PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

上級会員の必要要件:クレカ利用による減免システム

金融サービスとして、様態はいろいろ。供給側では類似のサービスでしょうが、受容側では別種のものとして理解されているかもしれません。こういう分野ではやはり自由の国、アメリカが進んでいます。

 

(1) アメリカの航空会社の場合

American Airlinesが開発したとされるマイレージプログラム(FFP)。Delta Airlinesがそのコアとなる仕組みを搭乗距離から支払金額に変えたところ、家元AAも追随してしまいました。Airpoints*が別の意味で金額基準のプログラムとして存在していたため、DLが祖であるとも言い切れませんが、一般にDLは悪の親玉と目されているようです。

 

*Air New ZealandFFP区間別、クラス別、予約サブクラス別に設定したAirpoints Dollarsを搭乗ごとに付与します。Airpoints Dollarsは、航空券購入に際して1 NZDとして決済に利用できます。

 

さてアメリカ大手3社では、上級会員制度でも航空券購入金額が問われます。「飛行マイル」(または「飛行回数」)の条件とは別に要求されます。この購入金額の条件は、提携クレジットカードの年間利用金額がある閾値を超えたら免除されます。

 各社それぞれ系統的に行っているため、かなり複雑です。ここでは一例を挙げます。DLのSkyMilesでダイヤモンド会員になる場合、米国在住者は年間25,000 USDの利用で購入金額(MQD= Medaillon Qualification Dollars)の条件が免除されました。この利用金額はアメリカの消費者にとって平凡なレベルです。ところが2018年の積算から、この閾値は250,000 USD(一気に10倍)に上がり、SkyMilesは阿鼻叫喚の地獄絵を見ることになりました。

Delta Medallion Program Requirements : Delta Air Lines

 

年間 2万5千ドルのクレカ決済をする階層は、DLの米国顧客の数十%という数になるはずですが、25万ドルだとほとんどいないでしょう。ダイヤモンド会員減らしと航空会社本来の収益へ回帰することが目的であることは間違いないようです。

 

改悪といえばデルタ。そのイメージをさらに強固にしたようです。株主の評価は上がったと思います。

 

(2) タイ航空の場合

タイ航空Royal Orchid Plusにも同じような減免制度があります。ただしROPには、米系のような航空券の購入金額条件はもともとありません。上級会員になるにはマイルだけが要求されます。クレカ利用により、この必要マイルが減じられます。Citiカードでは、

 

・年間1,200,000 THBの利用 で

・ゴールド会員資格に必要マイルを28,000に削減

 

あくまでゴールド会員だけ。ROPの会員制度全体にわたるサービスではありません。

Citi Royal Orchid Plus Preferred Credit Card - Citi Thailand

 

タイ航空機内誌Sawadee12月号の広告。クレカ申込みのサイトから、数字が変わっています。

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ゴールド会員資格は2年です。ROPのゴールド会員になるためには通常、

・TGあるいはスタアラに年間50,000 miles以上の搭乗 または

・TGあるいはスタアラに2年間80,000 miles以上の搭乗 または

・TG国際便の年間40フライト

が必要です。積算は暦年ではなく、入会日または最終搭乗日が起点となります。

 

1,200,000 THB= 36,700 USD。上に述べたDLの旧基準より大きい数字です。平均的タイ人消費者のクレカ利用金額は、平凡なアメリカ人より一桁小さいでしょう。そのため限られたROP会員しかこのベネフィットを利用することはないと思います。

 ただしこのクレカは、タイ国外居住者でも作れるようです。すると対象者はずっと多くなりますが、金額の大きさに対して

・ROPゴールド会員のメリット

・ROPゴールドへの要件減免の程度

が小さい気がします。ROPのゴールド会員は、DLではゴールド会員に匹敵する程度。さらにTGはマイルが貯まりやすい一方、特典航空券に必要なマイルも多め。そういう事情から、このクレカの利用金額基準にはそれほど魅力を感じません。しかしROPの上級会員が必要な割には、ほどほどにしか利用できないという人には、うれしい商品のはずです。

 基準が100,000 THB+15,000 milesなら、PechedenferもFFPを乗換え、このクレカを作ります。許容できる基準値はタイ航空への傾倒の程度により連続的に変わるでしょう。

 

DLはある客層を追い出すというレベルで会員制度の変更をしましたが、TGは最初から数をあてにしていない印象を受けます。この辺は御国柄なのでしょう。

 

(3) 日本の航空会社の場合

JAL Mileage BankのJAL Global Club(通称JGC)とANA Mileage ClubのSuperflyer Card(通称SFC)という2つの制度は有名で、内容はよく知られています。これは

・クレジットカードの年会費(1 万円を超える程度~) で

・owサファイア、スタアラゴールドレベルの会員資格 が

維持できるというもの。利用金額不問、年会費だけと消費者にとっては非常に楽チンな制度。ただし

・一度だけowサファイア、スタアラゴールドレベルの会員資格の基準を越える搭乗

が必要です。JGCSFCも会員資格獲得には関係なく、維持に関する減免システムですが、(1), (2)に比してコスト―ベネフィットは格段に良好です。

 

この優待は異常だと考える人が多いため、条件が悪くなると予想する人も多いようです。心配するなら(1)、(2)の制度が参考になるでしょう。例えばJGCSFCの会員は、

・FOP、PPが年間10,000ポイント以上という搭乗条件

・年間200万円以上の利用などというクレカ利用条件

の片方あるいは両方を満たすとSapphireやPlatinum会員になる(JGCSFCよりベネフィット大)とする一方で、搭乗時のJGCSFCのベネフィットは廃止という感じでしょうか。小さな飴と大きな鞭という変更にならざる得ないと思いますが、想像に過ぎません。それに一社だけこんなことをすると、その会社は競争から脱落しそうです。

 

(4) 日本在住のデルタ航空SkyMiles会員

これぞ究極の減免システム。

・年会費26,000円(+税金)のクレカを維持するとSkyMilesのゴールド会員になる

というもの。この会員レベルはROPではゴールド会員、JGCSFCと同じレベル。クレカ利用実績不問で搭乗実績も不問と、この種の減免システムではおそらく世界一有利なもの。(3)の特殊制度がある日本の事情が招いたクレカ商品なので、利用できる人には非常に有利になるはずです。

 

将来に関する不安要因は2つあって、

JALANAJGCSFCのサービスを下げると、それに応じてベネフィット低下

・DLが成田という拠点を放棄すると、このベネフィットは廃止

2番目の可能性の方が高いように思われます。

 

(5) 付き合い方はこんなところ

この種の減免システムは、他にもいろいろあるはずです。しかしアメリカ大手が周辺金融商品からのアガリより、航空券販売という本来の収益を重視するようになっていることを見ると、クレカによるFFP優待システムは縮小へ向わざる得ない気がします。

 クレカ会社は「こんな特典もあるのですよ。入会しないと損ですよ。」と消費者を煽るだけ煽ります。入会者を得るものの、特別に有利な特典だけつまみ食いされて、収益が上がらなっても因果応報。今は個人がどんどん発信しますから、方法はあっという間に共有され、儲けは少なくなります。全ては節操を欠いたサービス供給側の問題。使えるうちに使っておきましょう。