バス代わりの飛行機

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

エアバス A321 neo LRの近況

航空会社は期待し、旅行者は警戒するA321 neo LR。エアバスのベストセラーA320シリーズの最新鋭機です。321は胴体を伸ばした機体であること、neoは新開発した高燃費エンジンを搭載したこと、そしてLRは long rangeの略で燃料タンク増設により、無給油飛行距離を拡大したことを意味します。

 

neo LRは A320シリーズの延命にかなり貢献しそうです。技術者としてはA380のような完全に新しい旅客機の開発に興奮するでしょうが、経営サイドでは既存のベストセラーを改良して売れるような話の方が好き。簡単に業績が上がりますから。

 

こういう開発は、当然カスタマー受けを狙って行われます。A321 neo LRへの期待は、大体次のようなのもの。

(1) 機材が安い

新設計ではないため、エアバスとしては開発費はわずか。その分価格を上げることができないため、一席あたりの価格などは安くなります。

(2) 市場に合った旅客数と航続距離の組合せ

これは新機材の設計を左右するもっとも大きな理由。一気に大量輸送する方が航空会社のコストが下がります。同じ交通量でも高頻度運航の方が旅客の利便は上がります。適当な点で均衡して機材のサイズと運航頻度が決まると考えられますが、飛行距離が大きいと最適解より大型の機材を使わざる得ません。適切な大きさで長距離飛べる機材の需要は常にあるわけです。

(3) 低燃費

これはいうまでもありません。コスト削減であるばかりか、社会正義です。

(4) 旅客の慣れと予想しやすさ

A320シリーズはあまりに売れているので、旅行者も航空会社もよく知っています。そのため適当なキャビンを用意すれば、失敗の可能性も低いというものです。

 

こんなわけで、この新機材はコストを抑えたLCCの長距離路線進出を後押しするだけでなく、レガシーキャリアにも相当人気があります。

 

一方、A320シリーズは短距離~中距離用の機材として展開されてきた機材。ほとんどの場合、単通路の両側に3列ずつシートが並びます。前後も左右も広くないというシートで個人用IFE画面なし。様々な機内サービスに対応できるスペースも、長距離用に開発された機材に比べれば、格段に劣ります。旅客からすればこんな機材で何千マイルも旅行するのは、ちょっと遠慮したいと警戒するわけです。航空会社が期待するだけに、旅客の不安は増大します。

 それでこれらの新機材を巡る状況に動きがあると、メディアは会社の期待と旅客の不安をフレームワークにした形で記事をまとめます。

 

Wikipediaの英語版によると、"... A321neoLR (Long Range) with 100 nm more operational range than a Boeing 757-200..."と説明されています。エアバスは、13桁~15桁という精度で飛行距離を測る技術も開発したと思った貴方、面白すぎるのでその誤解のまま覚えて下さい。

 

A321 neo LRは、今年2月13日に初の大西洋横断を行いました。Paris (LBG) - New York (JFK) 間のフライトです。このフライトは、A321 neo LRの開発に象徴的な意味を持つため、あちこちで報道されました。というのも、標準的な航続距離が 4,000 nmi(7,400 km)であり、西欧と北米東海岸間の路線が最初のターゲットになっているからです。

Le nouvel Airbus qui va faire baisser les prix des vols vers New York - ©New York

 何でも新しいことを成し遂げた時は、その新規性を正確に述べなくてはなりませんが、この場合は、”Cette traversée est une première pour un appareil monocouloir capable de transporter plus de 200 passagers sur une distance de 7400 km."「この横断は200以上の旅客を7,400 km 以上運ぶことができる単通路機としては初」でした。

 この時点で、エアバスの技術者は Paris - New York 間を Paris - Toulouse 間の運賃で実現できると言っています。水を差すようで悪いのですが、「長時間の窮屈なフライトで忍耐力を試される」と感じた読者が多かったに違いありません。

 長距離LCCの雄、Norwegianは30機のA321 neo LRを注文。すでに Paris - New York路線を予告しています。

 

2月の時点で100機の注文を控えているということですから、滑り出しは順調です。

 

A321 neo LRの人気はレガシーキャリアでも顕著。このカテゴリーの最大の注文者はTAP Portugalのようですが、その数は24機。

Airbus : route proving pour l’A330neo, un A321neo XLR en vue | Air Journal

ヨーロッパ西端の国ですから、もちろん北米ルートへ導入するはずです。発注数を考えると、導入にとどまらずそれら路線の現行機材は、A321 neo LRに総入替えではないでしょうか。会社の存在感を際立たせるための投資にも見えます。

 

西欧ー北米東海岸におあつらえ向けと言う航続距離ですが、インドのLCC、IndiGoも関心を示しています。総数で20から25機の A320 neo およびA321 neoの注文を、A321 neo LRに換える腹積もりという報道がなされています。

Airbus A321neo LR à New York, et pour la low cost IndiGo ? | Air Journal

導入路線として具体的に名が挙がる都市は8つ有り、

Doha, Dubaï, Mascate, Sharjah, Katmandou, Colombo, Bangkok et Singapour

ですが、多分最初の6つが DEL から、最後の2つは CCU や MAA からです。同時にヨーロッパ路線を考え、アフリカ路線、オーストラリア路線も開設許可へ向けてアクションを起すと、どこまでも夢が大きくなります。

 

最初の商用飛行は2018年第4四半期が予定されていましたが、最初の顧客になるはずだったPrimaAirが倒産しました。

A peine certifié, l'A321LR d'Airbus perd son premier client - L'Usine Aéro

同じ日(10月2日)に、エアバスは欧州と北米で形式認証を得られたことを発表しました。「良いニュースと悪いニュースがある」の典型ですが、結局最初の営業フライトはいつになるでしょうか。

 

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写真はエアバス資料。A350ほどではないもののタヌキ顔。

 

この機材、日本でも活躍できる余地が大きいのです。東京を起点にして4,000 milesというと、東南アジア全域、ホノルルが収まります。実際、Peachは7月に発注しています。即、大量導入する必要性があるかどうかはわかりませんが、じわじわ導入、じわじわ航空券価格低下は起きそうです。