PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

たかがカレー、されどカレー:JAL特製オリジナルビーフカレー

多くの人に称賛され、親しまれているJALの特製オリジナルビーフカレーJAL国際線ラウンジの利用時には、不可欠という方も多いはずです。

 一方で「他のお客様の気分を害する」ような食べ方をする会員がいるとの噂もあり、JGC会員の悪いマナーの象徴のように扱われることも。

 Pechedenferは、「それはカロリー過多なのでは」という盛り方を見かけることはありますが、それ以上に変な行動は知りませんし、カレー・ウォッチャーでもないので、噂の真偽にコメントできません。ただウェブ上で人気の話題であることは知っています。

 

JAL特製カレーと言えば、すぐに思い出されるのは Teppei101 氏でしょう。南アジアブロガー/JGC会員行動学の権威として著名な方ですが、特にJALカレーを前にした会員の反応については、他の追従を許さない深い知識をお持ちのようです。つい最近もバー&カフェ カメリア(東京駅ホテル)の特製ビーフカレーランチと対比、ライフスタイルおよび意識の相違を明らかにされました。

 フルサービスのダイニングと、セルフサービスのカレーですから、差は当然というご指摘はさておき、先入観なしに比較します。とりあえずは見た目。左がホテルのサイトにあった写真、右がJALラウンジで撮影した写真です。

f:id:PECHEDENFER:20180613184327j:plain

確かに左の方が見栄えします。

 

JAL特製オリジナルビーフカレーはカメリアの特製ビーフカレーのランチセットに本当に劣るのかどうか、実証するために、今回は

 

東京ステーションホテル特製ビーフカリー カットステーキ添え ランチセット:
黒毛和牛と香味野菜をじっくりと煮込んだ特製カリーと、ビーフステーキが添えられた一品。スープ、サラダ、デザート、コーヒーまたは紅茶付

 

にどこまでJALラウンジが迫れるか、試みました。名付けて、

Opération ”カレーに罪はない”

です。

 

カメリア第一の皿は、アボカドの切片が入ったサラダです。JALラウンジには、カリフォルニアロールが寿司メニューに載っていないと、アボカドは無いでしょう。あっさり諦めて、最近メニューに加わった「JAL特製チョップドサラダ」に「士幌産ポテト」、「紫キャベツのピクルス」、ブロッコリーを添えた皿を用意しました。

f:id:PECHEDENFER:20180616054808j:plain

日本人的には雑然として見えますが、新大陸のレストランならこんな感じのサラダがいかにも出てきそう。カメリアのサラダにも負けないと思います。

 

第二の皿は、スープを入れました。どうせならJALラウンジを際立たせたいので、えこひいきして、やや高級品を。

f:id:PECHEDENFER:20180616055222j:plain

「スープストックスープ、オマール海老のビスク」に、視覚的な効果を考え、黒胡椒を散らしました。スープストックスープという命名は、冗語ですね。スープの質自体は安定しています。

 

カレーは作り置きして、常時温めておけば、注文と共にすぐ出せるという供給側にとってのメリットがあります。しかしボケた味わいになるのは否定できません。シチューやスープも同じですが、仕上げの一工夫が料理のポイント。そこでカメリアではメインのカレーに、(作り置きというほど時間が経っていない)グリルした野菜と肉片を加えて客に出すようです。これがJALラウンジでは無理。全くの無理。せいぜい作り置きの茹でベビーコーンとパプリカ片を加えて、色彩感を出す程度のことしか出来ません。

f:id:PECHEDENFER:20180616055917j:plain

また米のプレゼンテーションが全くダメ。ここには、飾り付けになるトッピングが何もありません。うどん用には刻み蒲鉾やかつお梅干もあったのですが、カレーの邪魔をしそうなものばかり。皿を華麗にする方法が決定的に欠乏しているのは、ラウンジの限界。

 カレーに定番の漬け物は化学調味料と着色料が目立たず、悪くありません。しかし、自家製の持つ力強さはありません。古くからあるホテルでは、漬け物を自家製にしていることが多いので、この点も負けているかもしれません。

 

デザートとコーヒー。カメリアではプリンがつきますが、そんなものはJALラウンジにはありません。

f:id:PECHEDENFER:20180616060745j:plain

JALラウンジでは、「三種アソートケーキ」がメニューに掲載されており、本来3種のプチ・フールが提供されているはずでした。しかし現場には1種類しかなく、追加される気配もなし。仕方ないので、キルフェボンのビスケットとネスレのミニキットカットを並べてみました。プチ・フールが総て揃っていたら、良い勝負になったかもしれませんが、これではプリンの穴埋めはできません。

 

以上。

 

総じて言えば、給仕の有無の違いを除いても、細部の詰めという点でカメリアとの間に埋めがたい差がありました。

 

「カメリアのランチに沿って、JALラウンジで同じものを」を実践して、改めて気がついたことがあります。このラウンジにはテーブルクロスとナプキンが無く、食事をするという点でレストラン等に決定的に劣ります*。またトレイが shabby なことも再認識。すべては気分の問題ですが、文明化した世の中ではこれが決定的に重要。レストランで泣く赤ん坊が問題になることを考えれば、食事の場で気分がどれだけ重要か納得できるかと思います。

*カメリアの写真も皿がテーブルの上に直置きして有りますが、バーカウンターならそんなもの。

 

優雅さ、落ち着きなどという観点では、ラウンジでの食事はフルサービスのダイニングには全く敵いません。当たり前と言えば当たり前ですが、これらの修飾語句がよくラウンジに対しても使われることを考えると、実はよく認識されていないのではないでしょうか。

 JAL特製カレーを前にした会員が量に走りがちな原因の一端は、ここにある気がしてきました。