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空港の存在を生かせなかった国鉄-JR

日本国有鉄道は31年前に消滅しました。しかしこの話はさらに時間軸を遡る必要がありそうなので、表題のようになりました。

 

改めて不思議に思うこと

日本は山がち。さもなければ海がごく近いという土地。例外は関東平野ぐらい。その結果、本質的に急勾配は避ける鉄道、道路が集中する箇所が数多くあります。空港はさらに勾配を嫌うので、空港のすぐ近くに幹線鉄道が通っていることは珍しくありません。しかし不思議なことに、お互いわざと無視しているのではないかと勘ぐりたくなることが多々あります。ドイツのように空港は必ず鉄道接続、しかも原則DBとの接続という国があることを考えると、近代日本は何を目指したのだろうかと思ってしまうのです。そういう観点から定期便がある空港を洗ってみました。

 

近くにJR線があるのにほとんど無視している例

女満別空港

石北本線の西女満別駅がターミナルから400mの場所に位置します。しかし車道はおろか、歩道も有るのか無いのかという整備状況。現在の掘っ立て小屋程度の駅舎に、ターミナルから歩いていくのはチャレンジングな感じ。この駅は移動すれば、隣接ターミナルまで200 mまで近づきます。

 土地収用だって、費用はそれほどにはならないはず。こんな状況でどうして空港駅の整備をしないのでしょう。この駅から北見や網走へ快速列車を走らせれば、それなりに利用され、石北本線の旅客密度が何倍かになっていたはずですが...。意図した不作為だとしか思えません。

 

花巻空港

釜石線が敷地南端まで1,000 m程度に迫ります。岩手県を代表する空港に釜石線役不足なら、東北本線だってターミナルまで800 mほどの位置を滑走路とほぼ並走しています。花巻空港駅敷地までなら500 mほどに距離も縮みます。東北本線の駅にターミナルから歩いて行けるなら、空港利用者も増えるはず。観光には便利になりますから東北本線利用者も増えます。良いことばかりで、投資する価値が大きいように見えるのですが、絶対実現しない事業。何が障害なのでしょうか。

 この空港のように、滑走路をはさんで幹線鉄道と逆側にターミナルを建設するというプランはやたら多く見かけるのですが、やっぱり意図して鉄道から隔離したのでしょうね。

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山形空港

奥羽本線神町駅が滑走路をはさんでターミナルの逆側、敷地まで300mの場所に位置します。この空港も、ごく近くを国鉄の一大幹線が走っているのです。ターミナルを滑走路の逆側に建設するという、露骨に鉄道を避ける設計がここでも見られます。その結果、鉄道も空港も利用が低迷している気がします。住民は自動車を使えますが、訪問者には不便です。こんなことで均衡ある国土の発展は実現するのでしょうか。

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静岡空港

東海道新幹線が真下に走っていて、連絡は全くなし。この空港の場合、できたのが最近ですし、たまたま場所がここになったという以上のものではないようです。また山岳トンネル内に新駅を作るのも大変なので、意図があって分離しているわけではないようです。さらに言うと、地元は東海道新幹線新駅を作りたいようです。元祖新幹線のブランド価値は不変です。

 

⑤県立名古屋空港

ここにはJRがないのですが、例外として取り上げます。大都市近くの空港として都市間移動に有利な空港ということで、JRでなくても、鉄道接続が欲しい場所です。

 名鉄小牧線が最も近接するところで、敷地まで80m。ただしそこは自衛隊関連施設が集中する区画です。いざとなったら移動してもらえばよいので、整備が出来ない理由としては弱い気がします。また牛山駅から150 mで敷地に届きます。要はその気になればターミナルを移動すればよいわけで、非常に便利になります。そうしないのは、明らかに中部国際空港に客を誘導するためです。空港建設にかかった費用を回収する必要があるためで、元をただせば借金して工面した金は建設業者に流れています。公共事業のため、景気対策のため、利用者が不便な思いをするという構図ですが、そういう話は日本中に溢れています。この理解で正しいかどうか、国交省に個人的な知り合いがいても、訊いてはいけない質問です。タブーです。

 

福井空港

ここは現在定期便がない空港としてよく知られていますが、アクセスが良ければ定期便が生き残っていただろうということで取り上げます。敷地南東端から300 mの場所を北陸本線という非常に便利な幹線が走ります。ターミナルビルについては、滑走路はさんで北陸本線と逆側に位置し、ここでも接続させないよう工夫をしているように見えます。この空港の歴史は50年以上。もし意図的にこういう回避が成されていたなら、日本の交通網整備の伝統であり、その起源を日本列島改造論に求めることはできません。何がそうさせたのでしょう。

 

