心知れた酒屋を持つことだと言われます。これはワイン生産地で、土地のワインを探すなら真理でしょう。日本では日本酒や焼酎ならかなり有効でしょうが、ワインとなるとあまり正しくない気がします。
すると品ぞろえが良いショップということになります。インターネットでも、信頼できる業者、良心的な業者なら問題ありません。しかし実店舗の方が、信用できるかどうか雰囲気で判断できるので、購入店を探す場合は簡単だと言えます。
百貨店は敷居が低いのですが、東京の百貨店は自前で管理しないところが増えています。その代り入居店舗として進出しているのがエノテカ。どこの百貨店でも品ぞろえが同じになってしまいつまらない事態ですが、仕方ありません。ちなみにエノテカ自身も昔から大型店を持っています。
ワインショップ・エノテカ広尾本店 〒106-0047 港区南麻布5-14-15
松屋、三越、小田急、東急は、エノテカに頼らず自前で入れていたと思います。東京にある独立系の大型店は、他には
ヴァン シュール ヴァン 〒105-0001 港区虎ノ門1-7-6
カーブドリラックス虎ノ門本店 〒105-0003 港区西新橋1-6-11
ワインショップソムリエ 〒106-0032 港区六本木6-1-12
WINE MARKET PARTY 〒150-0013 渋谷区恵比寿4-20-7 恵比寿ガーデンプレイスB1
以上のような店なら、店内ワインを一通り説明できる店員がいます。都心部にはワインショップは多いのですが、機内やラウンジ向けのワインを見つけやすいショップはそれほど多くありません。
信濃屋、やまや、ビックカメラなどのチェーンも品ぞろえ自体は幅広いので、詳しい店員がいれば役立つと思います。
で、実践
以前、HeathrowのT5にあるGalleries First Loungeで見つけたワイン。British Airwaysが提供するoneworld エメラルド会員と「BA便以外の」ファーストクラス客向けのラウンジです。ソファーが並ぶ大きな空間に、ガラス製ワインセラーが壁のようにそそり立っており、ワインが収納されています。
ヒースロー空港Terminal 5 Galleries First Lounge - バス代わりの飛行機
その場で提供しないワインをサロンに置くのは、不合理です。特に珍しいとか高価なワインがあるわけでもありません。よくわからない保冷庫の配置ですが、少し目を引いたのが Georges Lignier & FilsのClos des Ormes 2008。
有名な生産者の代表的な畑ですから、珍しいものではありません。価格も大まかに想像できます。当然「別に」みたいな感じだったのですが、ブログに写真をアップロードして以来、心に引っかかり、結局購入してしまいました。
収穫年は2011。価格はほぼ5,000円。ビジネスクラスで提供するのは、かなり難しいというレベル。ファーストクラスなら熟成の頂点にあるとか、何かストーリーがあれば、適当でしょう。単純に出して喜ばれるほどではありません。
何もきっかけがないと、ワインを選ぶ基準はコストパフォーマンスになってしまいます。旅行での出会いなどもきっかけにして、自らに強制しないと自分の世界が広がりません。