PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

半分精神世界にいる国民と、現世が全ての国民

シンガポールは、インド系(少数派)と中華系(多数派)がマレー系(少数派)と共に国を構成します。国は一つですが、インド系住民と中華系住民は、単純に言うと生きる世界が異なり、2つの集団で距離を保っているように見えます。一般にこういう状態は身分階層の固定化や差別の温床になりやすいのですが、言語、宗教、習慣が全く異なるので、ある程度の相互不干渉が現実的です。

 特にインド系と中華系の場合は、ほどほどの分離が不可欠でしょう。この2つの集団は、時間の感覚、人との距離のとり方の感覚、社会生活における優先の感覚など、ありとあらゆる感覚が違っているように見えます。

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誰しも自分の周囲を構成する社会は、空気に近い存在。その中しか知らない場合、社会の特殊性を意識することは不可能です。例えば

・急ぐ時と弛緩する時

・親しみをもって接する場面と全く無関心になる場面

・丁寧に行う作業と、適当に済ます作業

が自分の社会と大きく違う集団はどう見えるでしょうか。時間にルーズな人たち、ウザくて冷たい空気が読めない人たち、やることなすことデタラメな人たちとなるはずです。しかし向こうから見たら、こちらに対して同じ印象を持つと考えるのが自然です。

 インド人にしろ、中国人にしろ「日本人ほど時間にうるさくないから仕方ない」と言えば平凡な愚痴ですが、「日本人より時間にうるさいので安心できる」と言うと、一瞬耳を疑うのではないでしょうか。誰かが指摘していましたが、会社の(=集団で行う仕事の)終業時間、会議の終了時間などに関して、これは全く正しいのですが、指摘されることが少ないのが現実。「それは別の話だろう」と直ちに思い浮かんだ場合、日本社会に囚われすぎている可能性があります。それは個人にとって決して不幸なことではありませんが、そんな人ばかりだと困るのですね、当の日本社会が。

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日系の目には、インド系も中華系もそれぞれ強固な文化と習慣を持っているように見えますが、感覚を調整すればそれぞれ対応可能な気がします。しかしインド系対中華系では、観察する限り、表と裏、光と影、山と谷という具合に間逆に見えます。宗教に加え迷信が精神の拠り所になり、あらゆる行動に影響を及ぼすインド人に対して、ひたすら現世に生き、目の前の現実に即して世界を理解する中国人。わかりやすい「単純化」ですが、彼らが融合するのが難しそうなことを伝えます。個人の体験でも、両者と一緒に共同作業を行おうとして、世界が不安定で危うい感じになったことは一度ではありません。

 インド人ウザい、中国人ウザいと感じた経験がある日本人も多いと思いますが、これらの2つの集団の間では、もっと強烈かつ頻繁にそういう感覚になっていると思います。中国人民があれだけ広範囲の低GDP国に進出しているのに、インドで全く元気がないのは、領土問題のせいではないと思います。

 

問題は彼らの間だけに留まりません。教育や経歴から、他の土地の習慣、文化、言語に強い影響を受けた人は大勢いるのです。そういう人たちは、反発する物事もその土地の人たちに準じます。個々の日本人へのインフルエンサーは、今では中華、インド、マレー、タイ、ベトナム...とアジアが主流でしょう。中華文明にどっぷりつかった日本人は、インド系にはついていけないし、逆もまた真なりだと思います。そういう人たちが、シンガポールで暮らすとどういう印象を受けるのでしょうか。やはり彼ら同様に他方とあまり交わらないのでしょうか。

 

そんなことを考えながら、大規模工事中の Raffles Hotel でショッピング。お目当てはこれ。

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Accorhotelsの会員だからといって、割引はありません。

 季節柄、中華系住民が集まる場所で熱心に売られている月餅。われわれが買っても、売手は違和感を感じないようです。一方、サリーをまとった人はそういう売場では見かけませんでした。

 月餅好きや中華食品好きには、この時期のシンガポールは魅力的な渡航先になりそうです。数多い月餅のブランドがそれぞれ何種類も製品を出しています。合わせると楽に100種類を超えるでしょう。当然何を買って良いか途方にくれます。ど素人の私は、月餅101 ならぬ teppei101 というブログを参考にさせて頂きました。

シャングリラBangkokで月餅を買ってみた/2016 - TEPPEI101

 

対比させるため、インド系ホテルのプロダクトも買いたかったのですが、ダメでした。Rafflesに挑戦できる格式を持つ Taj や Oberoi が、シンガポールにはありません。創始者のTata、Oberoi はドラヴィダ系ではありません*が、Taj はChennai(Tamil Naduの中心都市)に進出しています。シンガポールでは、商売にならないのでしょうか。

*: シンガポールのインド系住民はほとんどタミル人(ドラヴィダ系)のはず。

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ちなみにこれら2つのインド系ホテルチェーンは、中国に進出していません。一方で中華系の有力ホテルチェーン(香港系ですが...)はどうかと調べてみると、Peninsula と Mandarin Oriental はインド亜大陸に進出していません。唯一 Shangri-La が Bengaluru と New Delhi にあるだけでした。ホテルチェーンは顧客が出かける場所に、ホテルを建てます。このことから見ても、やはり印中二つの世界は交わりにくいようです。インド系、中華系の人口の大きさを考えると、ホテルチェーン展開の偏向は地味に重要な事実です。