PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

BA838:LHR-DUB ユーロトラベラー(その1)

さて乗換えはTerminal 5からTerminal 5。しかも到着は母屋でした。世界有数の混雑空港LHRでは、楽勝パターンと言うケース。

 

勝手にしてよ、の国際関係論

国際線でLHRのT5に到着した人間には、4つの運命が待っています。

・そのまま娑婆へ(=入国)

・国内線およびアイルランド線乗継

・国際線乗継

・その他(勾留、強制送還等)

のどれかです。3番目のケースを除くと、UK Borderが待ち受けています。悪名高いイギリスの入国審査を受けなくてはなりません。

 

今回の乗継で初めて気がついた疑問。「アイルランドに行くのに、何故UKの入国審査を受けなくてはならないのか?」

 

あのUKのLanding Cardも記入しなくてはなりません。あんなもの10年に1度も書けば良いと信じていましたが、2年ちょっとでまた書くことに。Dublinへの搭乗券を示してもいつもと変わらない質疑応答が行われます。それでUK入国許可のスタンプが押され、6ヶ月滞在可能となります。意味不明ですね。30分後にアイルランドに行くことが確定している人間に、6ヶ月間この国にいて良いという許可を出す理由が。

 アイルランド政府の代行をやっているのかとも思いましたが、Dublinに着いたら着いたで、通常の入国審査があります。パスポート半ページ分の巨大スタンプ(90日間滞在許可)が押されます。

 

LHR経由時のUKの入国審査は、普通の感覚をした人間には意味があるとは思えないでしょう。列に並ぶ手間を増やしているのですから、自国の航空会社BAの足を引っ張るような事態になっています。Dublinに行くなら、他国の航空会社を選んだ方が楽ですよと誘導しているようなものです。

 

意図の面では、底知れぬ裏がありそうです。またそこへのアプローチは、推測しか産みません。こういう時は形式を攻めるのがセオリー。どうやって「UKを素通りしてIrelandへ行く人間をUKに入国させるか」と問題を変えます。

 他の素通り、つまり「国際線乗継」では、まず搭乗券を読み取らせる自動改札ゲートがあります。それを越えると保安検査場です。一方UK国内線乗継ぎの場合、その前に入国審査があります。つまり入国審査と保安検査場前の自動改札ゲートの間をUK国内に指定できます。そこでアイルランド線を国内線扱いにすれば、UKを素通りしてIrelandへ行く人間をUKに入国させる理由が出来るわけです。

 入国審査から自動改札ゲートまでは、わずか数メートル。アイルランド行きの客は、せいぜい20秒の国内滞在のため、入国許可6ヶ月もらうのでした。やれやれ。

UKでは出国審査は事実上ありません。T5では、国内にいる人間と出国している人間が混在しています。ラウンジあったり、ブランドショップが並ぶところは、国内であって、国内ではありません。考えてみればおかしな制度です。

 

形式的にはこんなところでしょう。ここで改めて意図に戻ります。イングランド人がこういう不自然な手間をかける時は、表立っては言えない背景があるというのが歴史の教えるところ。owから逃げることができたAer Lingusが、結局IAGの傘下に入ったということもありました。とにかく900年にもわたる侵略の歴史があります。動きはゆっくりしていますが、諦めもしないですね。パスポートのスペースを無駄に喰われる身としては、勝手にしてくれ、としか言いようがありません。税金は安くなっているかもしれませんが...。

 

他国の間の関係に口を出す必要はありませんが、「アイルランドに行く時、BAを利用するとUKに通常通り入国する必要がある」ことは覚えておかないといけません。

 

Sécu à l'anglaise

乗継時間が1時間15分しかない上、UKに入国もしたので余裕がありません。悪いことに手荷物検査で引っかかってしまいました。「さて何を見つけましたか?」なんて軽くジョブを打ち出すと、大変よく動く(しかし動作に鈍い感じを受ける)中年女性係員は、「これをちょっと見たいの」とMUCで購入した免税ワイン2本入りの袋を軽々と持ち上げます。「Dublinが最終目的地?袋を開けていい?」と聞かれましたが、もちろん問題ありません。

 結局袋を開けて、近赤外線でボトルを1本ずつチェックしていました。可愛らしいところは、わざわざ瓶を袋に戻して「小さな穴だけど、袋にあけてしまってごめんなさい」と自分が破いた穴を指して真顔で謝罪するあたり。

 白々しく感じられる人には、いらだたしい限りでしょう。こういうところを、かわいいと思うか、偽善的と思うかによってイングランド人女性の評価が180度違ってくるのだろうなと妙に納得しました。

 

こちらも怒っていないことを示すためにユーモアを一発。「その照射でワインの味わいが良くなっているといいね」と。一瞬の間の後、見事に笑いが取れたので、完全勝利でした。

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セキュリティの徹底には感心しましたが、イギリス以外だったらムカッと来たかもしれません。

 

NIRでワインが美味くなるかって?Alas, 一本、開けてみたらbouchonéeでした。

 

長くなったので、残りは別の記事にします。