鳥取空港

山陰本線がターミナルビルより600 mほどに位置します。ターミナルビルは鳥取大学前駅から徒歩1.5 km。この空港の場合、金がなくて接続ができていないだけという気がします。何となくですが。

 

出雲空港

山陰本線が敷地から1,000 m程度の場所を通ります。 荘原駅より徒歩3.6 kmでターミナルビルに着きます。阪急宝塚線蛍池駅から伊丹空港へ歩く人はかなりいますが、せいぜい2 km。さすがにこの土地で、この距離を歩く人は少ないと思います。自動車に慣れているし、歩く場所も町中ではありませんし...。開業時(1966年)に山陰本線に直接つないでおけば、今日利用者も相当多かったのにとは思います。

 

石見空港

敷地から200 m、ターミナルビルから800 mぐらいのところに、山陰本線が走ります。完全無視を決め込んでいるように見えます。この空港の場合、周辺人口からそれほど多い利用者が期待できず、何でこんなところに空港を作ったの?みたいな公共事業(1993年開港)だったので、山陰本線との接続なんて期待するほうが間違いです。しかしターミナルから動く歩道で移動できる駅があれば、周辺の観光地は変わるでしょう。萩あたりでも恩恵を受けるはず。空港連絡でも御座敷列車が似合いそうです。

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山口宇部空港 

宇部線草江駅より、徒歩約550 mでターミナルビルに着きます。ここは歩いて来る人がいるのでしょうか。その気になれば屋根つき動く歩道だって可能なはずです。考えたことが無いのか、金が無いのか、訪れたことが無い場所なので、その辺はよくわかりません。

 

JRをつないだ例

反例となります。接続を行った空港もわずかにあるので、リストにしました。

 

米子空港 山陰本線 米子空港駅直結

新千歳空港 千歳線 新千歳空港駅直結

③成田空港 成田線 空港第2ビル駅直結、成田空港駅直結

関西空港 関空線 関西空港駅直結

宮崎空港 宮崎空港線 宮崎空港駅直結

 

米子とか宮崎でもできるので、大きな国際空港が特別に鉄道整備されるという理屈ではありません。各地での鉄道無視は、本当に不思議です。

 

JR以外の鉄道を空港接続のために敷設した例

JRとは別の鉄道を敷設した例もいくつかあります。それらの鉄道に加え、JRを敷設する必要性は低いとは言え、地上で長距離を移動しなくてはならない時は乗換えが必要となります。やや不便です。

 

羽田空港 京急東京モノレール

中部国際空港 名鉄

伊丹空港 大阪モノレール

神戸空港 ポートライナー

福岡空港 市営地下鉄

那覇空港 沖縄都市モノレールゆいレール

 

ただし那覇空港の場合、沖縄本島にJRがないのでこれで全く問題ありません。

 

縦割り行政の弊害?利益団体の抵抗?歴史の偶然?

いくつかの路線では、もしも空港と接続されていれば現在でも鉄道利用者が多く、廃線の議論が起きなかった可能性があります。ローカル線なら中規模、小規模な空港でも接続するなら、輸送密度は上がります。空港利用者の声も廃線への抵抗になるはずです。空港をあちこち整備していた時代には、鉄道路線にそういう抵抗力を持たせる必要はなかったのでしょうか。その後は投資する金がないことに加え、空港から軽自家用車という利用者の流れが確立していて、駅を作る意味なしとなったのかもしれません。

 空港に関する行政が道路建設業者やタクシー業界と近かったという線も考えられます。鉄道に客が流れるのは、目に見えて地元に金を落とすわけではなく、票にもなりません。そんな意識が強かった時代が続いたのかもしれません。

 しかしながら空港の立場からも、幹線鉄道駅があれば便利なはずで、たとえば隣の県の空港に対してアドバンテージになります。 それをしなかったため利用が低迷しているのでは何をやっているのかというところ。全ての関心事は建設までで、そこから先は政治的な残処理という公共事業の悪しき構図はあちこちで見られますが、これとは質の違う問題のようです。

 

今さら空港と接続しても、鉄道の衰退を遅らせるのには手遅れです。自動車が自動運転されるようになりますから。自動運転の普及は、基本的人権の一つである移動の自由と関係するので、完全実施は一般に想像されるより早くなると思います。孤独老人、身障者でも健常者と同様に移動できる世界は、人権に関する議論が好きな欧州には輝かしい未来に映ります。彼らが騒ぎ出すのは、時間の問題でしょう。雇用の大転換が必要ですが、人による運転を排除する世の中では交通事故は減り、人類が長足の進歩を果たすことは否定できません。

 

そして中長距離の旅客輸送を担った在来線は、歴史の一コマになる可能性大です。道路上の自動運転とキャラが被ります。エネルギー効率と環境適合性にわずかな望みがありそうですが、ほとんど期待できません。